田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第170号]多方面で進む不動産の二極化

2022年06月23日

不動産の価格は上昇を続けている。不動産価格は下落を続けている。今、実務をしていて、両方正しいという実感がある。言い換えれば、改めてではあるが二極化が進んでいる。

二極化自体は、以前からよく聞かれる言葉。陳腐な表現と言える。しかし、コロナ禍やウクライナ戦争において、富裕層と貧困層の二極化が進んだことについても実感のある方は多いだろう。コロナ禍で収入を増やした人、減らした人、またウクライナ戦争を発端とした円安で資産を増やした人、減らした人、その上下の差は大きい。

昨今の不動産マーケットで感じられる二極化には、以下のようなものが挙げられる。

●人気エリア・不人気エリアへの二極化
住宅が増え人口が増加し、それに伴って店舗・事務所が増え好循環となるエリアがある一方、人口が減り空き家が目立ち、マーケットが縮小しさらに投資が減り空き家が増える悪循環なエリアがある。

これらが起きるのは市区町村単位だけではない。同じ行政区でも特急停車駅/各駅停車駅、同じ駅エリアでも駅近エリア/バス便エリアで二極化が進んでいる。全てが不可逆的な流れではなく、それほど人気がなかった駅でも駅前が再開発されることで価格が上がることなどもある。

●金持ち地主・貧乏地主への二極化
バブル期までの土地神話時代は、都市部で不動産を持ってさえいればなんでも値上がりした。それ以降、都心部と郊外部等で上昇幅に差が付きはしたが、不動産を持っている人は持っていない人に比べ資産的に優位であった。

しかし今は、地主=金持ちではない。空き家を持て余している人、田舎の土地を持て余している人は、むしろ不動産を所有していることが金銭的にマイナスである例も多い。また、一棟アパート・マンションを保有する人も設備使用の陳腐化や建物の老朽化にリフォーム等でテコ入れをすることができず、結果として賃料の下落に耐えられず売却する人も多い。中には多額の抵当権が設定されており、キャッシュフローがマイナスなのに売却することもままならない人もいる。

●敷地面積による流動性の二極化
これは主に都心部で起きている現象だが、土地自体にも二極化が起きている。端的に言えば「事業が可能かどうか」で勝ち負けが決まる。

用途地域や前面道路幅員にもよるが、80〜100坪以上の土地は複数区画での一戸建て分譲や賃貸マンション、オフィスビル等の事業が可能で、事業会社の買いが入るので売却しやすい。しかし、20坪程度の土地は一戸建てくらいしか建築ができず、その一戸建てにしても工務店等が分譲するのは効率が悪く、販売が難しい。

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上記の坪数についてはあくまで感覚的なもので、エリアや人気度合いによって大きく異なるが、都市部について「狭小敷地は厳しい」のは変わりのないトレンドと言える。

今後マイホームを購入・建築する方は、その建物が二極化のどちらに属するか、考える方が良いだろう。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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