田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第236号]「住みたい街」は特急停車駅 ~ アンケートから見る人気の街のトレンド変化

2025年03月26日

 SUUMOが毎年発表する「住みたい街ランキング」が発表された。住みたい人が多いのも妥当だ思われる駅が上位を占める一方、なぜこの駅が入っているのか?(ランクアップしたのか?)と思う駅もある。調べてみると大型新築分譲マンションが発表されて注目度が上がったり等の理由があり、ランキングで勉強させていただくことも多い。

 この「住みたい街ランキング」、上位に名前を連ねる駅は大体似通っており、一年で大きく変わることはない。しかし、古いランキングと比べるとかなり入れ替わりがあることが見て取れる。そしてその差を見ると時代の変化を感じることができる。

今年の関西TOP20の駅と、筆者がネット検索で見つけた一番古い16年前(2009年)の関西TOP20を比べてみたのが下記の表だ。20駅の中で両方にランクインしているのは四条/烏丸(京都市)、江坂(大阪府吹田市)、梅田・心斎橋・なんば(大阪市)、西宮北口・夙川(兵庫県西宮市)、三ノ宮(神戸市)の8駅。いずれも知名度の高い駅だ。(※注)

  2009年 2025年
1位 なんば 梅田
2位 西宮北口 西宮北口
3位 心斎橋 神戸三宮
4位 江坂 なんば
5位 武庫之荘 天王寺
6位 本町 京都
7位 夙川 夙川
8位 新大阪 江坂
9位 大和西大寺 草津
10位 梅田 千里中央
11位 塚口 神戸
12位 六甲道 宝塚
13位 尼崎 心斎橋
14位 南森町 岡本
15位 緑地公園
16位 三ノ宮 京都河原町
17位 烏丸御池 烏丸
18位 東三国 高槻市
19位 上新庄 明石
20位 四条 姫路

 では2009年にはランクインしていなかったが2025年にランクインした駅、また消えた駅はどこだろうか。こちらは下記の表の通りだ。

変わらぬ駅(8駅) 増えた駅(12駅) 消えた駅(12駅)
梅田 阪急線特急停車駅 岡本 阪急線特急非停車駅 武庫之荘
西宮北口 京都河原町 上新庄
神戸三宮 塚口
なんば 高槻市 大阪メトロ御堂筋線~北急 緑地公園
夙川 JR新快速停車駅 草津 東三国
江坂 京都 新大阪
心斎橋 神戸 本町
烏丸 明石 その他 南森町
姫路 烏丸御池
大阪メトロ御堂筋線~北急 天王寺  大和西大寺
千里中央 六甲道
その他 宝塚 尼崎

 表を見るとここ10年そこそこで「優等列車の停まる駅の優位性が増した」との仮説が考えられる。

 消えた駅にJR新快速停車駅(新大阪・尼崎)もあるが、増えた駅の12駅中9駅は阪急線特急駅もしくは新快速停車駅。4駅が阪急線特急停車駅、5駅がJR新快速停車駅だ。また、2009年にはランキングにあった阪急線で特急の停車しない武庫之荘・上新庄・塚口の3駅がランキングから消えている。

 ちなみに2025年のランキングで阪急線特急駅/新快速停車駅以外の駅はなんば・千里中央・宝塚の3駅のみ。しかしこの3駅も決して不便な駅ではなく、いずれも複数路線が利用できるハブとなる駅。15年超の時を経ていかに利便性が「住みたい」理由になったかが見えてくる。

 それ以外では、大阪メトロ御堂筋線から北大阪急行電鉄にかけての駅が複数消えているのも気になる。緑地公園・東三国・新大阪・本町の4駅だ。ただ、同沿線においては千里中央・天王寺が新たに増えているので、沿線人気が衰えているとは考えにくい。緑地公園・東三国が消えていることは、阪急線の特急が停車しない駅がランキングから消えたことと同じような現象に思えるが、新大阪・本町は複数路線が利用できる利便性の高い駅であり消えた理由がよくわからない。駅周辺に注目される新築物件が少なかった等の理由かと考えられる。

 上記は一情報誌の一アンケート、しかも特定の年度を選んでのものであり、このデータだけで「住みたい街」がどのように変化したかを語ることには無理がある。しかし、この10年超で変化があったのはおそらく確かなこと。このような長期のトレンドを押さえておけば「持ち家投資」で大きな失敗をすることはないであろう。

 

(※注)京都市営地下鉄「四条」駅と阪急京都線「烏丸」駅のように近接した駅については同じ駅とみなしている。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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