SUUMOが毎年発表する「住みたい街ランキング」が発表された。住みたい人が多いのも妥当だ思われる駅が上位を占める一方、なぜこの駅が入っているのか?(ランクアップしたのか?)と思う駅もある。調べてみると大型新築分譲マンションが発表されて注目度が上がったり等の理由があり、ランキングで勉強させていただくことも多い。
この「住みたい街ランキング」、上位に名前を連ねる駅は大体似通っており、一年で大きく変わることはない。しかし、古いランキングと比べるとかなり入れ替わりがあることが見て取れる。そしてその差を見ると時代の変化を感じることができる。
今年の関西TOP20の駅と、筆者がネット検索で見つけた一番古い16年前(2009年)の関西TOP20を比べてみたのが下記の表だ。20駅の中で両方にランクインしているのは四条/烏丸(京都市)、江坂(大阪府吹田市)、梅田・心斎橋・なんば(大阪市)、西宮北口・夙川(兵庫県西宮市)、三ノ宮(神戸市)の8駅。いずれも知名度の高い駅だ。(※注)
2009年 | 2025年 | |
---|---|---|
1位 | なんば | 梅田 |
2位 | 西宮北口 | 西宮北口 |
3位 | 心斎橋 | 神戸三宮 |
4位 | 江坂 | なんば |
5位 | 武庫之荘 | 天王寺 |
6位 | 本町 | 京都 |
7位 | 夙川 | 夙川 |
8位 | 新大阪 | 江坂 |
9位 | 大和西大寺 | 草津 |
10位 | 梅田 | 千里中央 |
11位 | 塚口 | 神戸 |
12位 | 六甲道 | 宝塚 |
13位 | 尼崎 | 心斎橋 |
14位 | 南森町 | 岡本 |
15位 | 緑地公園 | 桂 |
16位 | 三ノ宮 | 京都河原町 |
17位 | 烏丸御池 | 烏丸 |
18位 | 東三国 | 高槻市 |
19位 | 上新庄 | 明石 |
20位 | 四条 | 姫路 |
では2009年にはランクインしていなかったが2025年にランクインした駅、また消えた駅はどこだろうか。こちらは下記の表の通りだ。
変わらぬ駅(8駅) | 増えた駅(12駅) | 消えた駅(12駅) | ||
---|---|---|---|---|
梅田 | 阪急線特急停車駅 | 岡本 | 阪急線特急非停車駅 | 武庫之荘 |
西宮北口 | 京都河原町 | 上新庄 | ||
神戸三宮 | 桂 | 塚口 | ||
なんば | 高槻市 | 大阪メトロ御堂筋線~北急 | 緑地公園 | |
夙川 | JR新快速停車駅 | 草津 | 東三国 | |
江坂 | 京都 | 新大阪 | ||
心斎橋 | 神戸 | 本町 | ||
烏丸 | 明石 | その他 | 南森町 | |
ー | 姫路 | 烏丸御池 | ||
ー | 大阪メトロ御堂筋線~北急 | 天王寺 | 大和西大寺 | |
ー | 千里中央 | 六甲道 | ||
ー | その他 | 宝塚 | 尼崎 |
表を見るとここ10年そこそこで「優等列車の停まる駅の優位性が増した」との仮説が考えられる。
消えた駅にJR新快速停車駅(新大阪・尼崎)もあるが、増えた駅の12駅中9駅は阪急線特急駅もしくは新快速停車駅。4駅が阪急線特急停車駅、5駅がJR新快速停車駅だ。また、2009年にはランキングにあった阪急線で特急の停車しない武庫之荘・上新庄・塚口の3駅がランキングから消えている。
ちなみに2025年のランキングで阪急線特急駅/新快速停車駅以外の駅はなんば・千里中央・宝塚の3駅のみ。しかしこの3駅も決して不便な駅ではなく、いずれも複数路線が利用できるハブとなる駅。15年超の時を経ていかに利便性が「住みたい」理由になったかが見えてくる。
それ以外では、大阪メトロ御堂筋線から北大阪急行電鉄にかけての駅が複数消えているのも気になる。緑地公園・東三国・新大阪・本町の4駅だ。ただ、同沿線においては千里中央・天王寺が新たに増えているので、沿線人気が衰えているとは考えにくい。緑地公園・東三国が消えていることは、阪急線の特急が停車しない駅がランキングから消えたことと同じような現象に思えるが、新大阪・本町は複数路線が利用できる利便性の高い駅であり消えた理由がよくわからない。駅周辺に注目される新築物件が少なかった等の理由かと考えられる。
上記は一情報誌の一アンケート、しかも特定の年度を選んでのものであり、このデータだけで「住みたい街」がどのように変化したかを語ることには無理がある。しかし、この10年超で変化があったのはおそらく確かなこと。このような長期のトレンドを押さえておけば「持ち家投資」で大きな失敗をすることはないであろう。
(※注)京都市営地下鉄「四条」駅と阪急京都線「烏丸」駅のように近接した駅については同じ駅とみなしている。