近畿圏の新築分譲マンション市況が活況だ。数年前までは、怒涛の勢いのホテルや民泊需要の旺盛さとは裏腹に、東京五輪景気に勢い付く首都圏のマンション市況とは違い、「いつ売れなくなるか?」とどこか先行き心配なイメージのあった近畿圏のマンション市況だったが、その状況のまま、ここ1年以上は契約率において常に首都圏を上回っている。
最近不動産経済研究所の発表では近畿圏2府4県における7月度新築マンションの契約率は83.1%。同時期の首都圏の契約率が67.9%なので、近畿圏は15%以上首都圏を上回っている結果だ。
近畿2府4県の中でも大阪市、北摂、阪神間といった相対的に不動産価格の高いエリアの好調さが目立つ。例えば積水ハウスが分譲する「グランドメゾン新梅田タワーTHE CLUB RESIDENCE」。場所はJR「大阪」駅から徒歩14分、今後開発が予定されている「うめきた2期」にも近い。このマンションが総分譲戸数871戸に対して先行販売した半数弱の410戸のうち9割以上が成約済みという。中津エリアを含む他の梅田周辺のタワーマンションも販売好調。
好調の要因はいろいろと考えられる。
一つは先高感。ここ数年、大阪市内や京都市内で外国人観光客の増加に比例して宿泊施設の需要が高まり、ホテルや簡易宿所、民泊等を目的とした土地建物の取得の勢いが凄まじく、マンションデベロッパーは用地の手当てが困難な状況にあった。それどころか、中にはもともと分譲マンション用に取得した土地をホテル用地として転売したり、もしくは自らがホテルを建築したりするなどするデベロッパーもあった。
そんな状況の中、用地価格が上昇、建築資材も価格上昇、工事人件費も上昇、と分譲マンション価格が下がる要因がなく、「需要の増加」よりも「原価の高騰」が原因で上昇を続け、顧客も「今買う方が安い」と新築を購入するという図式が続いた。
大阪のポテンシャルが上がったことも理由の一つ。長らく大阪を訪れたことのない人が久しぶりに梅田や難波を歩き「大阪は元気になった」と感じる、そんな話をよく耳にする。2025年の大阪万博開催への期待もあるが、新なにわ筋線の開業、関空特急「はるか」のJR「大阪」駅乗り入れ等の交通インフラの整備、JR[大阪」駅北側の「うめきた2期」開発の決定など具体的な開発事業への期待の方が大きい。
で、今後はどうなのかということだが、今までの「価格上昇」「売行き好調」が続くかどうかは正直わからない。先にも「「いつ売れなくなるか?」とどこか先行き心配なイメージ」と書いたが、今までの好況は決して力強いものではなかった。現実に、好調を維持しているあるタワーマンションの現場責任者は「何故売れているかわからない」と話している。別の関係者に聞いても同様の意見が多い。
そんな実情なので添付したニュース記事中の「値ごろ感が薄れて需要が後退する可能性もある」(不動産経済研究所)というコメント中の「値ごろ感」は少し引っかかる。多くの人は「値ごろ感」があるから買ったというよりも「先高観」や「条件のいい中古マンションが高い」からという消極的な理由で購入しているのではないか。
今後も分譲マンション用地の不足は続く。原価積み上げで考えた場合、分譲マンション価格の上昇も続く。周辺住民の住宅需要の増加が見込めない中、今後購入を考えるのであれば、周辺よりも割安割高といった目先の相場を見るのではなく、長期的な視点でマンション選びをしたい。仮に高額であっても、近郊エリア、首都圏、もしくは海外からの流入が考えられる都心部や優れた住環境が手に入る好立地のマンションを選ぶ方が良いであろう。