田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第205号]京都市内中心部の不動産価格は底堅い

2023年12月15日

京都の街は、観光客が完全復活している。

京都市観光協会発表の2023年10月のレポートによれば、日帰り客を含めた日本人来街者は2019年同月より(2019年の平均値を100とした場合)6.6ポイント上回りコロナ禍超え。

月間延べ宿泊数は、日本人が2019年同月比49.2%増、外国人においては2019年同月比55.1%増とおよそ5割増。2019年と2023年では宿泊施設・客室数が全く違う(2019年は46施設で現在は110施設)ので、延べ宿泊数が増えているのは当然と言えば当然なのだが、それにしても約1.5倍というのはすごい。しかも稼働率は3.2%しか下がっておらず(2019年10月86.1%、2023年10月 82.9%)、かなりの高水準。

観光客数については、さらに今後増えるであろうと考えられるプラス要因がある。それは国・地域別構成比を見ればわかる。

2023年10月、いちばんシェアが高かったのはアメリカで19.0%。2019年10月の14.4%から大きくシェアを伸ばしている。そして2位は中国の13.9%なのだがここが注目。2位とはいえ大幅にシェアを減らしている。201910月にはシェア24.7%で41.4%減だ。もともと京都に来る観光客の多数を占めていた中国だが、航空便や観光ビザの発給がコロナ禍以前に戻っていないために、現在はこのような「低迷」にある。

仮に「中国完全復活」となると京都の街は、さらに多くの観光客で溢れることになる。また、アメリカからの観光客も、この円安ドル高で「日本は楽しくて、安い」と感じ、更に印象は良くなったはず。来年以降には口コミで来日者が増えるであろう。

そうなると次に考えられるのは「行きたい日本」から「住みたい日本」への変化だ。

移住者はそれほど増えないであろうが、セカンドハウスが欲しい、日本に投資をし来日のキッカケとしたい、と考える人は確実に増えるだろう。そもそも京都中心部の不動産価格は、諸外国の大都市にある不動産価格に比べて安い。そこに為替の恩恵が加わり、更に「お求めやすい価格」となっている。

しかし、不動産はただ単に価格が安いから買われるわけではない。物件の価値と比べて価格が安いから買われる。今後海外の資本に注目されるのは、京都都心部近郊の「安い物件」ではなく、都心部の「相対的に安い物件」。数多くの観光客の内、不動産を購入するのはごく一部の人だけだろうが、その人たちが京都の中心部で買えば、自ずと不動産相場は底堅いものとなる。

現在、京都の新築マンション価格は急上昇している。どこかのタイミングで価格調整が入るなどして一直線に上昇し続けはしないかもしれないが、中心部の不動産は中長期的に上昇が続くだろう。

 

*参照:京都市観光協会データ月報(2023年10月)

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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