田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第197号]花火が見えるマンションの価値

2023年08月09日

ある花火大会の運営が批判を浴びている。

昨日(8月8日)、4年ぶりに開催された「びわ湖花火大会」。今年は無料観覧席を縮小、有料観覧席を増席。事前に京都や大阪のターミナル駅等で有料観覧席チケットを持たない人に来場自粛を要請。当日は有料観覧席を囲うように高さ約4mのフェンスを設置し「花火を見えないようにする」策(柵?)が施された。

柵の設置や無料エリアの有料化で花火鑑賞ができなくなったご近所の方はお気の毒でしかない。

販売時に「〇〇花火大会が一望」といった謳い文句を掲げる分譲マンションは多い。関西であれば天神祭奉納花火、猪名川花火大会などが有名だ。リビングから眺める花火大会を夢見て購入……。という人もいないとは言わないが、来場のキッカケとはなっても購入の動機とはなりにくいだろう。

花火大会が楽しめるのは、例外もあろうが、年間でわずか一日。そのために何千万の買い物をするのは割に合わない。言わずもがなであるが「花火が見える」マンションは、それ自体は資産価値上のメリットは少ない。

眺望で資産価値が上昇するのは、いうまでもなく、日々の眺望だ。琵琶湖の花火も悪くはないが、花火が見えずとも琵琶湖が、その湖岸がのんびりと眺められる、そんな部屋が良い。山が見える、川が見える、夜景が見える。毎日見える眺望が大切だ。

ただ、自然や建築物が借景となる優れた眺望のマンションはそれほど多くない。そこで大切になるのが「抜け」だ。

例え綺麗な景色が見えなくても、前方建物との距離が離れていて眺望が抜け(=視界が広がっ)ていれば住戸としての基本性能は高いと言える。そのような住戸は、窓が持つ三つの役割である日照・通風・採光が十分に満たされている。

逆に言えば眺望は良いに越したことはないが、何かが見えないから資産価値が下がることはない。しかし、日々の暮らしで大切な日照・通風・採光が十分でない住戸は資産価値が低い。

琵琶湖の花火大会が見える、五山送り火の大文字が見える。そんな住戸は人気が高く、価格も高い。中には花火や送り火のために大枚をはたいた人もいるかもしれないが、その住戸は花火や送り火が見える、すなわち琵琶湖一望・大文字山一望の「抜けのある眺望」であり日照・通風・採光が優れているからこそ人気も価格も高い。

びわ湖花火大会で設置された4mのフェンスで「湖面に映る花火が見えなくなった」と悲しむ住民の声がニュースで流れていた。地元自治会では大会開催を反対する決議文を提出したらしい。路上から花火が見えず、仮に花火が中止になっても「眼下に花火を一望」できる住戸の日照・通風・採光は損なわれない。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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