リフォームやリノベーション工事を行う上で注意しなければならないことはいろいろあります。
マンションのなかの住戸であっても、建築基準法の様々な制約を受けます。
建物の規模、住戸の階や位置などによって多少違いがありますが、リフォームやリノベーションであっても、法的規制は守らなくてはなりません。
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リノベーション前に必ずチェックすること
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マンションのさまざまな制約を確認しましょう。
共用部分の範囲と制約を知っておこう
マンションの住戸のなかで、自由に手を加えられる部分と共用部分として勝手に手を加えられない部分があります。リフォーム業者の中には、それらを無視して言われるままに工事をしてしまう会社が少なからずあります。住戸内の共用部分
玄関ドア
玄関ドアは防火戸です。常時締まっていることが大切で、ストッパーで開けたままにしたり、内 側に通気ドアをつけたりは本来できません。店舗などの中にも防火戸があり、常時開いていますが、その場合は、煙や熱を感じ取ったら、自動的に締まる構造になっています。
サッシ
外廊下に面しているサッシには鉄線や網が入っています。これも防火戸の一つです。勝手に線なしのものに取り換えたりできません。また道路や隣地に面している部分のサッシのガラスも線入りのものがあったりします。同じ住戸でも、また同じ室内でも線入りのガラスとそうでないものがある場合もあります。これは、防火地域や準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼の恐れのある部分には防火戸等にしなければならない規定があるためです。延焼の恐れのある部分とは、隣地境界線や道路中心線から1階は3m以下の部分、2階以上の階は5m以下の部分です。同じ室内でも延焼の恐れのある部分に入る場合とそうでない部分があるためです。その理由が分からず、勝手にすべて透明ガラスにリフォームしてしまった例があります。
また、これら防火設備の機能を持つサッシと障子やインナーサッシ等の防火性能のないものとは、一定の距離を離す必要があります。外壁
コンクリート壁は大切な構造体で共用部分です。特に外壁は結露対策が施されています。古いマンションは結露対策が不十分な場合もあります。勝手に加工できないのは当然です。
戸境壁
隣室との境界のコンクリート壁ももちろん加工できません。構造上重要な構造体であり、防音や結露などの対策が施されています。一般的にコンセント等もつけられませんし、釘やアンカーも原則打てません。
PS
パンフレットの間取り図などに住戸内にもPSと書かれている部分があります。パイプシャフトと言って、共用部分の配管スペースです。上の階から連続していますので、勝手に移動はできません。間取り変更もPSの位置を配慮して考えなくてはなりません。
遮音性能
マンションでは管理組合で床の遮音性能を取り決めている場合があります。
最近のマンションの床はほとんどフローリングだと思いますが、以前はカーペット等が多く使われていました。カーペット張りからフローリングに改修する場合は、音は響きやすくなりますので、定められた遮音性能に従って材料を選ばなくてはなりません。住宅性能表示制度による指定性能や日本工業規格のL-45などの等級などが指定されています。対応する床材の商品はありますので、それを選択してください。
また、楽器等を使用する場合は、トラブルにならないように所定の振動防止や遮音対策を講じる必要があります。配管ルート
通常配管はメインのパイプシャフトから住戸内に取り入れられます。排水管も同様に所定のパイプシャフトへ導かれています。床下に十分な配管スペースがあればよいのですが、昔のマンションは一部分だけ床を上げて床のコンクリートとの間に配管スペースをとったり、コンクリートのなかを通したりしています。場合によっては一部床のコンクリートの下の階下の天井裏ということもまれにあります。特に排水には一定の勾配が必要です。ルートを変更する場合は、床下のスペースに注意が必要です。場合によっては床を上げなくてはならず、天井高が低くなります。床を新しくする場合は、通っている配管もチェックして劣化していれば新しく取り替えましょう。内装制限
マンションは通常、一定面積以下の住戸ごとに耐火構造の壁や防火戸で区切られていますので、内装制限はあまり考えなくてもよいですが、室内が火災になった時などに有毒ガスが発生したり、健康に悪影響を及ぼしたりする材料は避けたいものです。最近は少なくなりましたが一時期シックハウス症候群が話題になりました。家具は建材と比較して、まだその対策が遅れています。家具選びも重要です。おわりに
このようにマンションには様々な制約があります。
特に古い一般クラスのマンションの場合は、注意が必要です。購入前にプロに図面をチェックしてもらって、リノベーションできる範囲等をチェックしてもらうとよいでしょう。
中古マンションを購入してしまったけれど、思うようなリノーションができないケースも考えられます。
また本来住戸内の居室には所定の面積の採光や換気等が必要です。部屋を大きくして採光面積が不足したり、窓のない部屋などを設けたりすることは、本来であれば問題となります。 -
Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)
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写真提供:佐藤章子一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。 -
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