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住まいサーフィン編集部

健康寿命を延ばす家づくり

2024年08月27日

更新日最終更新日:

健康寿命を延ばす家づくり

年々伸びる日本人の寿命ですが、ただ長生きするだけではなく、健康に長生きしたいものです。そのためにも毎日過ごす住宅はとても大切です。

健康寿命を延ばすためにはどんなことに気を付ければいいのでしょうか?

住宅が原因で起こる健康障害にはどのようなものがあるか、また、それを防ぐ方法を知り、健康寿命を延ばす家づくりについて考えていきます。健康で長生きするための住環境を整えていきましょう。

この記事の編集者

住まいサーフィン編集部

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1. 健康寿命を知って、健康寿命を延ばす生活を送りましょう!

健康寿命とはなんでしょうか?

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と国で定義づけられています。つまり病気などで医療機関にかかることなく、健康で自立した生活を送ることができる期間を健康寿命と呼びます。

平均寿命との大きな違いは『健康で日常生活に支障をきたすことなく自立した生活を送れる状態』であるということで、病気や高齢により介護や支援を必要とする期間は健康寿命には含まれません。

一方、平均寿命とは生まれたばかり(0歳)の人の平均余命を指します。

2023年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳で、2022年と比較して、男性は0.04年、女性は0.05年上回りました。
(<厚生労働省「簡易生命表」/令和5年>)

「平均寿命と健康寿命」

「平均寿命と健康寿命」

図表からわかるように、平均寿命と健康寿命はどちらも年々延び続けています。

平均寿命と健康寿命の差は年々少しづつですが縮小されているのがわかります。平均寿命と健康寿命の差は日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味します。

健康寿命を延ばし、この差を縮小していくこともとても重要です。

2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」は、健康寿命の目標と、その目標を達成するための施策について定められています。
2040年までに健康寿命を男女ともに2016年に比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指しています。
(健康寿命 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale)

健康寿命を延ばす有効な取り組み

健康寿命を延ばすためにはどういったことに気を付けて生活を送ればいいでしょうか?

健康寿命を損なう原因として、循環器疾患(脳卒中と心疾患)、認知症、衰弱、骨折・転倒、関節疾患が大半を占めます。これらを予防するためには毎日の生活習慣はとても重要です。健康寿命を延伸するためには、小児、妊婦、成人、高齢者など年齢や状態に応じて、様々な疾患を横断的に予防することが必要です。
(国立高度専門医療研究センター6機関の連携による「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言」より)

また、以下の点を常日頃から心がけ、身体的にも精神的にも健康でいられるようにしたいものです。

  • 1⃣  栄養バランスの良い食事をとり、健康的な食生活を送る
  • 2⃣  日常的に年齢にあった運動を取り入れる
  • 3⃣  質の良い睡眠を十分にとる
  • 4⃣  精神的にも健康に過ごすため、自分にとって有効なコミュニティに参加する
  • 5⃣  病気やケガにより不健康な状態になるのを防ぐ環境づくり(=家づくり)

バランスの良い食事や食生活、適度な運動、質の良い睡眠などはよく聞かれますが、実は毎日快適な生活を送るための住環境もとても大切です。

住環境は住む人の健康に大きな影響を与えます。人々が健やかに暮らすための健康住宅に必要な要素はどういったものが挙げられるでしょうか?

住宅がもたらす健康障害について知り、その対策を取り入れた健康寿命を延ばす家づくりについてみていきましょう。

2. 住宅が原因で起こる健康障害とは?

それでは、住宅を起因とする健康障害『ヒートショック』と『シックハウス症候群』についてみていきましょう。

倒れた人

ヒートショック

ヒートショックとは、温度の急激な変化により血圧が大きく変動し、体がダメージを受ける状態を言います。心臓や血管に負担がかかり、湿疹や不整脈、脳卒中や心筋梗塞の病気や溺死など急死につながる可能性があります。

「脱衣所とお風呂場」「寝室と廊下」「リビングとトイレ」など、温度差が大きくなりやすい場所を行き来する際にヒートショックのリスクが高まります。

高齢者の入浴中の事故は、11月~4月の寒い時期を中心に多く発生しています。冬場の入浴中の事故には「温度差」が引き起こすヒートショックの影響があるといわれています。

ヒートショックを防ぐには、家全体の気密性や断熱性を向上させて、家全体(各部屋)の温度を一定に保つ必要があります。

シックハウス症候群

建材・内装材などから屋内の空気中に発生する有機化学物質が引き起こす病気や症状の総称です。

シックハウス症候群の症状

  • ● 目に刺激があり、チカチカする、痒くなる、涙が出る
  • ● 頭痛、めまい、吐き気がする
  • ● 鼻や喉が乾燥したり、刺激や痛みがある、鼻づまり、鼻水、咳が出る
  • ● 疲れやすく、体がだるく、眠気がある
  • ● 皮膚が乾燥する、赤くなる、痒くなる

