** 路線価価格、大きく値上がりしたのは大阪 **
路線価の対前年変動率、大阪の伸びが顕著だった。
さる7月1日に国税庁から発表された2019年分の路線価。大都市圏はいずれも上昇した。全国の平均変動率は前年比プラス1.3%で4年連続の上昇。都道府県別でみると19都道府県が上昇、27県が下落。19+27=46と足し算が合わないのは、兵庫県が横ばいだったから。
中には極端に上昇したポイントもある。全国の変動率TOP10は10位(大阪市北区)が27.4%。TOP(北海道倶知安町)はなんと50%の大幅増。なんとも景気のいい話だが、関西在住者として驚いたのは、その10ポイントのうちなんと4ポイントが大阪府下だったこと。京都府下も2ポイントあり「過半数が関西」となった。
京都の2ポイントはどちらも市街地中心部であり、外国人観光客の急増やホテルの建設ラッシュ等のインバウンド需要の高まりに伴うもの。1位の北海道倶知安町はスキーリゾート、3位の沖縄県那覇市は国際通等の観光地、唯一東京都下である6位の台東区についても浅草寺と、いずれも背景は同じといえる。
しかし、大阪府下の4ポイントは少し様子が異なる。
** インバウンド需要だけではない大阪躍進の理由 **
上昇率TOP10に入った大阪府下のポイントは大阪市淀川区宮原(JR「新大阪」駅徒歩5分)、吹田市豊津町(大阪メトロ「江坂」駅徒歩3分)、豊中市新千里東町(北大阪急行「千里中央」駅徒歩1分)、大阪市北区角田町(阪急「梅田」駅徒歩1分)(*)。梅田はインバンド需要増加による効果はあるが、難波や心斎橋ほどではない。新大阪も観光客の新幹線利用による需要増加もあるが、徒歩5分のこのエリアにまでそれほど及んでいるとも考えにくい。江坂、千里中央についても同様だ。
この4地点の共通点は「御堂筋沿いの場所」ということ。行政区は北から順に豊中市、吹田市、大阪市淀川区、大阪市北区とバラバラだが、場所をプロットすると見事に南北に一直線に並ぶ。
ちなみにここでの「御堂筋」という表現、市内中心部の幹線道路というよりも大阪メトロ御堂筋線を指す。そして、北は箕面方面まで走る自動車専用道路の新御堂筋線と並行して敷設されていて大阪メトロ御堂筋線から乗り換えなしで「千里中央」駅まで走る北大阪急行沿線をも含んだイメージだ。
** 大阪の路線価上昇は鉄道インフラ充実による将来性の高さ **
この「御堂筋」、車・鉄道共に大阪の大動脈である。梅田、難波、天王寺という繁華街をつなぎ、さらには新幹線停車駅である新大阪へとつながっている。それが、以前にもこちらの記事に書いた(https://www.sumai-surfin.com/columns/kansai-mansion-jijo/tanaka-20180725)ように、今までは「大阪」駅を通らずに「新大阪」駅に入線していた「関空特急はるか」が、2023年には「大阪」駅近接してできる予定の「北梅田」駅を経由する計画が進んでおり「御堂筋線」のポテンシャルはさらに増すことになる。
ほかにも「外環状線」的な役割を担い新大阪と大阪市東部をつなぐJR大阪東線の開通や、2031年開業予定の大阪メトロなにわ筋線等、長期的に大阪中心部の鉄道インフラの充実が約束されている。
今回の路線価上昇ポイントTOP10はインバウンド需要の影響が大きいが、大阪府下の4ポイント(特に新大阪や千里中央!)に関してはインバウンド需要で躍進した北海道や沖縄、京都などのポイントと違い、大阪万博の効果等も含めた「大阪の先行きの明るさ」に裏打ちされた土地価格上昇であり、一過性ではない安定感を感じる。
ちなみに各都道府県県庁所在地の最高路線価は33都道府県で上昇。青森県、山形県、栃木県、岐阜県、茨城県、群馬県、長野県、三重県、和歌山県、徳島県、島根県、山口県、宮崎県の13県が横ばいで鳥取県は下落。4分の1超の地点で「横ばい」、0%がずらっと13県も並ぶのは違和感がある。「我が町切っての一等地の路線価をマイナスにはさせない」といった意向が見えるように思うのは私だけであろうか。
(補足)
*本記事の参考としたニュースサイト掲載の記事(現在は削除済み)では10位が「大阪市北区梅田角田町 変動率27.4%」とあるが https://tochi-value.com/station/osaka/ を調べたところ「角田町」の変動率は約7.8%であり大幅に上昇したのは「大深町」(26.7%)であるように見受けられる。しかし、仮に角田町の記載が間違いで10位が大阪府下の地点ではなかったにしても本文での主張が変わるものではないことを補足しておく。