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近年は、省エネ住宅の推進により「断熱」という言葉を耳にすることが多くなってきました。
その中でも「外張り断熱」は建物の外側で熱の流れを遮断する仕組みのことです。
「外張り断熱ってどういうこと?」「外張り断熱と充填断熱ってよく聞くけど、結局どっちがいいの?」とお考えの方もいらっしゃると思います。
本記事では、外張り断熱のメリット・デメリットや充填断熱との違い、費用相場を詳しく解説します。断熱リフォームを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.外張り断熱の基礎知識
「外張り断熱」について「具体的にどんな工法なのかわからない」という方も多いと思います。
この章では、外張り断熱の基本的な知識や「外断熱」との違いについて解説します。
外張り断熱とは?
そもそも断熱とは、熱の移動を遮断して室内の温度を一定に保つことです。
外張り断熱工法(以下 外張り断熱)は木造・鉄骨造の建物の外部に断熱材を取り付ける断熱方法のことをいいます。
具体的には、住宅の柱や梁などの外側から全体を丸ごと断熱材で覆って建物にベールを纏わせるような施工方法です。
(画像出典:断熱.com https://dannetsujyutaku.com/basic/knowledge/method)
建物の全体を断熱材で覆うため、断熱材の切れ目がなく室内の気密性が高くなるという特徴があります。
外気の影響を受けにくくなり、寒い冬も暑い夏も安定した室温を維持できます。冷暖房の効果も高まるので、省エネにもつながります!詳しくは「3.外張り断熱のメリット」でも解説します。
近年は省エネ住宅が推進されています。そのため従来の工法(充填断熱)よりも、断熱性能の高い外張り断熱が注目されています。
外断熱との違いは?
最近では「外断熱」という言葉を聞くことも多いかもしれません。
外断熱とは、鉄筋コンクリート造(RC造)においてコンクリート構造体の外側に断熱材を設ける断熱方法のことです。
外断熱と外張り断熱の違い
- ● 外断熱:鉄筋コンクリート造(RC造)で用いられる工法
- ● 外張り断熱:木造・鉄骨造で用いられる工法
外断熱・外張り断熱を一括りにして「外断熱」と指すケースもありますが、基本的には区別して覚えておくとよいでしょう。
外張り断熱で使用する断熱材
外張り断熱では、主に発泡プラスチック系の断熱材を使用することが多いです。
断熱材の種類 | 発泡プラスチック系断熱材 |
---|---|
名称 | ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS) 押出法ポリスチレンフォーム(XPS) 硬化ウレタンフォーム ポリエチレンフォーム フェノールフォーム など |
メリット | ● 断熱性能が高い ● 湿気に強い ● 軽い |
デメリット | ● コストが高い ● 耐火性能が低い ● シロアリが侵入するリスクあり |
発泡プラスチック系の断熱材は他の素材に比べてコストが高いですが、高断熱・高気密の住宅をつくるために適した素材です。
しかし、耐火性能が低い・シロアリが侵入するリスクなどデメリットもあるので、対策が必要になる場合もあります。詳しくは「4.外張り断熱のデメリット」でも解説します。
また、上記のメリット・デメリットだけではなく、住宅の立地条件や気候・予算などに応じて最適な断熱材を選ぶことをおすすめします。
2.外張り断熱と充填断熱の違いとは
ここからは、外張り断熱とよく比較される「充填断熱」について解説します。
充填断熱とは?
