田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第226号]治安の悪化とマンションのセキュリティ

2024年10月23日

ここ2・3か月、東京・埼玉周辺で「闇バイト強盗」が多発している。

ネットでアルバイトを募り、免許証などの個人情報を取得し、それを盾に「実行役」として強盗をはたらかせるというあくどいやり方のこの犯罪、窓ガラスを割って入ったり、設備点検を装って上がり込んだりして侵入し、その後は住民に対し縛り上げる等の暴行をするという荒っぽい所業。到底許されるものではない。関東一円に住む、もしくは実家を持つ方にとっては気が気ではないであろう。

このような凶悪事件に巻き込まれないための防犯対策として、さまざまなものがニュース等で紹介されている。補助錠や防犯フィルムを使う古典的なかつ物理的な対策や、知らない人をみだりに家にあげないといった防衛策があるが、一連の闇バイト強盗に関しては次のような仮説が立てられる。

マンションに住むことが防犯になる、ということだ。

今回の闇バイト強盗で狙われたのは、主に郊外の戸建て住宅だ。戸建てはマンションと違い、玄関前まで簡単にアプローチできる。中には門扉から玄関までの道のりが長い豪邸もあろうが、多くの公道に面している一戸建ては玄関のすぐ前まで公道を歩いて何の問題もなく簡単に近づける。

マンションであればそうはいかない。オートロックがあればそこを突破する必要がある。オートロックが無いマンションでも、開放廊下側に複数の住戸扉がありその前を通って行くのは、公道を歩くよりも不審者と思われる確率が高い。また、公道を歩くのは自由であるのに対し、マンションであれば用もなく棟内を歩いていれば、それは建造物への不法侵入でありそれ自体が罪である。

一昔前であれば、マンションは住民同士のコミュニティが希薄であるのに対し、一戸建ては街全体に地域住民の目があるためそれが防犯となっているといった考えもあったが、今は郊外の一戸建てが並ぶ街には空き家が多く住民の目によるセキュリティが低下し、物理的なセキュリティが整っているマンション住まいの方が防犯面で勝っている。

もちろん、都心の集合住宅に比べて郊外の戸建て住宅は、高齢者夫婦が住んでいる確率が高いから狙われた面もあるだろうが、セキリュティ面で一戸建ての方が侵入しやすかったということも闇バイト強盗に狙われた理由の一つであろう。

そもそも買い物や交通の利便性やメンテナンスの手間を考えて、郊外一戸建ての高齢者が都心のマンションに引っ越す需要はあった。そこに今回のような一戸建てを狙った強盗事件が立て続けに起きると、戸建てからマンションという流れはさらに加速するのではなかろうか?

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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