田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第225号]物件価格の妥当性は賃料で見る

2024年10月09日

10月に入り今年度も、はや下半期に入った。自民党総裁戦は石破氏が勝利して第102代総理大臣となり、10月27日には解散総選挙が予定されている。その翌月11月5日にはアメリカ大統領選挙。国内情勢、世界情勢動きが激しい日々が続く。

その度に株価は値動きを見せる。あるときは予想通りに、あるときは予想を反して乱高下したり動かなかったり……。では不動産市場はどうであろうか?

「政治経済」と言われるだけあって政治と経済は、本来全く別のものであるが、密接に関わっている。「経済活動」であり政策によりその動きが左右される不動産市場に関わる者としては、当然、国内政治や国際情勢の動向は大変気になる。しかし、不動産市場は株価のように1日で乱高下することはなく、語弊を恐れず言えばそれほど政治や経済を気にする必要はない。

不動産の価格は原価法、取引事例比較法、収益還元法の三つがあり、それぞれ以下のように導き出される。

原価法 新築した際の価格(再調達価格)から劣化分を差し引く
取引事例比較法 類似する取引事例価格と比較して決定する
収益還元法 将来生み出す収益から現在の価格を決定する


政治動向や景気によって建築費が上昇すれば、不動産価格はどうなるか?原価法では上昇することになるが、原価が上がっても購入者の購買力は上がらないので、むしろ売れ行きが悪くなり、取引事例比較法では価格が下落する可能性がある。一方、新築市場と比べて中古市場が割安に見え価格は上昇するかもしれない。

建築費一つとっても「原価が上がるから上がる」のか「上がるから売れなくなる、そして下がる」となるのか読めない。他にもさまざまな要素について不動産市場の動向は大変読みにくい。

そんなさまざまなある要素の中で、購入者にとって一番インパクトがあるのは、間違いなく金利であろう。金利が上がれば同じ金額の物件でも支払額が増えるため、購入し辛くなり相場にはマイナス方向にはたらく。しかし金利が上昇局面になると買い急ぎで価格が上がる可能性もある。

では、何を指標にすればいいか?一つ挙げるとすれば、それは賃料だ。

不動産価格そのものと違って賃料は景気による影響を受けにくい。不動産価格の決定方法の一つに将来の収益、すなわち不動産の賃料から金額を導き出す収益還元法があることは先述の通りだが、収益還元法によれば景気が変動しても不動産価格はあまり変わらないということになる。特に住宅地においては、景気が上がったから即座に賃料あげる、もしくはその逆となることはあまりない。仮に金利が上がり不動産価格が下がったとしても、賃料の下支えがあり収益還元法で割安金額となれば、投資目線での買いが入ることになる。

そのような観点から不動産を購入する際は過度に景気動向に過敏にならず、賃料バランスをチェックすることが正しい選択と言える。

ただ留意したいのは、投資で購入する人も金利上昇などで購入しにくくなり市場に参入する投資家が減ることもある。それに対する防衛策は金利上昇でも影響を受けないような投資家に好かれる好物件を購入すること。例を挙げると、人口が増加傾向にある都心等の賃貸需要が高いエリアにある物件。その辺りは読者の方には言わずもがなであろうが……。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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