充填断熱工法(以下 充填断熱)とは、木造・鉄骨造の建物の内側に断熱材を設置する(充填する)断熱方法です。
具体的には、壁の内側の柱と柱の間や、天井のすき間に断熱材を埋め込むような施工方法です。袋に詰められた繊維系断熱材を充填していく方法が一般的になります。
(画像出典:断熱.com https://dannetsujyutaku.com/basic/knowledge/method)
建物の内側から断熱する方法については「内断熱」とよばれることがありますが、正式には、木造・鉄骨造の場合は「充填断熱」、RC造の場合は「内断熱」といいますのでこちらも区別して覚えておくと良いでしょう。
断熱材は主にグラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材が使われます。「外張り断熱で使う断熱材」で説明した発泡プラスチック系の断熱材よりも、安価でコストパフォーマンスが良いことが特徴です。
そのため、充填断熱は従来の建築において一般的な工法とされてきました。
外張り断熱と充填断熱を比較
ここからは「外張り断熱」と「充填断熱」について3つのポイントから比較して解説します。
比較ポイント① コスト
まずは、コストを比較してみましょう。それぞれの一般的な相場は次のとおりです。
工法 | コスト |
---|---|
外張り断熱工法 | 高い(8,000~4万円/㎡) |
充填断熱工法 | 低い(8,000~3万円/㎡) |
(※ 材料の種類・住宅の築年数や面積・施工業者によって価格は変わります)
外張り断熱では、一般的にコストが高くなるといわれています。
その要因の1つに充填断熱よりも施工が難しいことが挙げられます。壁面や屋根の形に合わせた断熱材の加工などの作業行程が増えるためです。
また「外張り断熱で使う断熱材」で説明したとおり、価格の高い断熱材を使用することが多いため総合的なコストもかかることになります。
一方、充填断熱は外張り断熱よりも施工が容易で一般的な工法です。安価な繊維系断熱材を使用するため、コストを抑えやすいのが特徴です。
比較ポイント② 断熱性
次に、断熱性の点で比較してみましょう。
工法 | 断熱性 |
---|---|
外張り断熱工法 | 気密性・断熱性が高い |
充填断熱工法 | 壁内結露が発生する恐れがあり、 断熱効果がなくなる可能性もある |
外張り断熱では、建物全体を外部からベールのように包むため、熱橋(熱が伝わりやすい部分)を最小限に抑えることができます。
そのため、気密性が高く、季節を問わず室内の温度を一定に保つことが可能になります。
一方、充填断熱は壁の内部に断熱材を設置する工法です。
室内と室外の温度差の激しい季節においては、柱や梁などが熱橋(熱が伝わりやすい部分)となり、断熱効果が落ちてしまうことも考えられます。
また、木材と断熱材の間に隙間ができやすいというリスクもあります。
隙間ができると壁の内部に結露が発生する恐れがあります。結露ができてしまうと住宅自体を腐らせてしまう要因となってしまいます。
耐震性の低下などにもつながる危険があるため、充填断熱では結露対策と定期的なメンテナンスが重要です。
比較ポイント③ 耐火性
最後に、耐火性の点からも比較してみましょう。
工法 | 耐火性 |
---|---|
外張り断熱工法 | やや低い 断熱材の耐火性能には要注意 |
充填断熱工法 | 高い 耐火性の高い断熱材を使用している |
まず、外張り断熱では建物の外側に断熱材を設置する工法のため、火災時には直接火にさらされる危険性があります。
また、外張り断熱で主に使用される発泡プラスチック系の断熱材は、一般的には繊維系素材と比べると耐火性は劣ります。(使用する断熱材の種類にもよる)
一方、充填断熱で主に使用されるのはグラスウールやロックウールなど耐火性の高い断熱材のため、火災時のリスクは低いといえるでしょう。
3.外張り断熱のメリット
外張り断熱と充填断熱を比較してきましたが、改めて外張り断熱のメリットをまとめてみましょう。
- 1.気密性が高くなる
- 2.住宅の劣化を防ぐ
- 3.空間を活用できる
メリット① 気密性が高くなる
「外張り断熱とは?」で解説したとおり、外張り断熱では気密性の高さが一番のメリットです。
冷暖房効率が向上するため夏は涼しく・冬は暖かいという快適な住環境が実現します!
