最終更新日:
断熱等級5は、2022年4月に創設された比較的新しい等級です。
ZEH住宅や長期優良住宅といった省エネ住宅の断熱性能は、等級5以上であることが求められています。
今回の記事では、断熱性能が高い家のメリットや、断熱等級5の基準や住み心地について解説します。
目次
1. 断熱等級(断熱等性能等級)とは
そもそも、断熱等級とはどういうものなのでしょうか。
断熱等級は、住宅の断熱性能を評価するための基準になります。正式名称は「断熱等性能等級」で、「住宅性能表示制度」に規定される評価基準です。
現在、断熱等級は1から7までの7段階に分かれていて、数字が大きいほど断熱性能は高いことを意味します。
「住宅性能表示制度」についても簡単にご説明します。
住宅性能表示制度とは、国が定めた基準に基づいて住宅の性能を専門家が評価し、その結果を表示する制度です。各項目の性能が等級や数値で表示されるので、住宅性能がわかりやすく見える化されます。
この制度は、消費者が良質な住宅を安心して取得できるようにするための法律である「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいています。
断熱等級5が新しく創設された理由
断熱等級は、3年前には等級4が最高等級でした。しかし2024年8月現在は、等級7が最高等級です。
短期間で最高断熱等級が一気に上がっていますが、その理由を見ていきましょう。
2020年に日本政府は「2050年までにカーボンニュートラル※を目指す」ことを宣言。脱炭素化社会を実現するために、政府はさまざまな取り組みを展開することとなりました。
そのうちの一つが、住宅の省エネルギー性能の向上です。
※カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること
ZEH水準以上の多段階の等級を設置することになり、2022年4月に断熱等級5が創設されました。
断熱等級5は、断熱等級4よりもUA値(外皮平均熱貫流率)・ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)の基準が厳しくなっています。
断熱等級5が創設されたことで、「長期優良住宅」と「低炭素住宅」に求められる断熱性能も「等級4以上」から「等級5以上」に引き上げられました。
最近よく聞くようになった「ZEH住宅」も、断熱等級5以上であることが求められています。ZEH住宅とは省エネ性能が高く、太陽光発電などでエネルギーを自給自足できる、エネルギー消費が実質ゼロの住宅のことです。
ZEH住宅とは何か
画像出典:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/
さらに断熱等級6~7が2022年10月に創設されたので、現在の最高断熱等級は7です。
断熱等級4と上記等級のエネルギー消費量を比べると、断熱等級6は30%減、断熱等級7は40%減になると言われています。
断熱等級5が、将来の最低基準になる
2025年4月からすべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。
省エネ基準適合と認められるためには、以下2つが両方とも基準を満たさなければなりません。
省エネ基準適合住宅の基準
- ● 一次エネルギー消費量→等級4以上
- ● 外皮性能(断熱性能)→等級4以上
一次エネルギー消費量とは住宅で使用するエネルギーの総量のことです。具体的には冷暖房・換気・照明・給湯で使われるエネルギーを指しています。
エネルギー消費量を多く削減できるほど(つまり設備などが省エネであるほど)、一次エネルギー消費量の等級は高くなります。
外皮性能とは断熱性能のことで、断熱等級4以上の必要があります。
義務化の予定はこれだけではありません。2030年には、すべての新築住宅にZEH水準が義務化される予定です。
ZEH水準とは、以下の基準を満たすものを言います。
ZEH住宅の基準
- ① 強化外皮基準0.4~0.6以下=断熱等級5以上
- ② 一次エネルギー消費量削減率が規定以上(規定値は種類ごとに異なる)
- ③ 再生可能エネルギーを導入(一部の種類は除く)
ZEH住宅にはさまざまな種類があるので、②と③については住宅種類によって基準が異なります。
ただし、①強化外皮基準(つまり断熱性能)については、すべてのZEH住宅で断熱等級5以上でなければなりません。
つまり、2030年にはすべての新築住宅が断熱等級5以上になる予定ということです。
画像出典:国土交通省「家選びの基準変わります」https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/
ZEH住宅(ZEHマンション)について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
今注目のZEHマンションとは!?メリットや普及状況など話題のキーワードを解説!
