本コラムを読んでらっしゃる方の中には京都の土地勘に乏しい人も多いであろう。首都圏はもちろん大阪在住者でも「京都の地理はわからない」という人は少なくない。今回は、京都市内の交通網を「初心者向け」に簡単に説明したい。
【大阪へはJR東海道線、阪急京都線、京阪本線が便利】
大阪市内中心部から京都市内中心部へ乗り換えなしで鉄道移動するには、3通りの方法が有る。
一つ目はJR東海道線。「京都」駅から「大阪」駅まで新快速利用で約30分、時間を考えるとJR線が一番便利。ただ、JR東海道線の駅は京都市内に4駅(山科、京都、西大路、桂川)しかなく選択肢は少ない。
二つ目は阪急京都線。始発の「河原町」駅から「梅田」駅までは約50分。JRと比べるとかなり遅く、他の鉄道路線との乗り換え/乗り入れも少ない。駅の数は多く、京都市内の阪急京都線の駅は全部で7駅。
三つ目は京阪線。本線と鴨東(おうとう)線の2路線があるが完全につながっており乗っていても別路線とはわからない。大阪へ乗り換えなしだが、到着駅は「淀屋橋」駅(と「中之島」駅)で、梅田(大阪)とは少し離れている。始発の「出町柳」駅から「淀屋橋」駅までは特急利用でも60分強とJRの倍以上かかる。
大阪勤務だけを考え、移動時間の短い順に並べると、JR東海道線>阪急京都線>京阪本線(鴨東線)となる。ただし、京阪線は奈良方面への移動、近鉄との乗換などを考えると阪急線よりも便利であり、移動時間の差も10分しかない。利用する駅によっては誤差の範囲だ。梅田/淀屋橋と終点は異なるが、どちらも利用可能であれば、比較して不動産価格の安い京阪本線沿線の方がお得かもしれない。
【京都市内の移動には他社路線乗り入れの地下鉄沿線が便利】
上記のJR東海道線と阪急京都線は、京都市内の移動に関しては、正直使えない。駅数があまりにも少なく網羅性に乏しいのだ。
その点、市内移動に便利なのは京都市営地下鉄。市内中心部を、東西に東西線、南北には烏丸線が、京都市内のビジネス街中心部である「烏丸御池」駅を交点として十字に走る。この「交点」あたりには市役所等や府庁などの公共機関もあり生活利便性が高く、マンション立地として人気がある。ちなみに世界的に人気の高い「エースホテル」が日本で初めて開業するのはこの「烏丸御池」駅の上。 2019年の開業予定だ。
また、東西線と烏丸線はそれぞれ「山科」駅と「京都」駅で同名のJR東海道線と乗換可能。どちらも新快速停車駅で広域移動に不便はない。他の私鉄線と乗り入れているのも特徴。東西線は東方面で京阪線、烏丸線は南方面で近鉄線と乗り入れている。烏丸線では(時間帯等にもよるが)1時間に1本程度奈良行の電車が走っているが、その行き先表示をみて驚く人も多い。
【市内の移動、本当に便利なのはバス利用】
上記はいずれも鉄道だったが、京都に住んで市内を利用する際に一番便利な公共交通機関は、ズバリ、バスだ。
京都市内中心部には京都市営バス、京都バス、京阪バスの3社がそれぞれ複数路線を運行している。その密集度はかなりなもので、蜘蛛の網のように市内中心部同士、または中心部から郊外エリアに向けて張り巡らされている。
京都市内は鉄道の駅が少ないため、「鉄道駅の徒歩圏内エリア」が大阪市や神戸市の中心部と比べて少ない。よって住み慣れてきたら鉄道ではなくバスを利用する機会が増える。京都に限らないが、一般的には同じ路線の長さなら鉄道の駅よりもバス停の方が数が多いので、目的地のすぐ近くまでいけるという利点がある。ただし以下の2点については事前に注意しておきたい。
一つ目は交通渋滞。昨今の京都市内の観光客数は異常ともいえ、観光地や中心日は、日本人よりも外国人の方が多いことも、全く珍しくない。その観光客の多くがバスを利用するため、ここ数年の京都市内のバス路線はどこも大変混雑している。路線や時間帯によれば「バス停で長蛇の列」「到着したバスに乗れず見送り」といった事態も起こる。路線が多数あるので、エリアによっては「別系統乗継」や「別ルート」といった対処法も考える必要がある。
二つ目はバス停の位置。路線が多いため、乗降客の多いハブ駅ではバス停が10個以上あることもある。またそれほど大きい駅がなくても、交差点の東西南北で5〜6個のバス停があるなんてことも全くもって珍しくない。バス路線を利用するときは、交差点名だけでなく、東西南北どちらの場所か、そしてどちら向きか、の確認が必須事項だ。
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以上、簡単だが京都市内の交通網について説明した。上記以外にも路面電車や、それぞれの路線の支線等がある。まずは「京都の地理はわからない」と喰わず嫌いをせずどちらかの路線を利用してみるとよい。首都圏はもちろん、大阪市内の交通網よりも単純でわかりやすい(と思うのだが……)。