今年最後の記事は筆者が住む京都市内のこの一年の不動産市況を、不動産事業者の立場から簡単に振り返ってみたい。
●高さ規制緩和の影響は軽微
2023年4月、京都市は高さ制限の緩和を実施した。JR京都駅南側の幹線道路沿いや阪急西院駅周辺は20~25mから31mに、JR山科駅周辺やJR向日町駅周辺では最大31mから高さ規制なし(無制限!)とした。規制緩和により安定した価格でのマンション供給を増やし、子育て世代が戻ってくることが京都市の思惑だった。
規制緩和直後に土地を仕入れマンション建設を始めれば、その効果は2024年度に表れてくるはずだったが、全くその気配はない。
高さ規制緩和後のインタビューで答えたように、むしろ高さ制限が緩和された山科や西院のあたりでは地主の売り渋りや、当該エリアで建替を狙っての「築古容積未消化マンション」の買取などで中古マンションや土地の価格は上昇基調となっている。
高さ規制が緩和され供給が増えても、価格が安くなることは当分なさそうだ。
*参考:京都市“高さ規制”緩和 不動産高騰で人口流出・税収減少のピンチ 緩和で子育て世帯を呼び込めるか?(8カンテレNEWS)
●マンション用地獲得競争の激化
コロナ禍直前、ホテル建設用地の需要が急速に高まった。通常であれば分譲マンション用地となるような土地の多くがホテル用地として取引され、分譲マンションの供給が途絶えた。
ところがコロナ禍でホテル建設用地の需要がストップ。そしてコロナ禍がほぼ終った今は、ホテル建設の需要も一巡し、再びマンションデベロッパーによるマンション用地取得が復活し、今年2024年は京都市内中心部において分譲マンション供給が相次いだ。
セカンドハウス需要の高まり等で供給価格は上昇したが、それでもマンションデベロッパーによるマンション用地獲得競争は激化。特に商住混在している田の字エリア、並びにその周辺においてはテナントビルや投資用アパート向けの用地取得熱も高いため、事業用地となりうる同エリアでの土地取引は活況。建築費高騰のため需要の減った20~30坪程度の一戸建て用地と明暗を分けた。
●収益不動産の利回り低下
首都圏、大阪圏と同様に、京都市内外においても収益不動産の値上がり、すなわち利回りの低下が見られた。
新築では表面利回り4%、築20~30年程度の鉄骨造物件でも駅徒歩圏内では利回り5%台の物件も珍しくなくなり、個人投資家が購入しやすい1億前後の収益不動産は売り物も少なく、売り手市場となった。
投資をするにあたっては、借入を起こしての利回り4%~5%はそれほど妙味はない。しかし建築費の高騰から今後供給される物件はさらに収支が悪くなるという考えのもと、程度の良い中古物件は引き合いも多く、高い物件でもそれなりに成約している。また、マンション用地と同じく京都市内中心部の物件の方が引き合いが多かったが、中心部での投資は「合わない」ので周辺部の引き合いも増え、利回りが低下したが、周辺部の程利回り物件はそれほど動きがあったようには思えない。
この傾向が2025年になっても続くのか、それとも価格調整が入るのかが気になるところだ。
以上、京都市内の不動産市況について簡単に2024年を振り返ってみた。実需マーケットではない市況の話ではあるが、不動産市場は決して実需の分譲マンションだけが単独で動いているわけではなく、それぞれが連動している。皆様のマンション選びの参考になれば幸いだ。