一般にリフォームと比較して、リノベーションは出費が多くなります。場合によって、構造体以外はすべて新しくすることもあるでしょう。内装だけとは言え、その部分は新築となる上、既存の撤去費も加わりますので相当な金額になります。
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誰でもできる具体的なコストダウンの方法!
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これから新築する心構えで臨んで、無駄を省きましょう。
優先順位をつけよう!
最初に何をしたいかをしっかりまとめます。それに対する工事項目を箇条書きにします。
次にそれぞれの項目にランク付けをします。いろいろ検討する中で次第に最適のランクが決まっていくものですので、最初は直感で大丈夫です。この作業に慣れておくと、見積もりオーバーしたときに無駄を省きやすくなります。ランクの下の項目から、省かれるとは限りません。Cランクの項目を2つ取りやめるよりはBランクを1つなくす方がよいという判断もありえます。ただし、自分たちのこれからの人生設計がしっかりできていて、かつランク付けにも慣れていないと、そうした判断には行きつきません。既成概念にとらわれず、機能と必要性を考えよう!
例えばカーテンについて
みんながイメージするのはレースのカーテンとドレープの組み合わせでしょう。カーテンのよいものはかなり高額です。カーテンの機能は、目隠し、遮光、保温・断熱などでしょう。
しかし、部屋の向きや用途、階数などによっては、それらの機能のいつくかは必要ないケースがあります。
例えばリビングは必ずしも遮光は必要ないでしょう。南側の部屋であれば、都内のマンションでは暖房はほとんど必要としませんので、保温もあまり考えなくてよいでしょう。子供室の遮光はどうでしょうか。レースなしのケースメント1枚でよいと思います。「窓にはレースとドレープのカーテン」という既成概念にとらわれず、必要な機能を追求していくとかなりコストダウンになります。
我が家のリビングは和紙のスクリーン1枚のみで私の手作りです。明るく、目隠しにもなり、窓を開けてもレースのカーテンのようにめくれずに、しっかりと目隠しの機能を維持しつつ、風も通します。レースと違って夜も透けて見えません。キッチンセットの扉
リノベーションを考える方の中にはキッチンに対するこだわりを持っている方も少なくないと思います。豪華な既製品のキッチンもいろいろありますが、自分たちのオリジナリティのものを考える場合は、毎日使う部分の収納の扉などは本当に必要かどうか、よく考えてみてください。
今は引き出し式が多いですが、開き扉の場合は、ないほうが使い勝手が良いものもあります。扉がないだけで相当コストダウンできますし、使い勝手もよくなります。セットものの家具
住まいを新築するときに、設計で苦労するのが婚礼家具セットの置き場です。寝室等に置くと使い勝手が良いですが、ベッドなどの配置を考えると相当広いスペースが必要となります。また耐震面の配慮も必要です。金具で固定すればよいのですが、高価なセットに穴をあけることになり、また見栄えも悪くなり、安らぎの場である寝室の雰囲気を壊します。
ソファーと肘掛椅子などのセットも問題が多いです。
住まいをリノベーションしたら、それにふさわしい家具も欲しくなります。しかし本当にセットが必要とは限りません。ソファーだけで十分だったり、ソファーとオットマンの組み合わせがベストだったりします。
またセット通りに配置するのではなく、別のコーナーに肘掛椅子と小さなテーブルを配置するなど、セットで使うことから離れて、手持ちのものの再利用も含めて、自由に考えてみてください。3社から見積を入手しよう!
見積は複数から入手することは重要なポイントです。ほとんどの方がそうされていると思いますが、単に競争させて金額を抑えるのではなく、各社の見積を比較することによって、工事の漏れがないかなどをチェックできます。各社の見積を比較検討して是正していく間に各社の実力も見えてきます。
そのために、見積もり依頼をする会社の内1社は、名のある会社を選ぶことをお勧めします。おそらく金額は最も高くなると思いますが、詳細な部品の個数や品番等も記載されていると思います。それと比較すると大まかな工事の金額しか記載されていない見積は、本当に希望の設計がすべて網羅されているか疑問です。見積がいい加減の会社は工事も同様だと考えた方が良いと思います。これから何十年も住むかもしれない住まいですので、価格だけが判断材料ではありません。
各社の見積を比較調整していく間に、会社の実力も見えてきます。内装制限
マンションは通常、一定面積以下の住戸ごとに耐火構造の壁や防火戸で区切られていますので、内装制限はあまり考えなくてもよいですが、室内が火災になった時などに有毒ガスが発生したり、健康に悪影響を及ぼしたりする材料は避けたいものです。最近は少なくなりましたが一時期シックハウス症候群が話題になりました。家具は建材と比較して、まだその対策が遅れています。家具選びも重要です。隠れる部分はしっかり修繕しよう!
例えば、床材を好みのものに変えたいとします。下地はそのまま使えば、金額はやすくなりますが、下地材が劣化していれば、表面の床材を新しくしても意味がありません。近い将来下地材の改修が必要となったら仕上げの床材も再工事となってしまいます。また、床下に配管が通っている場合は配管の劣化状況のチェックも大切です。 隠れてしまう部分の劣化具合のチェックは、最終的に無駄を少なくして価格を抑えるポイント です。おわりに
リノベーションは、これから住まいで実現したい生活スタイルのためのものですので、家族の人生設計がはっきりしていなければ意味がありません。
価格を安くするためにも人生設計が最も大切な部分です。優先順位などをいろいろ考えていくうちに、無駄も見えてきて、よりすっきりしたプランになるはずです。 -
Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)
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写真提供:佐藤章子一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。 -
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