田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第160号]「ヤングケアラー」で考えたこと~高齢化社会のマンションニーズ

2022年01月27日

最近起きた痛ましい事件をきっかけにある単語を知った人も多いだろう。ヤングケアラーだ。

ウィキペディアによると「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」を指す言葉。国が実施した調査では、中高生の約20人に1人がヤングケアラーであるとの結果も出ている。

以前から問題となっている老老介護はもちろん、職を持つ人であっても介護休暇や介護退職などの問題が頻出している。ここ数十年は確実に人口減少と高齢化が進むなか、避けて通れない問題だ。

一方、子供は減っている。バブル期(1986~1991年)の出生数は約122万人~138万人(バブル始期と終期で出生数が10%、約15万人以上も減っていたのも驚きだ!)、リーマンショック時(2008~2009年)が約107万人~109万人。そして2020年が約84万人。それだけ「子育て層が減っている」ことが類推できる。

しかし、介護に対応した分譲マンションはほぼない。シニア向け分譲マンションとて少ない。「住まい方の多様化」が進んでいる昨今においても、新築分譲マンションのメインターゲットは子育て層。そこにシニア層を加えた「二大ターゲット」のままである。

介護については土地や建物のハードで解決できるものではないが、高齢になり以前ほど元気に動けなくなった場合にでも、できるだけ自立した生活を送るための住宅は土地や建物でカバーできる部分が大きい。

建物については住戸内や共用部のバリアフリー対応、住民の必要に応じて利用用途を変更できる集会室などが考えられる。土地=立地についても、生鮮三品(青果・精肉・鮮魚)が徒歩圏で賄える、医療施設が近くにある、バス停・鉄道の駅等の公共交通機関が近い、起伏の少ないフラットな地形、などが条件となる。

上記の内、立地についての条件は高齢者だけでなく子育て層にとっても暮らしやすい立地だ。すなわち取り立てて老人ホーム然としたものや、あざとく「アクティブシニアにおすすめ」と謳ったものではなくても、「利便性の高い立地」の住宅を選んでおけば老後も問題は少ない。言い換えれば、中古市場で高齢者に選んでもらえる物件となる。

このような人口動態のトレンドを考えると、今後も都心マンションのニーズは底堅いと言える。老後の生活に大切な要素は、コロナ禍での生活様式の変化においてもあまり変わらないだろう。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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