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近年、環境問題や省エネへの意識が高まる中、「低炭素住宅」という言葉を目にすることが多くなってきました。
しかし「低炭素住宅ってどんな住宅?」「優遇措置があるの?」「長期優良住宅やZEHとは何が違うの?」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、低炭素住宅の認定基準、長期優良住宅やZEHとの違い、メリット・デメリット、補助金制度などについて解説します。
目次
1. 低炭素住宅とは?
まずは、低炭素住宅の認定基準や長期優良住宅・ZEHとの違いについて解説します。
低炭素住宅がつくられた背景
(画像出典:エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001514370.pdf)
低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えることを目的とした住宅を指します。
エネルギー効率を向上させる設備を導入した環境にやさしい住宅といえるでしょう。近年、戸建て・マンション問わず低炭素住宅(低炭素建築物)は増えてきています。
その背景には、2012年に制定された「都市の低炭素化の促進に関する法律(以下 エコまち法)」が影響しています。エコまち法は、建築物の低炭素化を普及するために制定された法律です。
エコまち法に基づいて低炭素建築物の認定基準が定められています。この基準を満たしていると低炭素住宅に認定されるということです。
2020年には政府の「カーボンニュートラル宣言※」を受け、低炭素建築物の認定基準をより高い水準にすることが求められました。そのため、2022年にエコまち法は一部改正しています。(※ 2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す宣言)
特に都市は人口が集中しているので、多くの二酸化炭素が排出されます。二酸化炭素の排出量のうち、家庭部門や業務部門の排出量が5割程度を占めているのです。
こうした理由により、環境に配慮した取り組みを推進することが急務となっています。
低炭素住宅の具体的なメリットや優遇については「2.低炭素住宅のメリット」と「4.低炭素住宅における優遇や補助金制度」で解説しています。
低炭素住宅の認定基準
まず、低炭素住宅の認定基準は次のとおり定められています。
エコまち法で定める低炭素建築物
- ① 省エネ基準を超える省エネ性能を持つこと。かつ低炭素化に資する措置を講じていること
- ② 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
- ③ 資金計画が適切なものであること
上記①に該当する基準として、以下の条件(必須項目と選択項目)が定められています。
必須項目
- ● 強化外皮基準の外皮性能があること(ZEH水準の省エネ性能)
- ● 省エネ基準に比べて、一次エネルギー消費量がマイナス20%以上となること(ZEH水準の省エネ性能)
- ● 再生可能エネルギー利用設備(太陽光発電設備など)が導入されていること
- ● 省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー利用設備で得られるエネルギー量の合計が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(戸建てのみ)
選択項目
- ● その他の低炭素化に資する措置が講じられていること
必須項目においては、ZEH水準の省エネ性能を満たすことや再生可能エネルギー利用設備の導入が求められています。
再生可能エネルギー利用設備の例は次のとおりです。
(画像出典:エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001514370.pdf)
選択項目の「その他の低炭素化に資する措置」については、次の9つの中からいずれか1つの措置を講じることが必要です。
低炭素化に関する措置 | 内容 |
---|---|
節水対策 | ① 節水に資する機器を設置(節水便器や水栓、食器洗浄機など) ② 雨水、井戸水または雑排水の利用のための設備を設置 |
エネルギーマネジメント | ③ HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)またはBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を設置 ④ 太陽光等の再生可能エネルギーを利用した発電設備及びそれと連携した定置型の蓄電池を設置 |
ヒートアイランド対策 | ⑤ 一定のヒートアイランド対策を講じている(緑地や壁面緑化の面積の確保、日射反射率が高い舗装や屋根材等の使用など) |
建築物(躯体)の低炭素化 | ⑥ 住宅の劣化の低減に資する措置を講じている ⑦ 木造住宅または木造建築物である ⑧ 高炉セメントまたはフライアッシュセメントを構造耐力上主要な部分に使用 |
V2H充放電設備の設置 | ⑨ 建築物から電気自動車等に電気を供給するための設備又は電気自動車等から建築物に電気を供給するための設備を設置 |
低炭素住宅の認定手続きと注意事項
低炭素住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。
- ① 審査機関に事前の技術的審査を依頼
- ② 審査期間から適合証が発行
- ③ 所管行政庁に認定申請書を提出(適合証を添付)
- ④ 所管行政庁が認定証を交付
なお、手続きは必ず建築物の着工前に行う必要があります。着工後の申請は受理してもらえないため注意が必要です。
また、低炭素住宅は「市街化区域内」に建築されるものでないと認定申請ができません。 市街化区域とは、都市計画法において「すでに市街化を形成している区域、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されています。
長期優良住宅と低炭素住宅の違い
低炭素住宅と似ているキーワードとして「長期優良住宅」が挙げられます。
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で住み続けることができる住宅のことをいいます。低炭素住宅と同様、さまざまな認定基準が設けられています。
長期優良住宅の認定基準にも「省エネ性」の項目がありますが、その他にも「耐震性」「バリアフリー性」「災害配慮」など基準項目が細かく分かれています。
そのため、低炭素住宅よりも長期優良住宅の方が認定基準は厳しいといえるでしょう。また、クリアすべき項目が多いため、その分建築コストがかかります。
しかし、低炭素住宅よりも充実した税制優遇や補助金があります。できるだけ長く住みたいと考えている方には長期優良住宅もおすすめです。
長期優良住宅については、以下の記事で詳しく解説しています。
ZEHと低炭素住宅の違い
「ZEH(ゼッチ)」というキーワードもよく見るようになってきました。
ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味です。
家で使うエネルギーと創出するエネルギー(太陽光発電など)の年間収支が実質ゼロになるような住宅を指します。つまり「使うエネルギー ≦ 創るエネルギー」ということです。
ZEHついては以下の記事で詳しく解説しています。
今注目のZEHマンションとは!?メリットや普及状況など話題のキーワードを解説!
