田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第232号]大阪市内の地下鉄移動が便利な区、不便な区

2025年01月22日

 4月から始まる大阪・関西万博会場に直結する大阪メトロ中央線。その新駅である「夢洲(ゆめしま)」駅が1月19日に開業した。

 関西の主要都市である大阪・京都・神戸の各市はそれぞれ市営地下鉄があるが、市内の移動に関しては大阪の地下鉄が一際便利だ。神戸市営地下鉄が5路線(実質3路線)26駅、京都市営地下鉄が2路線31駅であるのに対し、大阪は8路線134駅と路線数で倍以上、駅数では約4倍と圧倒的な差がある。

関西主要都市 路線数 駅数
大阪市(大阪メトロ) 8路線 134駅
京都市(京都市営地下鉄) 2路線 31駅
神戸市(神戸市営地下鉄) 3路線 26駅


 その大阪メトロの134個目の駅である「夢洲」駅。此花区に位置するが、この駅ができるまで此花区は大阪メトロの駅がひとつもない「地下鉄空白区」だった。

 大阪メトロの歴史は古く1930年代、戦前に既に御堂筋線の梅田~天王寺間は開業、その後四つ橋線、中央線と路線や駅が徐々に拡充。今では先述のように100を超える駅があるのだが、中心部から整備が進んだこともあり、駅のない区もあれば多くの駅がある区もありバラツキが多い。

 当然ながら、大阪メトロの駅は市内中心部に多い。北区8駅、西区8駅、そして一番駅の数が多い中央区は14駅。中央区は駅が多いだけでなく路線も豊富。御堂筋線、四つ橋線、堺筋線、谷町線、中央線、千日前線、長堀鶴見緑地線の7路線の駅がある。唯一無いのがニュートラムの駅だが、ニュートラムの駅は住之江区にしかない特殊な路線なので、利用できなくてもさほど不便はない。他の7路線が全て利用できれば「すべての路線の駅がある」と言っても差し支えないだろう。

 ちなみに、ニュートラムは住之江区を東西に貫いており、住之江区内の移動にたいへん貢献している。この路線のおかげで住之江区は大阪市内の他の港湾部に位置する区と比較して交通利便性が高い。しかし、この住之江区もニュートラムで東西移動はしやすいが同じ湾岸エリアの南北移動は不便だ。

 大阪湾に面する区は市内最南端である住之江区以外には、南から順に大正区、港区、此花区、西淀川区の4区がある。いずれも地下鉄網は貧弱で、大正区は1駅(大正)、港区は3駅(大阪港、朝潮橋、弁天町)、此花区と西淀川区は1駅もなく地下鉄空白区だった。工場や倉庫が多く居住エリアの割合が低いとはいえ4区合わせて4駅しかないとは、湾岸エリアは市営交通網の整備においては相当に割りを食っていたと言える。

 そんな中、「夢洲」駅が此花区初の地下鉄の駅として今月開業、念願の地下鉄駅が開業したというわけで、これで市内の空白区は西淀川区のみとなった。ただ、JR東海道線(塚本)や阪神本線(姫島、千船)が通るため大阪~神戸間の移動は利便性が高く、交通利便性に関していえば「駅一つ」の此花区よりも「駅なし」の西淀川区に軍配があがる。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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