住生活総合調査というものをご存じだろうか?総務省が10月に実施する「平成30年住宅・土地統計調査」の対象世帯約320万世帯より無作為に抽出した約12万世帯を対象とした国土交通省により実施される調査で、「住生活全般に関する実態や居住者の意向・満足度等」を調べることを目的に5年ごとに行われている。
この調査、過去の調査結果との比較によって、国民の住生活に関する意識の変化等が見て取れるなかなか面白いものなのだが、今年の12月から行われて結果が出るのは速報で平成32年1月頃、確報が発表されるのは平成32年8月頃といずれにしても2年先。そこまで待てないので、今回は平成25年度版の結果を元に、この調査で一体どのようなことがわかるのか簡単にその一部を紹介したい。(*資料中の元号表記はすべて西暦表記に書き換えて記載する。)
《「居住環境への不満」は30年間減少の一途》
調査の目的の一つである住生活の満足度の推移。ここ30年間は一貫して住宅や居住環境に不満を持つ人が減り続けている。「非常に不満」と「多少不満」を足した「不満率」。1983年は38.4%と3人に1人以上が不満であったのが、2013年は22.1%と約5人に1人まで減少している。
この「不満減少」の傾向は借家の方が著しい。同期間で持ち家の不満率は33.6%から21.0%へと12.6%改善したのに対し、借家は47.6%から24.8%へと22.8%の改善。この差約10%だ。
不満率の減少は、分譲住宅や注文住宅の進歩もさることながら、賃貸住宅の居住性能のアップによるものが大きいと推察される。
《持ち家志向から「借家から借家」へ》
「今後5年以内の住み替え意向」の「居住形態の変化別経年変化」、簡単に言えば「今後5年間に住み替えたいと考えている人が現在住んでいるのは持ち家か借家か。住み替え後住みたいのは持ち家か借家か。」ということだ。この結果も興味深い。
1983年から2013年、どの期間においても一番多いのは「借家→持ち家」。「夢のマイホーム」とまでいわなくとも「いつかは持ち家」というアレだ。しかしその割合は減少。53.2%から42.8%へと減っている。また、それ以上に減少しているのが「持ち家→持ち家」で33.6%から15.4%へと半分以下になっている。バブル前の1983年、2人に1人が「借家から持ち家に」、3人に1人が「持ち家を買い換えてステップアップを」と考えていたのが2013年には双方合わせて2人に1人程度に減ったというわけだ。
では何が増えたのか?それは「借家→借家」。12.5%から38.4%。なんと3倍以上だ。その昔、「賃貸住宅から脱出したい」という人が圧倒的多数(53.2%)であったのが今や「借家→借家」とそれほど変わらない(それぞれ42.8%、38.3%)というのは、賃貸住宅の不満率が激減していることが関係しているように思える。
《関西人はポジティブ志向?》
と、ここまでの2点は全国平均の結果。最後は関西のトピックを紹介したい。「今後の住み替えの目的」という項目について、その結果が各地域ごとに分類集計されているのだが、全国や他エリアと京阪神大都市圏との差はどこにあるか?
全国、関東大都市圏、中京大都市圏、京阪神大都市圏で住み替えの目的を比べ、京阪神大都市圏が突出して多かった理由が「退職・離職後の生活の充実・平穏」と「高齢期の生活の安全・安心や住みやすさの向上」の二つ。他の都市圏や全国平均と比べ、関西人の方がリタイヤ後・老後の生活の質に関心があるのか、不安があるのか。あくまで個人的感覚で恐縮だが関西人の方が老後をポジティブに捉えている人が多いことが理由のように感じる。
一方、京阪神大都市圏が突出して少なかった理由は「住宅を広くする、部屋を増やす」と「間取り、収納、設備などを使いやすくする」。こちらについては関西の住宅事情が「十分に広い」「十分に使いやすい」から住み替え目的としてと割合が低いと考えるよりも、やはりこちらも現状を受け入れる「関西人のポジティブさ」と考える方がしっくりいくのだが、いかがだろうか?
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前回調査時の2013年には、空き家問題がそれほど取り沙汰されておらず、「民泊」ということばもまだまだマイナーだった。あれから5年、不動産を取り巻く環境は変化したが国民の住生活に関する意識はどのように変化しているか? 2年後の結果公表が今から楽しみだ。
(参考サイト)
http://www.mlit.go.jp/common/001104812.pdf
平成25年住生活総合調査結果(PDF)