ZEHマンションの基礎知識や普及状況、メリットについて解説します。
2. 断熱性能が高いと、どんなメリットがあるのか?
つづいて、「断熱性能が高い家」とは具体的にどういうことなのか、そしてどんなメリットがあるのかご説明します。
断熱性能が高いことの意味
断熱等級は1~7までありますが、何を基準にして等級は決まるのでしょうか。
それは、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)です。
画像出典:国土交通省資料「省エネ基準の概要」https://www.mlit.go.jp/common/001500252.pdf
UA値は熱の出入りのしやすさを表すもので、数値が低いほど熱が出入りしにくくなります。
ηAC値は冷房期の太陽日射の室内への入りやすさのことで、数値が低いほど日射は入りにくいです。太陽日射が入りにくいと、冷房の効きが良くなります。
それぞれの等級で求められるUA値とηAC値は、地域によって異なります。なぜかというと、日本は地域によって気温に差があるからです。
ηAC値は温暖な地域では基準が設定されていますが、北海道や東北など一部の地域では設定されていません。逆にそういった寒冷地は、UA値の基準が厳しめになっています。
UA値については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
UA値で断熱性能を知ろう!基準値や高断熱住宅のメリットについて解説。
UA値の内容や基準値、高断熱住宅のメリットについて解説します。
断熱性能が高い家のメリット
断熱性能が高い家とは、外部の気温変化の影響を受けにくく、建物内部の温度を安定して保つ能力が高いということです。
断熱性能が高い家=冬に暖かいというイメージが強いと思いますが、快適なのは冬だけではありません。夏は外の暑さを遮断し、室内の涼しさを保ちます。これにより、エアコンの使用頻度が減少し、エネルギーコストの削減や節約にもつながります。
住宅内の温度差も少なくなるため、健康面でもメリットがあります。冬場はヒートショック、夏場は熱中症になるリスクが低くなるからです。花粉症・喘息・アトピーなどの症状が軽減されるという研究結果も出ています。
また、断熱性能が高い家は、「光熱費の節約」以外にも金銭面のメリットを享受できます。
例えば住宅ローン控除は、住宅の省エネ性能が高いほど最大の控除金額も大きいです。ZEH住宅・長期優良住宅・低炭素住宅は、断熱等級5以上の必要があります。
新築住宅の借入限度額(上限額)
住宅の種類(性能) | 2022年・2023年入居の 場合の限度額 |
2024年・2025年入居の 場合の限度額 |
減税期間 |
---|---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円※1 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円※1 | 13年間 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円※1 | 13年間 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 (2023年中の建築確認で 2,000万円) |
13年間 または 10年間※2 |
※1 子育て世帯と若者夫婦世帯は、2024年入居の限度額は2022~2023年入居と同様になる
※2 その他の住宅は、2024年と2025年の入居だと10年間になる
他にも、「住宅取得資金援助制度」の非課税金額が大きくなる・「子育てエコホーム支援事業」という補助金がもらえるなど、断熱性能5以上(ZEH住宅以上)から対象になる減税・補助金制度も多いです。
メリットをまとめると、このようになります。
高断熱住宅の主なメリット
- ● 冬は暖かく、夏は涼しくて家の中が年中快適
- ● 光熱費が削減される
- ● ヒートショックや熱中症のリスクが低くなる
- ● 補助金や税金の控除を受けられることがある
3.断熱等級5の基準値
つづいて、断熱等級5の具体的な基準値をご説明します。
先ほどご説明したUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)は、地域ごとに求められる値が異なります。
断熱等級5の場合は、数値はこのようになっています。
断熱等級5に求められるUA値とηAC値
地域区分 | UA値 | ηAC値 |
---|---|---|
1 (夕張等) |
0.4 | ー |
2 (札幌等) |
0.4 | ー |
3 (盛岡等) |
0.5 | ー |
4 (会津若松等) |
0.6 | ー |
5 (水戸等) |
0.6 | 3 |
6 (東京等) |
0.6 | 2.8 |
7 (熊本等) |
0.6 | 2.7 |
8 (沖縄等) |
ー | 6.7 |
上記表で「ー」となっている場合には、基準は設けられていません。
沖縄等の地域区分8はUA値は求められていませんが、温暖ということもありηAC値の基準は厳しくなっています。
地域区分は、同じ県内であってもお住まいの市町村によって異なることがあります。
検索エンジンで「省エネ地域区分」と入力して探すか、国土交通省の資料などからご確認ください。
参考:国土交通省 法令・制度、省エネ基準等https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/08.html
4.断熱等級5の住宅の住み心地は?