建材や家具などから揮散するホルムアルデヒド、トルエンやキシレンなどの有機溶剤、生活空間において生じる窒素酸化物などの燃焼排ガス成分、衣類や絨毯などに含まれる芳香剤や難燃性可塑剤、殺虫剤をはじめ、ダニ・カビ・ハウスダストなどが原因と考えられています。

シックハウス症候群は基本的にはその場所から離れると症状が軽減されます。

対策

  • 1⃣ 建築時
  • ● 化学物質の放散量が少ない建材等の使用を検討しましょう
  • ● 風通しがよく効果的な換気ができるように、窓の配置や間取りの計画を立てましょう

  • 2⃣ 居住時
  • ● 換気を心がけましょう(24時間換気システムがあれば必ず稼働しましょう)
  • ● 家具を購入する際は刺激臭がないものを選びましょう
  • ● 化学物質を含む、芳香剤、衣類の防虫剤、殺虫剤等使用する時は十分に換気を行いましょう
  • ● こまめな掃除を心がけましょう
  • ● 日光には殺菌作用があるので、できるだけ日光が屋内に入る環境を作りましょう

3.健康寿命を延ばす病気予防のための家づくり

次に健康寿命を延ばすため、快適で病気予防につながる家づくりについてみていきましょう。

快適に過ごすための健康住宅には『家の断熱性・気密性の向上』、『効率的な換気対策』、『バリアフリー化』、『身体に優しい素材を使っての家づくり』が重要です。それぞれについて詳しくみていきましょう。

断熱性・気密性の向上

健康寿命をのばすためには、家の断熱性能、気密性能を向上させることはとても重要です。

断熱性・気密性の高い住宅は室内の温熱環境を安定させやすいという特徴があります。
屋外からの空気を入りにくくしたり、反対に室内の熱を逃しづらくしたりする建築方法により、年中快適に過ごしやすい空間を叶えるのが高断熱・高気密住宅です。

夏は屋外の熱気の影響を受けづらいので涼しく、冬は室内の暖気を逃さず維持できるため暖かいのが特徴です。高断熱・高気密住宅は冷暖房が効きやすく、夏は涼しく、冬は暖かい、暑さや寒さのストレスを感じにくく快適に過ごしやすいのが大きな魅力です。

冬場の冷えによるヒートショックなどの健康リスクを軽減するだけでなく、夏場の熱中症リスクも軽減します。断熱性能が高い家は『冬暖かい』というイメージが強いですが、快適なのは冬だけではありません。
夏は外からの暑さを遮断し、室内の涼しさを保ちます。これにより、エアコンの使用頻度が減少し、エネルギー効率の向上にも寄与し、光熱費の節約にもつながります。

対策

  • 1⃣ 壁の断熱性のアップ
  • 2⃣ 窓を複層ガラスを使用するなどして断熱性・気密性をアップ
  • 3⃣ 天井や床などに断熱材を付加する躯体断熱リフォーム

期待できる健康上の効果

  • ● 血圧の低下
  • ● 活動の活発化
  • ● 危険入浴の習慣の減少
  • ● 結露発生抑制によりカビなどの発生を抑えることでアレルギー症状などの改善

効率的な換気対策

高断熱・高気密の住宅で忘れてはいけないのが「効率的な換気」です。
高断熱・高気密の住宅は外気による室温の変化を防ぐために気密性が高く、どうしても空気がこもってしまいがちです。室内の換気をしっかりと行わないと建材や家具などから出る汚染物質、臭いなどが室内に留まり、健康に害や悪影響を与えかねません。また換気がうまくできていないと、高性能住宅であっても結露ができやすくなり、やがてカビが発生しアレルギーの原因にもなります。

現在の建築基準法では「24時間換気システム」の導入が義務付けられています。
「24時間換気システム」には、部屋の空気を循環させる役割があります。常に部屋の中に新鮮な空気を入れ、循環させることで、カビや結露の防止につながります。空気の循環により湿気を逃しやすく、家の梁や柱の劣化を抑制し、家自体を長持ちさせることにもつながります。
また、空気の入れ替えを常時行うことで「シックハウス症候群」となる有害物質の排出を促し、濃度低減対策となります。

バリアフリー化

家の中で起きる事故で多いのが転倒や転落です。特に高齢者にはちょっとした段差で躓き転倒し、大きな事故に繋がることがあります。高齢になると一度の骨折が長引いてしまったり、悪くすると寝たきりになったりと介護を必要とする状態を伸ばすことになります。それを予防するためにも、また高齢になって不自由になった体で快適に過ごすためにも住宅のバリアフリー化はとても有効です

あえて段差を作ったり、階段を使ったり、日常の中でちょっとした運動を取り入れることで筋力を鍛えて健康を促進するという考え方もあります。しかし、バリアフリー化で日常生活のちょっとした障害を取り除くというのは長い目で見た時には健康に長生きをするための有効な手段とも言えるでしょう。

