【平野が狭く郊外が近い大阪通勤圏】
新型コロナウィルスへの直接的な感染に対する恐怖や不安感が、少しづつではあるが弱まってきたように感じる。緊急事態宣言についても、いつ、どのように解除されるのかが注目されている。今後は、感染することによる身体へのリスクよりも経済がストップしたことによる不況の方が気になる、という人が多いのではなかろうか。
今後気になることといえば、今まで常識とされていたことがどのように変化するのかであろう。これは不動産業界に限らないが、例えば不動産に関してでいえば「三密を避ける」「清潔な空気」といったことを求める人が増えるのは間違いない。とりわけ郊外志向の人は増えるであろう。
関西は、首都圏と比べて平野部が狭い。大阪平野の広さは約1,600km2。関東平野の広さが約17,000km2であるからその規模およそ十分の一。首都圏と比べ関西では、中心市街地に通勤しながら海や山の近くに住むことはたやすい。(面積はどちらも「コトバンク」調べ)
今まで「都心部タワー」の好調から大阪市の注目度がひときわ高かった関西の住宅市場だが、今後は神戸市と京都市、とりわけ両市の郊外部が注目されるのではないか。
【山に囲まれた京都市】
京都市は、海はないが山は近い。近いというよりも地図を見ればわかるが「北半分が山」だ。とはいえ山間部のほとんどは市街化されていないため、一般的に居住地として考えられるのはJR「京都」駅、阪急京都線「河原町」駅等周辺の中心市街地とその周辺部だ。この平野部は東、北、西がそれぞれ山に囲まれており、見通しの良い場所であれば三方いずれか、場所によっては複数の方向に山を望むことができる。
例えば将軍塚という山中の展望台がある。京都市内が一望できる場所なのだが、ここから京都市役所までは直線距離で約2km。健脚であれば1時間程で十分登ることができる。また京都盆地の西の端にある嵐山。阪急「大阪梅田」駅から1時間足らずの阪急嵐山線「嵐山」駅があるのだが、この駅から嵐山の山頂も直線距離で2km弱。こちらは1時間もかからないであろう。さらには船岡山、吉田山といった市街地の低山もある。
また、京都市内東側に位置する山科区は人口13万人超の住宅街でありながら、京都市内中心市街地とは東山三十六峰と呼ばれる山々を隔てた先にあり、こちらも山に囲まれたエリア。京都市内は中心部こそ「密」であるが、少し足を伸ばせば簡単に「山の中」へと移動ができる。逆にいえば、山中に住もうとも簡単に市街地に出ることができる。
【海と山に挟まれている神戸市】
神戸市も京都市に勝るとも劣らないほどに山が近い。また、京都市には無い海があるのも神戸市のいいところ。神戸市は六甲山を背負う港町だ。
神戸市は九つの区からなり、北区と西区以外は全て山と海がある。ちなみに北区と西区はそれぞれ1973年に兵庫区、1982年に垂水区から分割してできた比較的新しい区であり、旧市街地の割合は多くない。東灘区・灘区・中央区は海も山も近く、大阪に移動するにも便利なので「住みやすい街」といったランキングの常連で、分譲マンションも多い人気の住宅地だ。
この東灘区・灘区・中央区の3区も北に山、南に海と、十分に郊外的要素を持ち合わせているが、中央区以西の兵庫区・長田区・須磨区・垂水区の4区の方がより郊外として狙い目だ。先の3区と比べ不動産価格も安い。4区とも「海と山に挟まれた区」だが、ざっくり分けると山好きなら兵庫区・長田区、海好きなら須磨区・垂水区が良い。
兵庫区・長田区は、神戸電鉄というローカルな鉄道があるがその沿線には山間の町がある。大阪~神戸を移動するメインの路線である阪急神戸線やJR東海道線からは乗り換えが必要となるため、住宅地としての人気は高くない。とはいえ三宮まで直線距離は5km程度しかなく、原付や自転車で移動できる範囲。
須磨区・垂水区は、海好きにはたまらない立地だ。移動の足となるJR東海道線は海沿いを走り、車窓からも海が見える。須磨海水浴場、舞子海水浴場と徒歩圏に海水浴場もある。今でも住宅地としての人気は根強いが、大阪までの移動距離が灘区・東灘区と比較して劣るため、住宅地としての価格も密度もそれほど高くはない。
「アフターコロナ」の不動産市場は、色々と変化が起きる。テレワークの普及で居住地の見直しも進む。それについてはあながち悪いことではないといえよう。