野村不動産が開発するJR岐阜駅北側のタワーマンション計画が見直されたことが話題になっている。
当初本計画は、野村不動産を中心とした西棟と積水ハウスを中心とした東棟で34階建てのツインタワー構想だったが、野村不動産が手がける西棟が20数階に下げられるらしい。理由は建築費の大幅な上昇と見られている。
野村不動産がこのような形で開発計画を見直す事例が続いている。昨年10月には東京都中野区の「中野サンプラザ」跡地の再開発事業の高層棟が2棟から1棟に変更、今年1月には千葉県習志野市のJR津田沼駅前の複合施設建替計画が2031年の完成予定からスケジュールが延期されることになった。どちらも原因は建築費が予算を大幅に上回ったことが原因だ。
わずか半年間で、このような大規模駅前再開発事業3つが見直しになるのは、滅多にあることではない。同じ企業が関わるプロジェクトであり企業側に何か理由があると考えられなくもないが、いずれの計画も建築費の高騰やその調整によるスケジュール遅延が原因であることは事実であり、今後も計画当初の予算と工事発注段階での金額が合わずに見直し・延期・中止となるプロジェクトが現れる可能性は高い。
ここ1〜2年程で建築費は数割上昇、土地価格も同様に上昇。新築分譲マンションの価格は上昇の一途だ。同様に新築収益マンションも価格は上昇しているが、家賃はそこまで上昇していないため、想定利回りは下がっている。このまま右上がりに原価が高騰していくとなると、実需物件(住むために購入する物件)は購入資金がネック、投資物件は収益性がネックとなり購入者層は減少するだろう。
そんな情勢の中、予想されるのは物件の都心回帰だ。
マンションデベロッパーは、多少ペースを落とすことはあったとしても、高いから売れないからと供給を止めることはできない。供給できる場所を探しそこで供給することになる。それが都心、具体的に言えば賃料相場が高く「高単価・高グロス」で販売が可能なエリア・スポットだ。そのような場所では賃貸マンションから分譲マンションへの買替えも期待でき、投資マンションも高単価を狙って利回りが確保しやすくなる。一方賃料相場の安い郊外では、土地価格が安くても建築費は都心と変わらないため、極端にいえば土地がタダでも分譲マンション・投資マンションの収支が成り立たなくなる。
あと数十年もすれば「21世紀初頭からRC造のマンションが建築されていない」エリアが珍しくなくなるかもしれない。