田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第158号]コロナ禍二年目の所感〜進まなかった関西の「郊外居住」

2021年12月23日

昨年に続いて今年もコロナ禍で終わった一年。昨年の春頃は今後の不動産市場はどうなるかと、大変先行き不安であったが、2年弱たった今、住宅については不安どころか分譲マンションや投資用不動産の価格は上昇、商業テナントやホテルなどのカテゴリーについても新規開発の勢いは弱まっているものの、既存の物件については投げ売りされることもなく堅調に推移している。資金に行き詰っての投げ売りが多くあったリーマンショックの際とは様子が大きく異なっている。

また「密を避ける」「リモートで通勤回数減」といった「新しい生活様式」から都心を避け郊外志向が高まるとの予想も、首都圏については当たったともいえるが関西ではそのような動きはあまり見られなかった。

今年(2021年)8月に発表された「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」に基づき2020年1月から12月、すなわちコロナ禍前後1年間の人口増減をみるとその傾向がよくわかる。

増減率のTOP10の内、2位(大阪市中央区)と6位(大阪市北区)に大阪市がランクインしている。また14位には大阪市天王寺区、19位には大阪市西区がランクインしており、コロナ禍で大阪市内中心部はむしろ人口が増えた。東京都特別区が20位内に千代田区(8位)しか含まれていないのとは対照的だ。

関西の都市同士を比べても興味深い結果となっている。

全国には政令指定都市が20、関西には大阪市、堺市、神戸市、京都市の4市が存在するが、関西4市の中で人口が増加したのは域内がほぼフラットで市街地しか含まない大阪市のみ(全政令指定都市中4位)で、山間部を含む郊外エリアを持つ堺市、神戸市、京都市はいずれも人口減少。京都市に至っては20都市中最下位となっている。

というわけで少なくとも関西においては、コロナ禍によって郊外一戸建ての需要増もあったが、おおむね都心離れ・郊外居住といった流れは起きていない。むしろ商業テナントやホテル・宿泊施設等の物件が先行き不透明感から弱含みとなり、それらのマーケットから居住用不動産に資金が流れて都心部の賃貸アパート・マンションは価格上昇(利回り低下)している。

とはいえ新築分譲マンションや新築一戸建ての金額は、平均的な給与所得者には手の出しにくい価格帯になっている。建築費の高騰を分譲価格に転嫁しにくい状況だ。今後は、中古住宅のリノベーションや低い価格水準のままの郊外住宅に目が向けられ、都心部については価格下落ではなく供給減少による安定期に入る。

……と考えているのだが、さて来年はどうなるやら。来年も、マーケット状況をウォッチしながらこの場所を借りて情報発信していきたいと考えている。これが今年最後の記事更新となります。読者の皆様、良いお年をお過ごしください。

人口増減率ランキング2021―全国TOP50
人口増減率ランキング2021―政令指定都市

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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