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国が実施する住宅リフォームの支援制度にはさまざまな種類があります。その中の一つが「住宅・建築物安全ストック形成事業」です。
リフォームには費用がかかるため、活用できる支援制度はしっかりと押さえておきたいところです。では、住宅・建築物安全ストック形成事業は具体的にどんな支援をしてくれるのでしょうか。
目次
1. 住宅・建築物安全ストック形成事業とは何か
まずは、住宅・建築物安全ストック形成事業とはどんな事業なのかご説明します。
住宅・建築物安全ストック形成事業は、既存の住宅・建築物の安全性確保を総合的かつ効率的に促進することを目的とした事業です。
例えば旧耐震基準のように耐震が不十分な建物があると、大きな地震の際に倒壊するおそれがあります。そのような建物は、耐震改修などの何らかの対策をすることが望ましいですよね。
また、避難経路が限られている建物があると、火災が発生したときに外へ避難できなくなるかもしれません。直通階段の増設など2方向の避難経路を確保したいところです。
建物の安全性を確保することで、いざというときに命を守ってくれます。しかし、安全性の確保には高額な費用がかかることも多いです。
そこで国は、建物の安全性確保を推進するために「住宅・建築物安全ストック形成事業」を実施することにしました。
なお、この事業は国が個人や民間事業者に対して補助金を支給する制度ではなく、地方自治体(地方公共団体)を通じて補助をする制度です。地方自治体で行われている補助制度のおおもとが「住宅・建築物安全ストック形成事業」になります。
具体的に地方自治体で行われている補助制度については、記事の後半でご紹介します。
2. 住宅・建築物安全ストック形成事業の内容
住宅・建築物安全ストック形成事業は、おおまかに言うと「建物の安全性確保」を促進するための事業です。この事業が元になって、さまざまな支援制度が展開されています。
住宅・建築物安全ストック形成事業の例
- ● 住宅・建築物耐震改修事業
- ● 住宅・建築物アスベスト改修事業
- ● 建築物火災安全改修事業
- ● がけ地近接等危険住宅移転事業
- ● 災害危険区域内建築物防災改修等事業
- ● エレベーターの防災対策改修事業
例えば「建築物火災安全改修事業」は、大阪市北区ビル火災等を踏まえて創設された事業です。住宅・建築物安全ストック形成事業は、災害や日本社会で問題になった事件・事故を元に整備されています。
2024年1月には、能登半島で大地震が起きました。その被害状況や耐震改修工事費の高騰を踏まえて、令和7年度(2025年度)は住宅・建築物の耐震改修に係る補助限度額が引き上げられます。
それでは、各事業の具体的な内容を見てきましょう。今回は、特に住宅と関連している「住宅・建築物耐震改修事業」と「がけ地近接等危険住宅移転事業」について詳しく解説します。
※なお、以下は令和6年度(2024年度)の事業内容になります。
住宅・建築物耐震改修事業
住宅・建築物耐震改修事業とは、住宅等の耐震化の支援や、耐震改修・建替え等の支援をするための事業です。
住宅と建築物で支援内容や条件が一部異なっているので、今回は住宅の支援内容をご紹介します。
住宅・建築物耐震改修事業による住宅の支援は、個別支援とパッケージ支援(総合支援メニュー)に分かれています。
画像出典:住宅・建築物安全ストック形成事業の概要(国土交通省近畿地方整備局) https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/jutaku/taishintaisaku.html
個別支援は「補強設計等」と「耐震改修等、建替え又は除却」について、それぞれ費用の一定割合を国と地方自治体が負担します。
具体的には、補強設計等は3分の2、「耐震改修等、建替え又は除却」はマンションなら3分の1でマンション以外の住宅なら23%です。
限度額については上記画像をご覧ください。
※上記画像は令和6年度(2024年度)の情報です。令和7年度は補助限度額が引き上げとなる見込みです。
一方でパッケージ支援は定額(100万円・120万円・150万円)を交付します。
耐震改修の種別や区域によって交付額が異なり、補強設計等費と耐震改修工事費を合算した金額の8割が限度になります。パッケージ支援はマンション以外の住宅が対象です。
また、耐震改修と一緒に省エネ改修をした場合には、別途補助を受けられます。
画像出典:国土交通省「建築物耐震対策緊急促進事業交付申請マニュアル」令和6年12月版https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001737807.pdf
省エネ基準よりもZEH水準の方が補助限度額は大きくなっています。
以上が、国土交通省による住宅・建築物耐震改修事業(住宅向け)の基本支援です。地方自治体独自の支援がある場合には、さらに手厚い補助を受けることができます。
なお、住宅・建築物耐震改修事業にはブロック塀等の安全確保に対する支援も含まれます。
がけ地近接等危険住宅移転事業
がけ地近接等危険住宅移転事業は、危険な場所にある既存不適格住宅等※に対する支援事業です。
がけ崩れ・土石流・雪崩・地すべり・津波・高潮・出水といった危険から住民の生命の安全を確保するために、住宅の移転支援をします。
※既存不適格住宅とは、新築された当時は法律に適合していたものの、法改正によって現在の法律の基準には適合していない住宅のことです。
