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借地借家法とは、一般的に弱い立場となる「賃借人」の権利を保護することを目的とした法律です。
例えば、店舗を借りて事業を営む、借りた土地に家を建てて生活する、といった基本的な生活を送るうえで最も重要となる不動産の賃貸借契約を賃貸人の一存で反故されては大変です。
しかし、賃貸人にしてみれば自分の土地が半永久的に使用できないといった不利益を被る可能性があります。
こういった賃借に関しての取り決めをしたのが「借地借家法」です。このコラムでは「借地借家法」についてわかりやすく解説していきます。
目次
1. 借地借家法の概要
はじめに「借地借家法」とはどういった法律かみていきましょう。
「借地借家法」は、1991年に施行された法律ですが、その元となった「借地法」「借家法」は、大正時代にできました。
社会情勢の変化や時代の流れにより何度か改正が行われ、2022年5月にも改正施行されています。
「借地借家法」は『借地(借地権)』と『借家』について定めた、借主(賃借人)を保護する法律です。
賃貸借に関する権利や契約の更新、解約、存続期間などについて定められています。
借地借家法は特別法のため民法よりも優先して適用されます。
賃貸借契約は民法で定められていますが賃借人(借りる側)よりも賃貸人(貸す側)の方が有利となっています。
そのため、突然立ち退きを迫られたりするなど賃借人は生活を脅かされ、大きな不利益を被ることがありました。
それを解消するためにできたのが「借地借家法」です。
借地借家法とは?
借地借家法では「借地権(土地の賃貸借契約)」と「建物の賃貸借契約」の2つについて定められています。
借地借家法とは「建物を所有する目的で土地を借りる場合」、もしくは「建物を借りる場合」に適用される法律です。
借地 (借地権) |
土地の賃貸借契約について |
---|---|
借家 | 建物の賃貸借契約について |
『土地の賃貸借契約』(『借地権』)とは?
「地主から土地を借り、対価(地代)を支払い、借りた土地(借地)の上に建物を建てる権利」のことです。
土地の持ち主(地主)から土地を借りて建物を建てる際に、地代を地主に対して支払います。
借地には契約期間があり、契約期間が満了したら、更地にして地主に返却する必要があります。
ただし、契約を更新することは可能です。(※契約更新の期間については後から詳しく見ていきます)
また、借りた土地に建てた建物は勝手に売却することはできず、建て替えの際も地主の許可が必要です。
『建物の賃貸借契約』(借家)とは?
賃貸借契約とは、マンションやアパートなどの賃貸物件を貸し借りする際に貸主と借主の間で交わされる契約のことです。(民法第601条)
住居用だけでなく、事業を行うためのオフィスビルなどの貸し借りもこれにあたります。
貸主が建物などを借主に使用・収益させることを約束し、代わりに賃料を支払うことを取り決める契約です。
● 普通建物賃貸借契約
普通建物賃貸借契約では貸主が解約の申し入れや更新を拒絶しても、正当な事由があると認められなければ、契約は継続または更新されます。
契約期間の最短は1年と決められており、それよりも短い期間では期間の定めがない契約とされます。
また、賃貸借契約の存続期間の上限は20年と定められていますが、建物の賃貸借には「借地借家法」が適用されます。
そのため、建物の賃貸借に関しては20年を超える契約となっても有効です。
● 定期建物賃貸借契約
定期建物賃貸借契約では契約で定められた期間が満了すれば、契約は更新されずに賃貸借契約は終了します。
契約期間の短期及び長期についての定めはありません。
従って、1年未満の契約期間でも20年以上の契約期間でも有効です。
借地借家法は電子契約可能か?(令和4年5月改正)
デジタル社会形成整備法(令和3年法律第37号)により、借地借家法を改正し不動産取引でも電子契約が可能になりました。詳しくは法務省発表の資料(https://www.moj.go.jp/content/001372507.pdf)をご覧ください。
2. 旧借地法と新借地法の違い
次に「借地権」の旧法と新法の違いについてみていきましょう。
主な違いは「定期借地権」制度の創設と、借地権の存続期間の変更です。
具体的な期間は下記の表にまとめました。
旧借地法
現行の「借地借家法」の前身となった法律で、1992年に廃止された法律です。
借地人の保護に重点が置かれ、借地人が希望する限り半永久的に契約を継続することが可能でした。
旧借地権は「1度土地を貸すと、2度と帰ってこない」と言われるほど借地人の権利が強く守られていました。
旧法で契約をした契約は、契約更新を行っても旧法の「借地法」が適用となります。
●「旧借地法」借地権の存続期間・更新後の期間
当初の期間 | 更新後の期間 | |
---|---|---|
堅古建物 (RC造、重量鉄鋼造など) |
30年以上 (契約で定めがない場合、 又は30年未満の場合は60年) |
30年以上 (契約で定めのない場合は30年) |
非堅古建物 (木造住宅など) |
20年以上 | 20年以上 (契約で定めのない場合は30年) |
新借地法
新法では「普通借地権」の他に新たに「定期借地権」制度が創設されました。
「定期借地権」とは「更新がなく、決められた期限が過ぎれば、必ず地主に土地が戻ってくる」制度です。
●「新借地法」借地権の存続期間・更新後の期間
当初の存続期間 | 更新後の期間 | |
---|---|---|
普通借地権 | 30年以上 (契約で定めがない場合、 又は30年未満の場合は30年) |
最初の更新:20年以上 2回目以降の更新:10年以上 |
定期借地権 | ①一般定期借地権:50年以上 ②建物譲渡特約付借地権:30年以上 ③事業用借地権:10年~50年未満 |
更新なし |
※新借地法では建物の種類による区別がなくなりました
3. 普通借地権と定期借地権の違い
次に「普通借地権」と「定期借地権」の違いを見ていきましょう。
まず下記の表に主な違いをまとめてみました。
普通借地権(旧法/新法) | 定期借地権(新法のみ) | |
---|---|---|
更新の有無 | あり | なし |
借地権の価格相場 | 高い | 安い |
地代の価格相場 | 安い | 高い |
普通借地権とは
普通借地権の当初の存続期間は最短で旧法では20年、新法では30年、契約によってはそれ以上の年数も契約可能です。(存続期間は前述参考)
普通借地権では契約を更新し続ければ半永久的に契約を更新することが可能です。
旧法では建物が滅失すると「借地人が地主から借りている土地だ」と、第三者に対して主張できなくなります。
しかし、新法では建物の「朽廃」では借地権は消滅しますが「滅失」では借地権は消滅しません。
普通借地権 旧法と新法の違い
● 旧法で借地権が消滅
「滅失」台風・地震・火事・取り壊しなどによって建物がなくなった状態
● 新法で借地権が消滅
「朽廃」建物全体が腐敗しており、通常の修繕では建物としての機能が回復しないかが判断基準
普通借地権更新の際の疑問点
Q1. 地主が借地権の更新を拒否できるか?
