田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第159号]2022年問題~エリアによっては不動産市場への影響必至~

2022年01月13日

2022年問題という言葉をお聞きになったことがあるだろうか?「多くの生産緑地が一斉に指定を解除され、大量の宅地が市場に供給される」ことで、数年前から時折マスコミでも話題にされている。

生産緑地の詳細をここで説明するには紙幅が足りないので、ごく簡単にいえば「生産緑地法に基づいて生産緑地の指定を受けると、地主は農業を営むことが義務付けられる一方、固定資産税の減免や相続税の納税猶予などの税制猶予を受けられる」という説明になる。

その生産緑地、大半が30年前に指定を受けたものであり、その営農義務は30年間。この2022年には多くの生産緑地が指定を解除されるという流れだ。

生産緑地に指定されると相続税の納税猶予と固定資産税の優遇が受けられる。裏を返せば指定解除されると税負担が増える。そうなると地主は税負担のために売却するもしくはアパートやマンションを建てることになる。もちろん、全てそうなるわけではないが「風が吹けば桶屋が儲かる」以上にはつながりが深い。

2022年問題で市場に出てくる生産緑地は一つの単位で500平米以上。アパートなら6~10戸程度の広さ。少し広いものであれば分譲マンション用地にもなり得る。極端に住宅供給が増えれば不動産市場にとってはマイナス要因だ。新築アパートが大量供給されればその周辺の賃料相場は下落し、既存の築が古いアパートは退去が増え稼働率が下がる。

賃貸市場ほど直接的な影響はないであろうが、分譲マンション市場に関しても同じことが当てはまる。賃料相場の下落は分譲貸し(マンション)の賃料下落につながり、広めの土地が供給されれば新築分譲マンションの供給にもつながり、条件の悪い中古マンションは売りづらくなる。

このような傾向は「生産緑地が多くあるかどうか?」によって大きく地域差が出る。生産緑地の面積は国や都道府県の統計である程度わかる。例えば関西を例にとってみてみよう。

国土交通省のサイトにある数字では生産緑地の広さは京都市612.2ha、大阪市77.9ha、神戸市107.4haと大きな差があり京都市が突出して多い。京都市は郊外エリアが広いことを考えてもこの差は大きい。また阪神間に目を向けると、伊丹市が100.0haと神戸市と同程度の生産緑地があり神戸市内よりも大きな影響があるように考えられる一方、芦屋市はわずか2.1haしかなく2022年問題とは無縁と言える。

上記の数字は平成27年度のものであるが現在も大きくは変わっていないであろう。

マンションデベロッパーやアパートメーカーにとっては「宝の山」でも、既存住宅を持つ人にとっては価格下落の可能性を孕む厄介な存在の生産緑地。しかしこの2022年問題も、上記のようにエリアによる影響の違いが大きい。皆さんが所有している不動産、もしくはこれから入手しようとしている不動産の周辺でどれほどの生産緑地があるか、都道府県・市区町村のWEBサイトでリサーチしてみてはいかがだろうか。

*参考サイト
都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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