「低炭素住宅の認定基準」で述べたとおり、低炭素住宅では「ZEH水準の省エネ性能」が必要となります。
ZEH水準の省エネ性能とは「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」に適合することをいいます。
そして、低炭素住宅でもZEH住宅と同様、太陽光発電設備などを設置する必要があります。
しかし、低炭素住宅は二酸化炭素の排出量を抑えることに特化した住宅のため、エネルギー収支をゼロにする必要はありません。その点から見ると、ZEH住宅の方がハードルは高いかもしれません。
2. 低炭素住宅のメリット
ここからは、低炭素住宅のメリットについて具体的に解説していきます。
低炭素住宅のメリットは次のとおりです。
低炭素住宅のメリット
メリット① さまざまな優遇や補助金制度がある
低炭素住宅では、住宅ローンの金利優遇・税制優遇・補助金制度など多くのメリットがあります。
「4.低炭素住宅における優遇や補助金制度」で具体的な内容を詳しく解説しています。
メリット② 容積率が緩和される
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合を指します。
つまり、容積率が大きいほど広い建物を立てることが可能です。
低炭素住宅では、低炭素化に関連する設備の床面積は計算に入れなくて良いという緩和措置があります。(延床面積の20分の1が限度)
敷地面積が同じである場合、一般住宅よりも広い家を建てられるというメリットがあります。
メリット③ 高断熱の住宅で快適に生活できる
低炭素住宅はZEH水準の省エネ性能を持つ住宅です。断熱性能が高く、外気の影響を受けにくい住宅となっています。
そのため、夏は涼しく、冬は暖かいといった快適な暮らしを実現することができます!
メリット④ 光熱費を削減できる
省エネ性や断熱性能が高い住宅で生活すると、エアコンなど冷暖房設備の使用頻度が少なくなるでしょう。
また、低炭素住宅の認定基準の選択項目で「節水対策」を選択すれば、水道料の節約にもつながります。
よって、一般住宅に住むよりも光熱費を削減することができます。
3. 低炭素住宅のデメリットと注意点
これまで低炭素住宅のメリットについて見ていきましたが、デメリットや注意点についても解説いたします。
低炭素住宅のデメリット・注意点は次のとおりです。
低炭素住宅のデメリット・注意点
デメリット① 着工前に申請しなければならない
低炭素住宅に認定されるには、所管の行政庁に申請を行う必要があります。
この申請手続きは、必ず着工前に行わなければなりません。着工後の申請は受理してもらえないため注意しましょう。
デメリット② 「市街化区域」でないと申請できない
低炭素住宅は「市街化区域」でないと申請することができません。
市街化区域とは「すでに市街化を形成している区域、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされています。簡単に言うと、住宅街・商業施設・公共施設などが整っている地域のことです。
市街化区域とよく比較される「市街化調整区域」では、農地や緑地が守られており市街化が抑制されています。
そのため、家を建てる場所が市街化区域かどうか、事前にネットなどで調べるようにしましょう。
確認方法がわからない場合は、各市区町村の都市計画を担当する課に問い合わせすると教えてもらえます。
デメリット③ 初期コストがかかる
低炭素住宅では、省エネ性能の高い設備や太陽光発電などの再生可能エネルギー利用設備を使用します。
そのため、従来の一般住宅に比べて建築コストが高くなります。
しかし、2025年4月からは、原則としてすべての新築住宅で「省エネ基準への適合」が義務付けられます。必然的に建築費、販売価格は高くなることが予想されます。
「省エネ基準への適合」とは、「断熱等性能等級4」かつ「一次エネルギー消費量等級4」に適合した住宅のことです。詳しくはこちらの記事で解説しています。
2025年4月から省エネ基準適合が義務化!マンションや戸建てへの影響とは!?
