田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第70号]本当の山の手暮らしを実現〜リビオ六甲THE HILLS<ザ・ヒルズ>

2018年03月28日

●最寄駅は六甲ケーブル駅!

都心、駅近、フラットアクセス。これにタワーが入れば完璧かもしれない。今注目されているマンションのトレンドだ。そんな状況の中、この価値観に真っ向から挑戦するようなマンションがあった。兵庫/100〜199戸の1位の「リビオ六甲THE HILLS<ザ・ヒルズ>」だ。

場所は神戸市灘区。人気の阪神間だ。最寄駅は阪急神戸線「六甲」駅でそこからのバス便と概要には記載されている。しかし最寄駅は阪急神戸線ではない。本当の最寄駅は六甲ケーブルの「六甲ケーブル下」駅。ケーブルの行き先は六甲山展覧台のある「六甲山上」駅。このマンション、山頂へ向かうケーブルがすぐ近くを走るような「山の上」のマンションなのだ。

もちろんフラットアクセスでは無い。本物件の建設地の標高は200m超。阪急「六甲」駅の標高が約60mなのでその高低差は約140mもある。駅と本物件の直線距離が約1.3kmなので、その勾配6度超(約11%)、スキー場の初心者向けゲレンデの斜度程の坂道となる。

こう書くとこのマンションの立地を揶揄しているように見えるかもしれないが、決してそうでは無い。むしろこのような立地にマンションを建築することに対してデベロッパーの意気込み、分譲マンションの可能性を感じる。

このマンションの特徴は何といってもその立地。山の手というよりも山際といった方がいいようなその立地だ。バス一本で結ばれるJR快速停車駅の「六甲道」駅から竣工後に本物件を見上げれば、その外観は六甲山の麓ならぬ市街地と山間部の境目に見える。


●山の手マンションの価値は空気

本物件のWEBサイトでは「パノラマ眺望の暮らし」のコピーが見られる。売主とすれば眺望の良さを前面に押し出しているのであろうが、本物件の良さは眺望ではなく、「山の手の空気」だ。

阪神間(に限らないが)の山の手に暮らしたことのある人ならわかるであろうが、市街地と少し離れた標高の高いエリアは空気が澄んでいる。冬の凛とした空気、夏の朝夕の過ごしやすさ、そして一年を通じての空気が澄んでいる。この空気の良さ、それだけで十分値打ちがある。六甲の眺望がとりわけ優れているとはいえ、眺望ならどんな場所でも高層マンションなら手に入る。


●気軽な「郊外居住」が実現可能

あくまで現時点のWEBサイトを見ただけの感想だが、折角このような立地に供給するのに山の手立地を活かした打出し方に徹しきれていないのは少し残念に感じた。「TSUTAYA BOOKSTORE」が空間デザインをプロデュースし、「アーバンリサーチドアーズ」によるコーディネートで家具やインテリアを演出したシェアラウンジ。これはこれで悪くはないが「山の手の空気感」と親和性があるようには見えない。「立地が不便なのでウケそうなものを作っておこう」。そんな事業主の「流行りに寄せた」姿勢が感じられる気がする。

都会を避け遠距離通勤をして郊外に住む人が増えている。少々の不便さは受け入れても環境を手に入れたいというライフスタイルだ。そのような志向のある人にとっては、近郊都市に移住するよりも本物件のような「交通利便性が高くない」マンションを選ぶ方が、都会と郊外の良いとこ取りができて良いような気がするがいかがであろうか?


※参考:今、旬なマンション(2018/03/25 01:15 更新)
兵庫 100〜199戸  30日間 マイページ登録数
https://www.sumai-surfin.com/product/ranking/re_rank_season.php?m=0&t=1&a=27

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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