「今不動産を買うべきか?」「購入予定のこの物件をどう思うか?」といった相談が増えている。そんな場合は「資産価値を考え一戸建てとマンションを比べるなら、マンションの方が良い」と答えることにしている。前回最大の理由として書いたのは「権利関係が明瞭だから」。今回はもう一つの理由を紹介したい。
それは「建物管理が安心だから」。もちろん管理の行き届いた一戸建てもあれば杜撰な管理のマンションもある。しかし、総じてマンションの方が管理の信頼性が高い。
一般的な分譲マンションは管理会社が管理している。管理会社はマンションの区分所有者で構成される管理組合から委託を受け、管理組合の定めたルール等に基づいてマンションの維持管理を行う。建物の管理や修繕及びその手配、管理費の徴収や会計等の業務は専門知識が必要だ。管理業務は管理会社に任せ、理事会は管理会社の説明や提案を追認する形をとっているマンションが多数だ。
このように書くとネガティブに思えるかもしれないが、そうではない。建物の管理を管理会社が業務として行なっているのは、分譲マンションにとってプラス要素だ。一部の問題を抱えた物件を除けば、分譲マンションは計画的なメンテナンスが行われ、履歴が書類や図面として管理され、将来に向かっての計画が立てられ、そのための資金が積みたてられている。
一方、一戸建てはどうだろうか。こちらもマンション同様で、管理されているかどうかはオーナー次第となるわけだが、将来の修繕まで含め計画的に管理されている一戸建ては少ない。ハウスメーカー施工で施工会社主導の元、しっかりと修理・修繕されている物件がある一方、「放置」もしくは「何かあった時に対処」という物件も多い。
この「物件ごとの管理状態のバラつき」は、売却の時に足枷となる。一戸建て購入の時はいろいろと建物についての調査が必要だ。インスペクションをすれば事足りるのだが、一般の買い手が購入するための経費としてインスペクションをすることは少ない。売主も、お金をかけて不具合が露わになるようなことはしない。ことの良し悪しでは無く実際に市場はそうなっている。しかしマンションについては管理会社がついていれば、そうひどい管理状態になっていないことが多く、気になることがあったとしても管理会社からのレポートを見たり、管理会社へのヒアリングをすればある程度の状況は把握できる。建物のことを考えるとマンションの方が安心度が高いと言える。
また、日本人が中古住宅よりも新築住宅を好むのは不具合が少なく手間がかからないから。同じ目線で言えば屋根、外壁等も含め建物丸ごと自分で管理しなければならない一戸建てよりも、少なくとも共用部については「メンテナンスフリー」であるマンションの方が、手間がかからずに楽だ。共働きや高齢者の場合は特に、手間がかからないことはメリットになると考えられる。
「権利関係が明瞭だから」「建物管理が安心だから」。資産価値として一戸建てよりもマンションがおすすめである理由を二つ挙げた。これらの理由から「マンションの方が無難だから」とマンションを選ぶ人が多く、一戸建てよりも流動性が高い、すなわち売れやすい状況となっている。
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