【商業地上位は大阪が独占】
1ヶ月弱前になるが、2020年(1月1日時点)の公示地価が発表された。昨年は「キタに変わって南にトップ」となり、今年も商業地上昇率1位はミナミで変わりはなかったが、他の様子が昨年とは少し違っている。
多くの人が気になり、ニュースにも取り上げられやすいのが商業地の上昇率。住宅地よりも商業地の方が人気の「どの都市が元気か?」が反映されやすい。ではどの都市が一番元気であったかというと、それは大阪。商業地上昇率の10位以内は全て大阪府だ。京都、兵庫は一つも入っていない。
しかし興味深いのは、その中身。なんと半数以上が梅田界隈ではないことだ。10地点中4地点が大阪市外。大阪市内であっても新大阪も含まれているため、半数が「大阪市中心部以外」となっている。そして、その大阪市中心部以外の6地点には共通点がある。
【大阪上昇ポイントは北部に移動】
共通点は、大阪メトロ御堂筋線~北大阪急行電鉄沿いにあるということだ。ただし書くとまどろっこしい。地理感のある人には「新御堂沿い」といった方がわかりやすいであろう。2位は「千里中央」駅、3位は「新大阪」駅、4、7、9位は「江坂」駅周辺。見事に同沿線に集まっている。
理由としては、大阪市内中心部の地価が高騰したため「梅田」「難波」と同沿線である新大阪・江坂・千里中央などに需要が移っていったものだと思われる。また、心斎橋・難波等のミナミ界隈が、昨年の日韓関係悪化とさらに追い打ちをかけるような新型コロナウィルスによる観光客の減少による宿泊業ならびに観光客を見込んだ飲食・物販業等の業績悪化で元気がないことも、新大阪以北の順位を相対的に押し上げた要因といえる。
ところで、初めに書いているがこの上位10地点は「大阪府のランキング」ではない。「関西のランキング」だ。昨年ならば上位10位以内に複数でランクインしていた京都府が一切ない。これは観光業、とりわけ宿泊施設の供給過多による土地価格の頭打ちだ。公示地価は実勢価格よりも遅れて推移するため、オフィスが好調な大阪に比べホテル需要一本で価格を上げてきた京都は来年さらに落ち込む可能性がある。
【商業地は堅調、住宅地は人気エリア以外軟調】
とはいえ商業地は和歌山県を除く京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・滋賀県の近畿2府3県で上昇を示した。概ね堅調だ。それに対して住宅地は上昇したのは京都府・大阪府の2府のみ。しかもその上昇率はいずれも1%未満。府県で平均するとこうなるが、詳細を見ると京都府は京都市・長岡京市、大阪府は大阪市・吹田市、県全体ではマイナスであった兵庫県も芦屋市・西宮市などの都心への利便性が高い住宅地では上昇が続いている。
公示地価は、実勢価格が遅れて反映される。また今回の公示地価は1月1日時点のもの。なので今回の公示地価には新型コロナウイルスによる影響は一切反映されていない。来年の公示地価では、観光業需要で地価高騰したものの激しく需要が減少した商業地、テレワーク推進でオフィスの需要の変化が予想されるオフィス街、さらには住宅地においても世界的に見て(本稿記載時点では)都心部での被害が大きい新型コロナウィルスによって引き起こされる「住宅のあり方」についてのトレンド変化など、様々な変化が織り込まれる。いったいどのようにものになるか。今の所は全く予想もつかない。