住まいのバリアフリー化

  • ● 家の中の段差をなくす
  • ● 階段や廊下、浴槽などに手すりをつける、将来つけられるようにあらかじめ下地を入れておく
  • ● 玄関や通路など、全体的にゆとりを持った設計にする
  • ● 階段を使わない平屋を検討する

新築時でのバリアフリー化なのか、リフォームでのバリアフリー化なのかで対策は異なりますが、将来を見据えた家づくりが長く快適な生活へとつながり、健康寿命を延ばすことにつながります。

身体に優しい素材を使用する

無添加な体に優しい素材を使って家づくりをしている住宅もあります。

漆喰や珪藻土、炭化コルク、米のりなど本物の自然素材を使用し、省エネ効果、調湿性能など優れた機能を発揮した住宅です。口に入れてもいいほど身体にやさしい自然素材なので、現代人を悩ませているシックハウス症候群対策にもとても有効です。

漆喰

漆喰とは「水酸化ナトリウム」を主成分とした自然素材です。水酸化ナトリウムの元となる石灰石は、サンゴ礁が長い時間かけて変化したもので、自然由来の体に優しい素材です。
「漆喰」による塗り壁で仕上げる方法があります。漆喰の壁は「呼吸する壁」とも呼ばれ、部屋の中の湿度をコントロールする性質があり、耐火性にも優れている優秀な素材です。

また、耐久性が高く、二酸化炭素を吸収することでより硬くなるため、年月を経るほどに耐久性がアップしていくのも特徴の一つです。

ただ、漆喰壁にもデメリットはあり、施工に手間と時間、そして費用が通常のクロスよりも高くなります。

(参考)
ビニールクロスなどの貼り替え:1㎡あたり1,000円〜1,500円程度
珪藻土の塗り替え:1㎡あたり4,000円~7,000円程度

珪藻土

珪藻土は、海に生息していた藻類の一種である珪藻という植物性プランクトンが長い年月をかけて化石になった粘土質の土のことです。珪藻土はつねに呼吸しながら空気中の水分を吸放湿する効果があるので、調湿性、吸水性が高く、消臭効果、耐火効果・防音効果などがある天然由来の素材です。

珪藻土は自ら固まる性質がなく、乾燥すると崩れてしまうため、石灰やセメントなどを接着剤として混ぜて使用します。また、珪藻土は吸水性があるため、外壁には向かず、内壁に用いることが多いです。珪藻土を使うことにより、その独特の風合いによりおしゃれで安心安全な機能的な空間を作ることができます。

炭化コルク

炭化コルクは、コルク樫の表皮を素材にしており、高温で蒸し焼きにすることで作られます。コルク自身のヤニで固形化するため接着剤を使用せず、まさに天然コルク100%の断熱材です。断熱性や調湿性が高く、吸音・防虫の効果も持ち、屋根や天井・壁といった外壁の断熱材としてとても優秀なものです。

米のり

米のりは「ご飯」が原料です。
米のりは接着するのに1日以上かかってしまいますが、その接着力はものすごく、木工用ボンドとほぼ同じ強度です。木材との相性は非常によく、その寿命は長く100年以上持つといわれています。
「シックハウス症候群」の大きな原因の一つとされるのが接着剤などに含まれる化学物質です。その代替品としての米のりは無害で安全な接着剤として注目されています。

4.まとめ

この記事では健康寿命を延ばすための家づくりについてみてきました。

この記事をお読みの方は、注文住宅を検討している方も多いかと思います。

注文住宅を建てる方の多くは、まず先にデザインを重視する傾向にあります。
しかし、戸建て住宅に住む上で次のような心配事はありませんか?

  • ● 地震発生時の倒壊リスクが、マンションよりも戸建ての方が高い
  • ● マンションに比べて、部屋が寒い印象がある
  • ● 友人のマンションに比べ、エアコンの効きが悪い
  • ● ヒートショックはマンションよりも戸建てで起きやすい

この記事でも見てきたように、住宅はデザインだけでなく住宅性能を考慮した家造りが重要です。

住宅性能は目に見えませんが、部屋の暖かさや通気性の良さは住んだ後に実感できます。
さらに、高性能住宅は省エネ効果が高いため毎月の光熱費削減にもつながります。

安全・安心で快適な暮らしを送るために、耐震性や断熱性・気密性にも配慮したマイホーム計画を立てましょう。

また近年、住宅関連の様々な補助金制度が運用されており、高性能住宅を建てれば補助金が受け取れます。
さらに、省エネ住宅は税制優遇までも受けられるので活用して損はありません。

リフォームでも補助金はもらえるので、リフォームを考えている方も断熱化を検討すべきでしょう。

理想の注文住宅を手に入れたい方はこちらの動画も参考にしてください。

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