最後に、断熱等級5の住宅の住み心地について見ていきましょう。
国土交通省の資料によると、断熱等級5の住宅は「室内の上下温度差の低減」に明確な効果が表れています。
画像出典:国土交通省「省エネ技術解説テキスト」https://www.mlit.go.jp/common/001627105.pdf
今回引用した資料画像では、※1は昭和55年省エネルギー基準相当以下(断熱等級2以下)、※3は令和4年省エネルギー基準相当(断熱等級5)を示しています。
画像を見ると、断熱等級5の住宅は室内の上下温度に差がほとんどないことが分かります。
温度差と聞くと、「外気温と住宅内温度の差」「部屋ごとの温度差」に注目する人が多いでしょう。これらは断熱等級4の住宅でも改善されています。
断熱等級5はそこからさらに先へ進んでいて、室内の温度ムラも改善しています。
暖かい空気は上へ昇り、冷たい空気は下へ降ります。
室内の上下に温度差があると、夏場にクーラーをつけると足元が冷えすぎてしまい、冬場に暖房器具を付けてもなかなか暖まりません。クーラー・暖房の効きも悪くなります。
温度ムラが改善されると、快適性の向上、光熱費の削減に繋がるでしょう。
また、宮崎県の実施したアンケートでは、ZEH住宅を購入した人からこんな回答もありました。
Q. ZEHにしてみて実際にどうでしたか。
A. 積極的に節電や節水もするようになり、光熱費が以前よりかからなくなりました。
太陽光発電システムは、改正の時はほぼ公称値の発電量が得られます。
また、ZEHのため多めに断熱材が入っているので年間通して室内の温度変化が少なく快適です。
参考:宮崎県 スマートエネルギー住宅って実際どうなの?https://www.pref.miyagi.jp/site/miyagi-smartenergyhouse/sumaene-kutikomi.html
さらに、健康に関するこのような研究結果も出ています。
床付近の室温が15℃未満の住宅に住む人は、
床付近の室温が15℃以上の住宅に住む人に比べると
高血圧で通院している人:1.51倍
糖尿病:1.64倍
つまり、床付近の室温が15℃以上の家に住んでいる人の方が、高血圧・糖尿病になりにくいということです。
参考:国土交通省 健康省エネチラシhttps://www.mlit.go.jp/common/001500201.pdf
健康で快適な暮らしをしたいという方に、断熱等級5の住宅はおすすめです。
ただ、最近は断熱等級6~7の家を建てられるハウスメーカーも出てきています。
断熱性能の高い家のメリットを最大限享受したいという方は、断熱等級6~7も検討してみましょう。
5.まとめ
今回の記事では、断熱等級5の住宅について解説しました。
断熱等級5の住宅なら、ZEH水準以上の住宅性能であることがほとんどだと考えられます。
日本は住宅の省エネ化を推進しているので、補助金や税金控除の条件を「ZEH水準以上」としていることが多いです。
断熱等級6~7の住宅は建設費(価格)が高くて予算オーバーだけど、断熱等級5なら何とかなるかも・・という方も多いのではないでしょうか。
断熱等級5の住宅に住んで、経済的で快適な暮らしを実現させましょう。
ところで、2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。一定以上の省エネ性能は保障される一方で、価格が心配という方も多いのではないでしょうか。住宅価格の高騰は今後も続く見通しです。
また、住宅価格の高騰以外にも、将来の金利上昇、建築費高騰、人口減少といった不安要素は多くあります。住宅購入で後悔しないためには、やはり情報収集が重要です。
とはいえ、どうすれば良いか分からないという方も多いでしょう。
そんな方におすすめしたいのが、当サイト住まいサーフィン代表の沖有人が過去に出演した動画メディアです。住まい選びの参考になるので、是非ご覧ください。
▼PIVOT 5年後、都心のマンションはどれだけ値上がりするのか?
