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2024年11月から、既存住宅の省エネ性能を表す「省エネ部位ラベル」の運用が始まりました。
そこでこの記事では、既存住宅(中古住宅)の購入や賃貸住宅への入居を検討している方に向けて、
- ● 省エネ部位ラベルとは何か?
- ● 何が分かるのか
- ● 省エネ性能表示との違い
を解説します。
目次
1. 省エネ部位ラベルとは?
まずは、省エネ部位ラベルとは何なのかご説明します。
既存住宅(中古住宅のこと)において、省エネ効果を高める改修等をした部位を表示するのが「省エネ部位ラベル」です。2024年11月から運用開始されました。
不動産販売・賃貸の広告で表示され、SUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイトでもこのようなラベルが表示されるようになります。
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
省エネ部位ラベルは必ず表示しなければならないものではないので、2024年11月現在、表示されない住戸がほとんどです。不動産の販売・賃貸事業者(売主、貸主、サブリース事業者含む)には省エネ性能を表示する努力義務が課せられます。
省エネ住宅が重視されるようになった理由
なぜ省エネ部位ラベルの表示制度が作られたのか、その背景を簡単に解説します。
2020年に日本政府は「2050年までにカーボンニュートラル※を目指す」ことを宣言。脱炭素化社会を実現するために、政府はさまざまな取り組みを展開することとなりました。
そのうちの一つが、住宅の省エネルギー性能の向上です。
※カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること
住宅・建築物は日本のエネルギー消費量の約3割を占めています。カーボンニュートラルの実現において、住宅の省エネ化は必須と言えるでしょう。
新等級の追加や各種基準の引き上げなど、さまざまな取り組みが行われています。
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
省エネ部位ラベルも、その取り組みの一つです。
省エネ部位ラベルは、「省エネ性能ラベル」の表示が困難な場合でも省エネ性能が分かるように作られました。省エネ性能ラベルとは何なのか、次の章で解説していきます。
2. 省エネ性能表示制度(省エネ性能ラベル)とは?部位ラベルとの違い
それでは、「省エネ性能ラベル」と「省エネ部位ラベル」の違いを解説します。
2024年4月に「省エネ性能表示制度」というものが施行されました。この制度では、「2024年4月以降に建築確認申請を行う建築物は省エネ性能ラベルを表示させる必要がある」としています。
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
省エネ性能ラベルと省エネ部位ラベルの主な違いは、下記のとおりです。
- ● 新築住宅は、省エネ性能ラベルを表示する
- ● 既存住宅でも、可能な限り省エネ性能ラベルを推奨
- ● 省エネ性能の把握が困難な場合は、省エネ部位ラベルを表示する
- ● 省エネ性能ラベルは住宅全体の省エネ性能を表示
- ● 省エネ部位ラベルは部位ごとの省エネ性能を表示
詳しく見ていきましょう。
基本的には、省エネ性能ラベルの表示が望ましい
2024年4月以降に建築確認申請をする不動産は、広告で省エネ性能ラベルを表示する必要があります(表示は努力義務)。
省エネ性能ラベルの対象は、新築住宅だけではないです。既存住宅であっても、省エネ性能ラベルを表示することができます。
ただし、省エネ性能ラベルでは建物の「エネルギー消費性能」や「断熱性能」を表示しなければなりません。そのため、このようになっています。
- 以下の場合は、省エネ性能ラベルを表示する
- ● 省エネ性能を建築時に評価している場合
- ● 既存の設計図面などから比較的容易に省エネ性能が分かる場合
- 以下の場合は、省エネ部位ラベルを表示する
- ● 省エネ性能を把握していない場合
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
ラベルの表示内容も違う
省エネ性能ラベルと省エネ部位ラベルは、ラベルの表示内容も異なります。
省エネ性能ラベルは、住宅のエネルギー消費性能※と断熱性能が一目で分かるようになっています。
※住宅・建築物の一次エネルギー消費量を、国が定める省エネ基準で除した値
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
これらの値は、基本的には住宅全体(マンションなら、マンション全体)の省エネ性能を表しています。
一方で、省エネ部位ラベルは窓・給湯器・外壁・玄関ドアなど個別箇所の省エネ性能を表示しているので、全体だけではなく住戸一つ一つの省エネ性能を表すことも可能です。省エネ部位ラベルの表示内容については、後ほど解説します。
「窓を断熱性能が高い複層ガラスにした」「給湯器を省エネな機種に取り替えた」など、小規模なリフォームでも住戸の省エネ性能が向上することもあります。そのような場合は、省エネ部位ラベルを活用しましょう。
この章でご紹介した「省エネ性能ラベル」についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
省エネ性能表示とは!?エネルギー消費性能や断熱性能といった省エネ性能ラベルの各項目を解説!
