「今、旬なマンションランキング」の全体ランキング上位は、大抵東京都心部の物件だ。人口分布を考えると致し方ない。だが、時折関西の物件が上位に顔を見せる。サイトリンク数(期間:30日間、エリア:すべて)のランキングは、戸数で3区分され合計30のマンションが並んでいるが、関西のマンションで名前が上がっているのは「(仮称)福島区駅直上プロジェクト」と「ヴェレーナシティ夙川パークナード(I街区)」の2棟のみ。今回は「ヴェレーナシティ夙川パークナード」の話をしたい。
「ヴェレーナシティ?聞いたことないな。新興デベロッパーか?」と思う人もいるかもしれない。そして売主を見ると「大和地所レジデンス」。「大和ハウスじゃないのか」などと言う声も聞こえてきそうだが、そんな反応はおそらく関西限定。大和地所レジデンスは、かつての東証一部上場企業である日本綜合地所と同じく、東証二部上場だったダイヤ建設をルーツに持つ大和地所傘下の会社。本物件が関西初分譲であり知名度がないのは仕方がないが、会社としての供給実績は12万戸を超える。
その「ヴェレーナシティ夙川パークナード」、計画総戸数353戸のビッグプロジェクトだが、それは全体計画の一部。マンション街区以外に戸建街区、認定こども園、公共施設、提供公園があり総敷地面積は約1万坪。夙川~甲陽園界隈にそんな広い土地があったのか?と疑うレベルの広さだ。
この広大な複合開発敷地、夙川学院の跡地を利用したプロジェクトだ。夙川学院。阪神間在住者なら馴染みの深い名前かと思う。ソフトボールやハンドボールで日本屈指の強豪校として名を馳せ、伊達公子と共に日本女子テニス会を引っ張った沢松奈生子や、東京五輪で兄妹金メダリストとなった阿部詩の出身校でもある名門だ。
しかし夙川学院中学校・高等学校は今は存在しない。学校法人夙川学院から学校法人須磨学園に移管され、校名は夙川中学校・高等学校へと変更、場所も西宮市から神戸市兵庫区へと移転した。しかし神戸市兵庫区の「湊川」にありながらも「夙川」の文字は残り、本件を含む複合開発敷地内には「夙川学院ソレイユ認定こども園」が予定されている。
学校がなくなってもその歴史は連綿と引き継がれている夙川学院。そこで分譲される「ヴェレーナシティ夙川パークナード」の売主は、日本綜合地所とダイヤ建設の歴史を引き継ぐ大和地所レジデンス。おそらくは単なる偶然なのだろうが、宿命めいたものを感じなくもない。