▼NewsPicks プロだけが知る「令和の不動産売買」【沖有人vs中山登志朗】
このような動画などで情報収集をしつつ、最終的には資産価値の高い住宅購入を行い、リスクヘッジする事が重要ではないかと考えます。
例えば、新築マンション購入検討中の皆さんは、こんな経験はないですか?
- ● 「将来値下がりしないか心配。10年後に価格がいくらになるのか簡単に分かったら良いな」
- ● 「万が一売ることになっても、売却額より住宅ローン残債の方が多かったらどうしよう。売却時点の予想利益が分かったら良いな」
住まいサーフィンの各物件詳細ページでは、将来の資産性が一目で判断できる「沖式マンション10年後予測」を無料公開しています。
「値上がりシミュレーション」機能を使えば、5年後・10年後の将来価格をベストケース・標準ケース・ワーストケースの3つのシナリオで具体的にシミュレーションできます。
物件価格や金利を入力すればその場で自由にシミュレーションできるので、購入するべきか悩んでいる方にぴったりです。
さらに、「含み益シミュレーション」機能では、値上がりしたマンションを売却した場合に、実際に得られる利益を試算した結果を確認できます。
また、中古マンション購入検討中の皆さんは、こんな経験はないですか?
- ● 「スーモ等で見つけた物件が6,000万円で売出されている。この駅でこの価格少し高い気がするけど、本当に適正な価格なのだろうか?」
- ● 「適正な価格(沖式査定額:5,400万円)が分かれば、指値(値下げ交渉)を入れて、自分の予算内である5,500万円で強気に交渉出来るのになあ。。」
- ● 「どのサイトも適正な価格が分からないし、表示されていても、マンション単位で大雑把、お部屋毎に間取り、向き、階数を考慮されていない気がする」
住まいサーフィンの各物件詳細ページでは、お部屋毎に価格査定を行っています。
これにより、購入検討しているお部屋の「適正価格」を正確に把握することができます。
物件詳細ページの便利な活用方法は、下記の動画でさらに詳しくご説明しております。
「沖式マンション10年後予測」や「割安判定」は、会員であれば、無料で利用できます。
でもなぜ、住まいサーフィンに出来て、他のサイトには出来ないの?と疑問を持つかもしれません。
そこには、住まいサーフィンにしかない3つの理由があります。
住まいサーフィン独自の特徴
- 1.広告サイトではないため、売主への忖度が不要
- 2.サイト開設25年と老舗であるが故に、過去から蓄積されたビッグデータを保持・分析している
- 3.不動産業者、金融機関、REITといったプロにコンサル及び情報提供している精緻なデータを活用している
しかしなぜ、こんなに有用なデータを無料で公開するの?と怪しく感じる方もいるのではないでしょうか。確かに怪しいですよね。
その理由として、住まいサーフィンを開設した代表の沖有人が掲げる理念があります。
それは不動産売買における情報の非対称性を無くすことです。
昔から、不動産業者は売り手に不利益となる情報を隠すため、騙されて損をする消費者が後を絶ちません。
そんな消費者を減らすために、住まいサーフィンで購入に役立つ情報を無料公開し、理論武装してほしいとの思いがあります。
住まいサーフィンは、購入検討する全ての消費者に情報を活用してもらうため、有料ではなく無料で情報提供を行っています。
ただし、運営にはお金がかかります。
そのため、不動産業者や金融機関等の企業にコンサル提供を行い利益を得ることで、住まいサーフィンの無償利用を実現しています。
無料会員登録するだけで、全ての情報が確認できリスクなく始められます。
退会も簡単に出来ますので、まずは気軽に登録して、マンション購入を成功させましょう!
簡単無料登録はこちらから!
マンション購入に役立つコラム記事
- SUUMOとの違い
- 資産性とは?
- 購入メリット
- 購入の流れ
- 最適な購入時期
- 必要な初期費用
- 女性のマンション購入
- 独身のマンション購入
- 中古マンション失敗談
- 築20年マンション
- マンションと戸建て比較