「省エネ性能表示制度」の制度概要をご紹介するとともに、省エネ性能ラベルの見方についても解説します。
3.省エネ部位ラベルの表示内容
つづいて、省エネ部位ラベルの表示内容を詳しく見ていきましょう。
省エネ部位ラベルは、必須項目と任意項目に分かれています。
省エネ部位ラベルの必須項目
必須項目(図のA)は、窓と給湯器です。窓または給湯器のいずれか1つ以上が表示の要件を満たしている場合に、省エネ部位ラベルを発行することができます。
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
窓の要件
窓については、リビング・ダイニングのすべての窓のサッシとガラスがいずれかに該当している必要があります。
- サッシの仕様
- ● アルミ製サッシ
- ● アルミ樹脂製サッシ
- ● 樹脂製サッシ
- ● 木製サッシ
- ガラスの仕様
- ● 二層複層ガラス
- ● 三層複層ガラス
- ● 真空ガラス
住宅の断熱性は、サッシとガラスの組み合わせや性能によって変わってきます。サッシは上記の中だと樹脂製サッシが最も断熱性能が高いです。
ガラスは以下図のようになっています。
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
なお、その他の居室の窓のサッシとガラスがリビング・ダイニングと同じ仕様の場合、その旨を「省エネ部位ラベル」に表示することが可能です。
給湯器の要件
給湯器については、以下のいずれかに該当している必要があります。
- ● エコジョーズ
- ● エコフィール
- ● エネファーム
- ● 電気ヒートポンプ給湯器
- ● ハイブリッド給湯器
上記機種は普通の給湯器よりも省エネ性能が高いので、光熱費を節約できます。
エネファーム・電気ヒートポンプ給湯器(エコキュート)・ハイブリッド給湯器については、以下の記事で詳しく解説しています。
最新の給湯省エネ事業の内容や各機器のメリット・デメリットについて解説します。
省エネ部位ラベルの任意項目
画像出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」https://www.mlit.go.jp/shoene-label/
任意項目(図のB)は、以下の部位が一定の要件を満たしている場合に表示することができます。
- ● 外壁
- ● 玄関ドア
- ● 節湯水栓
- ● 高断熱浴槽
- ● 空調設備
- ● 太陽光発電
- ● 太陽熱利用
上記が表示されている場合には、その部位の省エネ性能が高いということです。省エネ性能が高いことのメリットは、後ほどご説明しています。
4.省エネ部位ラベルのメリットとポイント
最後に、省エネ部位ラベルのメリットとポイントを解説します。
省エネな住宅にはメリットが多くある
省エネ部位ラベルが表示されているということは、その部位の省エネ性能が高いということです。省エネ=環境に優しいということですが、それだけでなく、住んでいる人にとってもメリットは多くあります。
省エネな住宅の主なメリット
- ● 光熱水費が削減される
- ● (高断熱住宅なら)冬は暖かく、夏は涼しくて家の中が年中快適
- ● (高断熱住宅なら)ヒートショックや熱中症のリスクが低くなる
- ● (購入の場合)補助金や税金の控除を受けられることがある
省エネ性能の高い住宅に住んだときの大きなメリットは、光熱水費の削減です。
最近は電気代やガス代の高騰が続いています。「光熱水費が年々高くなっている・・」と悩んでいる人も多いですよね。
光熱水費は毎月支払う費用なので、削減された場合には恩恵を実感しやすいでしょう。
断熱性能が高い住宅なら、冬でも家の中が暖かくて快適です。断熱性能がかなり高い場合、夏は外の暑さを遮断してくれるので、室内の涼しさが保たれます。
暖房やエアコン代の使用量も減り、節約にもなるでしょう。
