田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第200号]注目度の低い実力派都市~滋賀県大津市

2023年09月27日

西武大津ショッピングセンター跡に滋賀最大級の分譲マンションが建つ。「シエリアシティ大津におの浜」だ。敷地面積は約13,000平米、総戸数が708戸というビッグプロジェクトになる。

同マンションが建つのはかつて西武大津店があった場所。コロナ禍の2020年に44年間の歴史に幕を閉じたことはニュースにもなったので記憶している人も多いだろう(ん?関西ローカルかな??)。最寄駅はJR東海道本線「膳所」駅、行政区は大津市となる。

県庁所在地である大津市、「住みたい街」の人気においては滋賀県内では草津市の後塵を拝している。「SUUMO住みたい街ランキング2023関西版」においても滋賀県内のTOPは7位の草津駅、その次は27位の南草津駅と草津市が上位2駅を占めている。SUUMOだけではなく東洋経済新報社の「住みよさランキング」で近畿圏5年連続1位になるなど「住みやすい街といえば草津」のイメージがあり、そこに大津の名前が出てくることは比較的少ない。

では大津市が住みやすくないかといえば、全くそのようなことはない。大津市が草津市に大きく優っていることがある。

それは交通利便性だ。

草津市は交通利便性が高い。JR東海道線が通り、国道1号線が通り、名神高速道路と新名神高速道路の分岐がある。東京と大阪を繋ぐ交通の要衝となっている。この「交通要衝ぶり」は中山道と東海道の分かれ道の宿場町草津宿として栄えた江戸時代から変わりない。

その草津市に対して、大津市が交通利便で優っているのは鉄道が2線利用できることだ。

草津市は、多くの人が京都や大阪方面へと通勤するベッドタウン的存在である。その際通勤の足となるのはJR東海道線のみ。「草津」駅・「南草津」駅の両駅に新快速が停車し、市域の複数駅全てに新快速が停車する唯一の行政区ではあるが、JRが事故でストップしたり大幅に遅れた場合には代替え手段がない。

その点、大津市は京都市内に向けて京都市営地下鉄東西線に乗り入れのある京阪京津線がある。同線は「びわ湖浜大津」駅で京阪石山坂本線に乗り換えれば湖西方面と湖東方面に行くことができ、JR線が使えない時の代替えとして利用できる。京阪線自体は、それほど移動が早いわけではないが、京都まで別ルートが確保されているのはポイントが高い。

平常時には問題ないが、何かあった時に代替えが利くのは通勤・通学する者にとって大変ありがたい。茨木市や高槻市等の北摂エリア(阪急京都線とJR東海道線の2線)、西宮市~神戸市の阪神間エリア(阪急神戸線・JR東海道線・阪神本線の3線)が住宅地として人気が高いのは、この「2線利用可」による部分も大きい。

もちろん、大津市の魅力はそれだけではない。比叡山と琵琶湖、他にも市域には森林や山地が多く自然豊かであること。七世紀に飛鳥から遷都され大津京があった大変歴史のある街であること。観光においても市内でクルーズ(ミシガンクルーズ)が楽しめる街なんてそうそうない。

観光や不動産高騰で注目度の高い京都市と、「住みやすい街」として注目度の高い草津市。その両市に挟まれ、少し押され気味の大津市。注目度の低い今が狙い目のように思える。

ちなみに「シエリアシティ大津におの浜」はJR東海道線「膳所」駅と京阪石山坂本線「京阪膳所」駅、ともに徒歩7分〜10分。しっかりと2線2駅となっている。また徒歩分数の幅からその敷地の広さが想像できる。湖岸の公園(大津湖岸なぎさ公園)にも程近い。行政区としての大津市は注目度が低くとも、本マンションは注目度が上がるだろう。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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