今後は、「販売価格を抑えるために省エネに関係ない部分でグレードの低い設備を採用する」「一部の設備の採用を省く」などのコストカットが行われる可能性も考えられるので注意が必要です。
4. 低炭素住宅における優遇や補助金制度
低炭素住宅に認定されると、さまざまな優遇や補助金制度を利用することができます。
住宅ローンの金利優遇
低炭素住宅では、フラット35や一部の銀行において住宅ローン金利が優遇されます。
フラット35
住宅金融支援機構のフラット35では、省エネルギー性や耐震性など備えた質の高い住宅を取得する場合、借入金利を一定期間引き下げる制度を設けています。(フラット35S)
低炭素住宅は、フラット35Sの金利Aプランに該当するので、当初5年間の金利が0.5%優遇されます。(2025年2月現在)
りそな銀行
りそな銀行では、環境等配慮型住宅向けの特別金利プラン「SX金利プラン」を提供しています。
低炭素住宅でも「SX金利プラン」を利用することができ、通常の優遇金利から0.01%優遇されます。(2025年2月現在)
りそな銀行の住宅ローンについてはこちらで詳しく解説しています。
各種税制優遇
低炭素住宅に認定されると、所得税(住宅ローン減税・投資型減税)や登録免許税において優遇を受けられます。
住宅ローン減税
住宅ローン減税(住宅ローン控除)は、年末の住宅ローン残高に応じて所得税を控除できる制度です。
低炭素住宅では、一般住宅よりも借入限度額の上限が高く設定されています。
借入限度額と最大控除額は以下のとおりです。(令和6年1月1日~令和7年12月31日に入居した方が対象)
住宅の種類 | 借入限度額 | 最大控除額 | 控除額 | 控除期間 |
---|---|---|---|---|
新築住宅・買取再販 | 4,500万円※ | 409.5万円 | 0.70% | 13年 |
既存住宅 | 3,000万円 | 210万円 | 10年 |
※子育て世帯・若者世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)世帯は、借入限度額5,000万円(最大控除額455万円)
住宅ローン控除について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
投資型減税(新築のみ)
住宅ローンを利用せず、全額自己資金で住宅を購入した場合は投資型減税を受けることができます。
低炭素住宅における投資型減税の控除額は最大65万円です。(令和6年1月1日~令和7年12月31日に入居した方が対象)
投資型減税の控除額 計算式
- ●控除額=性能強化費用※ × 10%(上限65万円)
- ※性能強化費用は、住宅の床面積 × 45,300円/㎡(上限650万円)
- (例)床面積100㎡の場合、控除額は45万円
登録免許税(新築のみ)
住宅購入時は、所有権の保存登記や移転登記を行う必要があります。登記手続きにかかる税金を登録免許税といいます。
低炭素住宅では、一般住宅特例よりも税額が引き下げられるため、登記手続きの費用を安く済ませることができます。(令和9年3月31日までに取得した方が対象)
保存登記 | 移転登記 | |
---|---|---|
原則税率 | 0.4% | 2.0% |
一般住宅 | 0.15% | 0.3% |
低炭素住宅 | 0.1% | 0.1% |
登録免許税について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
補助金制度が利用できる
低炭素住宅では、補助金制度を利用することができます。
子育てグリーン住宅支援事業
2024年に実施された「子育てエコホーム支援事業」に代わり、2025年から新たに「子育てグリーン住宅支援事業」が開始されました。
子育て世帯と若者夫婦世帯を主な対象として、省エネ性能が高い新築住宅の取得や省エネ改修(リフォーム)を支援する事業です。
子育てグリーン住宅支援事業の対象住宅と補助額は以下のとおりです。
対象世帯 | 対象住宅 | 補助額 | |
---|---|---|---|
すべての世帯 | GX志向型住宅 | 160万円/戸 | |
子育て世帯等※1 | 長期優良住宅 | 建て替え(古家の除却が伴う場合) | 100万円/戸 |
上記以外 | 80万円/戸 | ||
ZEH水準住宅※2 | 建て替え(古家の除却が伴う場合) | 60万円/戸 | |
上記以外 | 40万円/戸 |
※1 18歳未満の子を有する子育て世帯または夫婦いずれかが39歳以下の若者夫婦世帯
※2 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を満たすもの
低炭素住宅は「ZEH水準住宅」に該当するため、40~60万円の補助金を利用することができます。
子育てグリーン住宅支援事業については以下の記事で詳しく解説しています。
【2025年補助金】子育てグリーン住宅支援事業とは?補助金額や条件を解説!
5.まとめ
今回の記事では、低炭素住宅ついて解説しました。
近年、政府は省エネ性能が高い住宅を推進しており、補助金や減税などが手厚くなっています。どんな家を買うか悩んでいる人は、低炭素住宅のような省エネ性能の高い住宅にも注目してみてください。
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