がけ地近接等危険住宅移転事業は、以下の費用が補助されます。
がけ地近接等危険住宅移転事業で補助される費用
- ● 除却等費
- ● 建設助成費
- ● 事業推進経費
除却等費とは、危険住宅の除却費や引越費用等のことで、それぞれ限度額が定められています。
令和6年度の除却費の限度額は木造住宅は3.2万円/㎡で、非木造住宅は4.6万円/㎡です。一見、家が広ければ広いほど補助金をもらえるように思われますが、実際は自治体によって上限額が設定されています。
また、引越費用等の限度額は1戸あたり97.5万円となっています。
建設助成費とは、新しい住宅の建設・購入・改修のために金融機関等から融資を受けた場合の利息に相当する額です。
借入利率の限度は年8.5%が限度で、通常の住宅の限度額は1戸につき421万円となっています。
事業推進経費は事業計画の策定や対象地域の調査等に要する費用のことで、こちらは限度額は決められていません。
がけ地近接等危険住宅移転事業も地方自治体が主体となって行う事業なので、条件や補助内容は地方自治体によって違います。
自治体によっては公営住宅に転居する場合でも事業の対象になることがあるようなので、まずは一度、市役所や役場で相談してみましょう。
3. 各自治体の支援制度(補助金額)
最後に、住宅・建築物安全ストック形成事業による各自治体の支援制度をご紹介します。今回ご紹介するのは、「住宅・建築物耐震改修事業」に関する支援制度です。
東京都板橋区
東京都板橋区では、平成12年5月31日までに建設された建築物を対象※に耐震化費用の一部助成をしています。
※一部は昭和56年5月31日以前に建設された建築物のみが対象
木造住宅の耐震化助成メニュー(令和7年度版)はこのようになっています。
助成内容 | 限度額 | 助成率 | 適用対象 |
---|---|---|---|
耐震診断 | 10万円 | 費用全額 | 除却工事のための診断 |
25万円 | 費用全額 | 補強設計等のための診断 | |
除却工事 (解体工事) |
50万円 | 3分の1 | 昭和56年5月31日以前に建設された建築物 |
補強設計等 | 8.5万円 | 費用全額 | |
耐震補強工事 | 220万円 | 10分の9 | 昭和56年5月31日以前に建設された建築物 |
160万円 | 3分の2 | 昭和56年6月~平成12年5月31日までに 建設された建築物 |
|
建替え工事 (新築工事) |
100万円 | 費用全額 | 高齢者等かつ特定地域内 |
耐震シェルター等 | 15万円 | 2分の1 | |
30万円 | 10分の9 | 避難困難者 |
※高齢者等とは、65歳以上の方、障がいのある方、歩行困難な難病の方、小学校就学の始期に達するまでの方です。
避難困難者とは、要介護認定3~5など自力で避難することが困難な方です。
特定区域内については板橋区WEBサイト(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/bousai/tochi/josei/1006168.html)をご覧ください。
板橋区は、令和7年度から一部メニューの限度額や助成率が大幅にアップしました。
一部の助成メニューは、区指定業者による実施が必要です。
板橋区に限らず、区内や市内の業者を条件としていることは多いです。自治体によっては、区内(市内)の業者なら補助金額が増えるというところもあります。
千葉県浦安市
千葉県浦安市では、昭和56年5月31日以前に着工した木造住宅や分譲マンション等の耐震費用を一部助成しています。
木造住宅の助成内容をご紹介します。(以下は令和6年度の情報となります)
助成内容 | 限度額 | 助成率 | 適用対象者 |
---|---|---|---|
耐震診断 | 12万円 | 10分の9 | |
補強設計 | 4万円 | 2分の1 | |
工事監理 | 6万円 | 2分の1 | |
工事費 | 110万円 | 2分の1 | |
130万円 | 2分の1 | 高齢者等 |
※高齢者等とは、市民税非課税世帯・高齢者または高齢者と同一の世帯・重度身体障がい者または重度身体障がい者と同一の世帯のことです。
なお、浦安市は分譲マンション向けの耐震化支援制度がありますが、補助額は公開されておらず直接窓口に問い合わせる必要があります。また、自治体によっては木造住宅向けの支援制度しかない場合もあるのでご注意ください。
4.まとめ
本記事では、住宅・建築物安全ストック形成事業の内容について解説しました。
耐震改修は、多くの自治体では昭和56年以前に建てられた建物が対象になっています。昭和56年以前に建てられた建物は、基本的には旧耐震基準となります。大地震はいつ起きるか分からないからこそ、耐震改修は重要です。
旧耐震基準については、こちらの記事をご覧ください。
旧耐震基準と新耐震基準の違いと、新耐震基準であれば安心なのかどうかについて解説します。
支援内容や条件は、自治体によってさまざまです。応募期間が限られていることもあるので、自宅の改修を検討されている方は早めに確認しましょう。
ところで、2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。一定以上の省エネ性能は保障される一方で、価格が心配という方も多いのではないでしょうか。住宅価格の高騰は今後も続く見通しです。
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