また、断熱性能が高いと住宅内の温度差も少なくなることから、健康面でもメリットがあります。冬場はヒートショック、夏場は熱中症になるリスクが低くなるからです。
花粉症・喘息・アトピーなどの症状が軽減されるという研究結果も出ています。
住宅を購入する場合には、補助金や減税制度を受けられることがあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
メリットが多いからこそ、住宅購入や賃貸住宅の入居を検討している場合には、省エネ部位ラベルに注目するようにしましょう。
【不動産購入・賃貸住宅検討時】省エネ部位ラベルを見るときのポイント
省エネ部位ラベルを見るときには、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。今回は、2つのケースに分けた上で、ポイントを解説していきます。
必須項目のうち、給湯器しか表示されていない場合
省エネ部位ラベルの必須項目は窓と給湯器ですが、給湯器しか表示されていない場合には、窓については要件(サッシ・ガラスの性能)が満たされていないことが考えられます。
サッシは断熱性能がそれほど高くない「アルミ製サッシ」でも良いとされているので、そうなるとガラスが複層ではない=単板ガラスなのかもしれません。
一般社団法人「板硝子協会」の資料によると、最近建てられた住宅の75%~99%(共同住宅は75%、戸建て住宅は99%)では複層ガラスを使用しています。しかし約16年前の2008年頃は、共同住宅の複層ガラス普及率は28%でした。
参考:一般社団法人 板硝子協会 資料https://www.itakyo.or.jp/data/data.html
単板ガラスは、断熱性能が低く、結露も起きやすいです。冬場において、熱の半分以上が窓から流出すると言われています。単板ガラスだと特に寒く感じるでしょう。
また、割れやすいというデメリットもあり、防犯面を考えても不安が残ります。
断熱性能を重視している場合には、省エネ部位ラベルで窓の性能表示を確認してみてください。
複層ガラス(ペアガラス)については、こちらの記事で解説しています。
必須項目のうち、窓しか表示されていない場合
省エネ部位ラベルで「給湯器」が表示されていない場合には、省エネ性能が高くない給湯器であることが考えられます。
特に賃貸住宅では、初期投資を抑えるために省エネ性能よりもコストが優先されるケースが多く、一般的な給湯器が設置されていることが多いです。
2024年には賃貸住宅事業者向けの給湯器補助金事業があり、これから賃貸住宅でも少しずつ省エネな給湯器の設置が増えてくるかもしれません。とはいえ、現状はかなり少数派です。
給湯器などの住宅設備は、一般的には分譲マンションの方が高性能となっています。省エネ性能の高い設備を使用したい人は、分譲マンションで賃貸に出ている部屋を探すのも良いでしょう。
ただし、分譲マンションの場合は借りるよりも同じ部屋を買った方が月々の支払いが安くなるケースが多いです。数年以内に引っ越す予定がない場合には、住宅購入を検討することをおすすめします。
マンション購入のメリット・デメリットとは?一戸建て・賃貸と徹底比較!どっちがお得?
分譲マンション・一戸建て・賃貸それぞれのメリット・デメリットを解説します。
5.まとめ
今回の記事では、省エネ部位ラベルの表示内容や、省エネ性能ラベルとの違いを解説しました。
賃貸住宅を探す際には、特に「家賃」に注目をする人がほとんどでしょう。毎月発生する費用で、生活費の中でも占める割合が大きいからです。
しかし、これからの時代は家賃だけでなく、省エネ性能も重要になってきます。快適に過ごせるだけではなく、光熱水費も節約されるので経済的です。
住宅購入の場合は、より一層、住宅の省エネ性能が重要となってきます。省エネ性能が高い住宅に住むことで補助金や減税も受けられることがあるので、必ずチェックしてください。
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