筆者は京都市内の中心部に拠点を置き不動産業に携わっているのだが、ここ十年来マンション価格は上がり続けている。常に「マンションは高くて買えない」と言われ続けているにも関わらず、どんどんと上がり続けた。
コロナ禍前は空前のインバウンドブームの追い風もあり、京都市内中心部のマンションの価格高騰は相当なものであった。ホテル建設ラッシュで既存のマンション建築用地がホテル建設へと振り向けられ、中には着工後にホテルへと用途変更され新築マンションの供給が減少、比率で見れば東京都中心部をも超える勢いで価格が高騰したと記憶する。
コロナ禍以降、京都市内では細っていたマンション供給も復活し価格は上昇、販売も好調だ。しかし戸数や価格の勢いは東京都の中心区部の方が勝っており、「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」の転売ラッシュは記憶に新しい。
そんな中、今後の不動産価格に影響を与えるのではないかと注目されているのが金利の話。日銀の17年ぶりの利上げ、マイナス金利解除のニュースだ。この金利上昇はマンションバブルにどのような影響を与えるだろうか?
結論的には東京都内中心部や京都市内中心部の国内外を問わず富裕層が触手を伸ばすような不動産は、あまり大きく金利に左右されることはないと推察される。
都心部の高額物件・高級物件を購入する中心的な存在は、ある程度の金融資産を保有する富裕層。その目的は相続対策であることが多い。相続対策で不動産を買うのは、現預金を不動産にすることで相続税評価額を下げるのが目的なので、住宅ローンは利用しない。また、セカンドハウスニーズも多いが、その場合であっても住宅ローンは利用せずキャッシュ、もしくは付き合いのある金融機関から低利の借入で購入するため住宅ローンの金利上昇は気にならない。
インバウンド需要も同じだ。海外在住者の多くは購入資金をキャッシュで賄い、日本の金融機関からの借入はしないから日本の金利は関係ない。
そのような理由で千代田区・中央区・港区のような高額マンションエリアや、そこまで高額ではないが観光需要・セカンドハウス需要のある京都市内中心部のようなエリアは、富裕層や外国人に買われている割合が大きいため、住宅ローンの金利上昇の影響はそれほど大きくないと思われる。反対に、富裕層や海外顧客の需要が薄いエリア・物件は住宅ローンで購入する人が多く金利の影響は受けやすい。
バブル崩壊までの「一億総中流時代」と違い格差社会が進み、都心部の高額マンションは平均的な給与所得者層には購入できない金額帯となっている。これからは、富裕層からの評価やインバウンド需要の高い不動産はその資産価値を維持し、そうではないエリア・物件は住宅ローン金利の動向や大学/工場の進出・撤退等の外部要因で価格が変動することになるであろう。同じ「不動産バブル」でも1980年代後半のバブル期には日本全国どこでも不動産価格が上昇したのとは大きな違いある。