正当な理由なくして更新を拒否することはできません。
また更新を拒否した場合、立ち退き料の支払いが必要となることが多いです。
※ 正当な理由とは?
- 地主が土地の使用を必要とする事情
- 借地権を結んだ時と状況が明らかに異なる時
Q2. 建物買取請求権を行使できるか?
借地権の契約が満了し更新されない、そして建物が立っている状態の場合には請求権を行使できます。
この条件に当てはまり建物買取請求権を行使された場合、基本的には地主はそれを拒否することができません。
建物買取請求権は老朽化している建物でも、建物の築年数関係なく行使できます。
定期借地権とは
定期借地権とは契約期間が定められた契約で、契約期間が満了することで確実に土地が返還されます。
定期借地権には「一般定期借地権」「事業用借地権」「建物譲渡特約付借地権」の3種類があります。
「一般定期借地権」とは
契約期間を50年以上とし、建物の使用目的の制限がない契約になります。
一般定期借地権では契約終了時に土地を更地にして戻さなくてはなりません。
一般定期借地権の場合には、契約の更新、建物の築造による存続期間の延長がなく、建物買取請求権を行使しない旨を定めることができます。(借地借家法第22条)
定期借地権のマンションなどでは解体費を積み立てる解体積立金を積み立てる必要があります。
「事業用借地権」とは
契約期間を10年以上50年未満とし、事業の用途に限って土地を借りることができる契約です。
建物の一部であっても居住用としての利用は認められていません。
また、建物を解体し更地にして返却する義務があり、建物買取請求権を行使することもできません。(借地借家法第23条)
「建物譲渡特約付借地権」とは
契約期間を30年以上とし、契約終了後は借地上の建物を地主に買い取ってもらえるという契約です。
地主が建物を買い取ると借地権は消滅します。
建物譲渡を確実に行うために「所有権移転の仮登記」を行っておく必要があります。
また、買い取ってもらった後、賃貸として住むことが可能です。(借地借家法第24条)
定期借地権付き物件の疑問点
Q1. 固定資産税、不動産取得税はかかるのか?
建物部分にのみかかります。不動産取得税、所有権移転登記費用についても同様です。
土地についてはかかりませんがその分地代が必要になりますので、どちらがお得になるかしっかりと確認しましょう。
Q2. 売ったり貸したりできるのか?
基本的には所有者の自由です。ただし、借地権の残存期間が短い場合買い手を見つけることが難しいことがあります。
Q3. 住宅ローンは使えるのか?また住宅ローン控除は受けられるのか?
自由に抵当権を設定できないことが多く、金融機関が物件を担保として扱ってくれないため、融資を受けられる金融機関が限られててしまうことがあります。公庫融資については「所有権」の物件と同等の扱いとなります。
また住宅ローン控除については家屋の取得に対して金融機関から借り入れした場合は適用となります。
4. 借地権のメリット・デメリット
では、借地権のマンションや一戸建てなどの物件購入を考えた時、どういったメリットデメリットがあるでしょうか?
借地権のメリットとデメリットを下表にまとめてみました。
借地権のメリット
購入価格が安い
借地権付きの建物はいわゆる所有権の建物と比べると、7割~8割程度の価格で購入することができます。
土地の固定資産税、都市計画税を支払わなくていい
土地の所有者である地主が支払います。
ただし、建物部分の固定資産税、都市計画税は支払う必要がありますので注意しましょう。
借地権のデメリット
将来的に土地の返還が必要
普通借地権の場合は契約を更新することで半永久的に土地を借りられます。
一方で、定期借地権の場合は更新が認められず、契約期間終了時に更地にして土地を返さなければなりません。
地代が発生
毎月地代を支払う必要があります。また、地代は土地の価格で変動することがあります。
5. まとめ
借地権について詳しくみてきましたがいかがだったでしょうか?
借地権付き建物は将来的に自分のものではなくなるものの、購入時は購入価格が安く、土地の税金を支払わなくていいなど、費用を抑えたい人におすすめと言えるでしょう。
また、定期借地権付き建物の場合は、基本的に契約が終わると建物が取り壊されるため、相続を考えていない場合にはいいでしょう。
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