田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第224号]史上初の50/50と今後の住宅トレンド

2024年09月26日

ドジャーズの大谷翔平がメジャー史上初の50/50を達成した。昨年まではあまり耳慣れないこの40/40や50/50という言葉、本塁打と盗塁の数を表すものであり、強打と好走塁という属性的に重なりにくい記録を高次元で達成していることに意味がある大記録だ。(原稿を書いているうちに55/55にも達しそうな勢いで記録を更新。どうにも古めな話題となってしまった感があるがご容赦を!)

ところでちょうど同じような時期、大谷よりも先に京都市が国内史上初の50/50を達成していたことをご存知であろうか。この50/50、猛暑日と熱帯夜の日数のお話し。日中の最高気温が35℃以上となる猛暑日と、夕方から翌日朝までの最低気温が25℃以上となる熱帯夜がそれぞれ50日を超えたという、本塁打/盗塁のような皆に喜ばれるような事ではない。

アラ還の筆者が小学生の頃、真夏の最高気温は高くても32~33℃程度だったように記憶する。夏休みに入る前には「午前中の涼しい時間に勉強を済ませましょう」などと言われていた。今の気候からは信じられないほど「涼しい夏」だった。

しかし最近は昼夜問わず猛暑が続き、エアコンをつけることは命を守るために必須の行動となっている。これまた「エアコンの温度はあげましょう」と言われていた「省エネ時代」が懐かしい。

気象のことは門外漢で科学的な根拠がなくて恐縮だが、これから数年、数十年、猛暑が和らぎ地球が寒冷化するとは考えにくい。今後も暑く過ごしにくい夏が相当期間続くように思えるのだが、そこで考えたいのが住宅の選択だ。

耐震基準は、旧耐震、新耐震、新新耐震と、時代とともにその基準が進化しているが、今は断熱基準が厳しくなってきている。始まりは1980年に制定されたいわゆる「省エネ法」。それが2000年、2022年、2024年と改定され、より一層基準が引き上げられている。

耐震基準に比べ、断熱基準はそれほど一般消費者には注目されていない。断熱基準は「省エネルギー」や「快適に過ごせるかどうか」のためであり、基準に満たないものに住むことが直接的に命が危険にさらされる耐震基準に比べるとインパクトが弱くなるのは仕方がないことかもしれない。

しかし、高齢者がエアコンをつけずに過ごし死亡する事件なども起きるような猛暑が続く今、住まいの断熱は命に関わる問題であるとともに、冷房効率を考えると生活のランニングコストを下げる経済的な問題である。また耐震性能の高い建物が地震等の災害時にしかその良し悪しを体感できない「もしもの時の備え」であるのに対し、断熱性能の高い建物は日々その効果を体感できる。

一般的には築浅物件の方が築古物件に比べ断熱性能は高い。また、分譲マンションと廉価な一戸建てに対しても同じようなことが言える。住宅購入者の建築に対するリテラシーは年々高くなっていることを考えると、これから先は断熱性能を考慮した上で築古よりも築浅、一戸建てよりもマンション、そのような選択をする人が増加するのではなかろうか?

大谷選手には記録をドンドン更新していただき明るい話題を提供してほしいが、真夏日/熱帯夜の記録はもう勘弁してほしい。望ましいのはもちろん耐震性能/断熱性能が高次元で達成された住宅だ。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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