田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第97号]令和時代の不動産の選び方 〜平成時代との違いから考える〜

2019年05月09日

平成が終わり、10連休が終わり、一息ついた人も多いだろう。こちらも、今回が令和初の記事ということで平成に変わった頃と元号が変わり令和となった今、その不動産を取り巻く環境の違い、とりわけ人口動態について押さえておきたい。

まず昨今よくいわれる人口問題はどうか?人口減少時代といわれているが、人口自体は平成が始まった頃よりも今の方が多い。平成元年に1億2300万人だったのが令和元年は1億2600万人。300万人も増えている。人口と土地の需要が比例するのであれば現在の方が土地価格は高くなっているはずだ。しかし現実はそうではない。東京の都心部商業地、例えば銀座では現在の土地価格はバブル時を上回っているような例外はあるが、地方はもちろん大阪等の都市圏においても人口が増えているにもかかわらず、土地の価格は下がっている。

これは「人口」ではなく「人口動態」が関係する。人口は今の方が多いが、平成の始まりは「人口増加中」だったにのに対し、今は「人口減少中」。ここが大きく違う。人口が減っていくことに対して先行きの不安を感じている人が多いわけだ。実際に平成が始まった頃は、いわゆる土地神話の時代であり「持っていれば上がる」が当然と考えられていた。特に商業地においては利回り等の収益性よりも「思惑買い」が主流であった。

もう一つ平成と令和で大きく違うのは年齢構成。いわゆる「高齢化」だ。総務省の「日本の統計2017」によると平成2年は年少人口(0〜14歳)、老年人口(65歳以上)の割合がそれぞれ18%、12%であったのが令和2年の推計値ではそれぞれ12%、29%となっている。たかが30年で「子供が老人の1.5倍」の世の中から「老人が子供の倍以上」へと変わった。このインパクトは人口問題よりも大きい。

今後20〜30年(上記統計では「平成57年(=令和27年)」がピーク)は老年人口が増え続け、年少人口そしていちばん不動産の買い手と言える15〜64歳の生産年齢人口は今後数十年、統計で数字が出ている「平成107年(=令和77年)」まで一直線に減り続ける。

なにやら暗い話だが、これは厳然とした事実。数十年かけたいい方向に「予測が外れる」ことはあり得るが大きく変わることはない。なので平成時代にあったような「思惑買い」で日本の不動産が満遍なく上昇するような世の中がこないことは確実だ。

しかし、人口減少といっても数千万人の人がこの国土に暮らす。高齢化しても住宅ニーズは無くならない。日本の不動産価値の総和が減じていっても、すべての不動産価値が下がるわけではない。ではこのような状況下で令和時代はどのような不動産を手に入れるべきか?紙幅の制限もあり詳しい説明は書けないが以下簡単に3点のポイントを上げる。

1、年配者の好む立地・物件
高齢化が進むことで当然年配者の好む立地・物件の需要が高まる。平成時代に人気であった「山の手の閑静な住宅地」は足腰にこたえ、買い物も不便。令和時代はさらに「フラットな商業地」にトレンドが移る。関西なら「山の手私鉄沿線」よりも「平地のJR沿線」へと人気はシフトする。

2、賃貸に出しやすい立地・物件
高齢化で「相続対策ニーズ」が増える。アパートでもマンションでも購入後は賃貸に出す。また若年者層は収入が伸びず、もしくはライフスタイルの変化により賃貸派が増えている。一部の高級物件を除けば賃貸に出しやすい不動産の需要が高まる。一戸建てよりもマンション、さらには特徴のないファミリーマンションよりもグレード感のあるマンションへと人気はシフトする。

3、集積される中心部
人口減少で不動産はより選びやすくなり、中心部に近いエリアでのニーズが高まる。現在でも地方より東京という中心部の需要の高まり以外に各地方、各都道府県、各市区町村、さらには各駅圏内等もっと細かいメッシュのなかでも同じことがおきている。迷ったらならより中心部の物件を選ぶべし。郊外ニュータウンよりも梅田・なんば、郊外でも「駅直近物件」は人気が保たれやすい。

郊外の物件がリノベーションで人気が高まる、町や商店街が住民の努力で活気を取り戻す。そのような個別要因もあるであろうが、それは自身でコントロールできない要素。成功している事例もあるが失敗事例も多くある。不動産の資産価値を考えるなら、人口動態そしてそこから起きる大きな流れを考慮した上で物件選びをするのが王道だ。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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