エネルギー消費を抑えることができるので、結果として光熱費の削減につながります。また、気密性が高いと、断熱性だけではなく騒音を防ぐ効果も期待できます。
メリット② 住宅の劣化を防ぐ
外張り断熱と比較される充填断熱では、内部に隙間ができやすく室内と室外の温度差から結露が起こりやすいといわれています。
外張り断熱では建物の外側を断熱材で覆うので、このような結露の発生リスクが低いのもメリットの一つです。
結露は、木材の腐敗など住宅の劣化を引き起こす原因となってしまいます。外張り断熱を採用することで、住宅の耐久性が向上し長期間にわたって快適な住環境を維持することができます。
メリット③ 空間を活用できる
外張り断熱では、壁や屋根の外側に断熱材を設置します。
充填断熱と違い、断熱材を壁の内部に設置する必要がないため、その分の空間を有効利用することができます。
余ったスペースを活用して、収納スペースを設けることや棚をつくることも可能です。また、配管・配線計画もしやすいので設計の自由度が高まり、個人のライフスタイルに合わせた住宅環境を実現できます。
4.外張り断熱のデメリット
外張り断熱のデメリットは次のとおりです。
- 1.厚みのある断熱材を使うのは難しい
- 2.火災時の危険性が高い
- 3.シロアリが侵入するリスクがある
デメリット① 厚みのある断熱材を使うのは難しい
外張り断熱では建物の外側に断熱材を設置するため、断熱材の厚さの分だけ壁のトータルの厚さが増してしまいます。
もし狭小敷地で外張り断熱を行う場合は、部屋を狭くするなどの制限が出てきてしまうので注意が必要です。
また、断熱材の厚さがあるとその重みで外壁が垂れ下がってしまうリスクがあります。
こういった理由から断熱材はあまり厚くできないのですが、薄すぎると断熱効果が小さくなってしまいます。薄くて断熱性の高い断熱材を使用すると、さらにコストがかかってしまう場合もあります。
住んでいる地域の気候や断熱材の種類などによって、適正な断熱材の厚みは変わるので、施工業者の方とよく相談するようにしましょう。
デメリット② 火災時の危険性が高い
「比較ポイント③ 耐火性」でも解説したとおり、外張り断熱で使用される発泡スチロール系の断熱材は耐火性に劣るというデメリットがあります。
海外では、平成29年6月にロンドンのタワーマンションで外壁に用いられた有機系断熱材が燃焼し、大規模な火災が起きてしまった事例もあります。(グレンフェル・タワー火災)
(参考:ロンドン共同住宅火災について https://www.mlit.go.jp/common/001205300.pdf)
日本では、建築基準法に基づいて材料や施工方法に関する防火性能の基準が設けられており、各メーカーによって難燃処理された断熱材も開発されています。
しかし、グラスウールやロックウールなどの繊維系素材より耐火性が劣るという点は頭に入れておく必要があるでしょう。
デメリット③ シロアリが侵入するリスクがある
外張り断熱では、シロアリが侵入しやすいといわれています。
断熱材が土壌に触れるため直接侵入しやすく、外張り断熱による温度や湿度の変化が少なく安定した環境がシロアリの住処となってしまう原因です。
シロアリを防ぐ薬剤を添加処理した断熱材の使用や、ステンレスメッシュを用いて物理的にシャットアウトする方法もありますが、100%防ぐのは難しいといわれています。
5.断熱リフォームにおける注意点
外張り断熱のメリット・デメリット、充填断熱との比較について解説してきました。
最後に、断熱リフォームを行う前の注意点や知っておくべきことを解説します。
外張り断熱と充填断熱を併用した方法もある
省エネ住宅が推進されている近年では、外張り断熱と充填断熱を組み合わせた付加断熱(ダブル断熱)も注目されています。
外張り断熱と充填断熱のハイブリット工法で、高い断熱性を保てるため北海道などの寒冷地を中心に多く取り入れられています。
ハウスメーカーによっては対応できる会社もあるので、より断熱性の高い住宅を求める場合は検討してみるのも良いかもしれません。
断熱リフォームで補助金が利用できる
外張り断熱の費用相場は30坪前後で100〜400万円程度といわれています。(施工業者・施工内容による)
高額なリフォームになるため、外張り断熱リフォームを行う際は補助金制度を上手に利用することをおすすめします。
外張り断熱で利用できる補助金制度については、以下の記事で詳しく解説しています。(2025年度も補助金制度は継続予定です)
【2024年最新】既存住宅における断熱リフォーム支援事業とは?
「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」について、制度概要や補助金の支給条件を解説します。
【2024年最新】次世代省エネ建材の実証支援事業とは?補助金がもらえる要件を解説
「次世代省エネ建材の実証支援事業」について、制度概要や補助金の支給条件をご紹介します。
6.まとめ
今回は、外張り断熱の特徴や充填断熱との比較について解説しました。
どちらの工法にもそれぞれメリット・デメリットがありますので、理解した上で断熱リフォームを進めるようにしましょう。
住んでいる地域の気候や住宅の築年数によっても、どのような断熱リフォームが適しているのかは変わってきます。施工業者などの専門家に事前に相談することをおすすめします!
また、断熱リフォームは高額となりますので補助金制度についても合わせて確認するようにしましょう。
省エネ住宅の重要度は理解できたし、今なら補助金ももらえる。いざ行動しよう!とした皆さんは、以下のように思われたのではないでしょうか?
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