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マイホームを検討している人の中には、ZEH住宅という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。最近は戸建てだけでなく、ZEHのマンションも増えてきています。
ZEHマンションが注目されている理由は、「環境に配慮しているから」だけではありません。ZEHマンションに住むことで多くのメリットが得られるからです。
今回の記事では、ZEHマンションの基礎知識や普及状況、メリットについて解説します。
目次
1. ZEHマンションとは何か?
ZEHマンションとはどんなマンションなのでしょうか。
まずは、「ZEH」という用語についてご説明します。ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語になります。
「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味です。
普段生活をしていると、電気やガスなどさまざまなエネルギーを消費します。しかしエネルギーには限りがあるので、いかに省エネしていくのかが長年世界の課題になっていました。
そこで2008年頃に「新しい省エネの形」としてアメリカで注目されたのが、ZEH住宅です。
それが日本でも取り入れられ、2018年には「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指す」という目標が立てられました。
ZEH住宅は、家で使うエネルギーと太陽光発電等で創るエネルギーの年間収支が実質ゼロになるような住宅です。
収支をゼロにするためには、使うエネルギーを相当減らさないと難しいように思えます。ですが、ZEH住宅はこの2つによって快適な環境を保ちながら省エネを実現しています。
- ● 住宅の断熱性能が高い
- ● 設備のエネルギー効率が高い
上記の魅力については、記事後半の「3.ZEHマンションのメリット」で詳しくご説明します。
ZEH住宅は戸建てだけではありません。ZEH住宅のうちマンションタイプのことを、ZEHマンションと言います。
ZEHマンションの種類と基準
ZEHマンションは「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」「Nearly ZEH-M(準ゼッチ・マンション)」「ZEH-M Ready(ゼッチ・マンション・レディ)」「ZEH-M Oriented(ゼッチ指向型マンション)」の4種類に分かれます。
ZEHマンションは、下記を満たす必要があります。
ZEHマンションの基準
- ① 強化外皮基準
- ② 一次エネルギー消費量削減率が規定以上(規定値は種類ごとに異なる)
- ③ 再生可能エネルギーを導入(ZEH-M Orientedは除く)
外皮基準とは、家の断熱性能の基準のことです。種類に関係なく、すべてのZEHマンションは、家の断熱性能が特に高い「強化外皮基準」を満たす必要があります。断熱等級だと、断熱等級5がZEH基準相当になります。
順番が前後しますが、先に③の再生可能エネルギーの導入についてご説明します。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱など自然界に存在するエネルギーのことです。石油・石炭・天然ガスなどの化石エネルギーと違って温室効果ガスは出ない上、繰り返し利用することができます。
ZEH-M Orientedを除いた3種類のZEHマンションでは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入しなければなりません。
②の一次エネルギー消費量削減率とは、どれだけエネルギーの消費量を減らせたのか(省エネできたのか)を表しています。
すべてのZEHマンションでは、(太陽光発電等の再生可能エネルギーを除いて)基準エネルギーよりも20%以上削減する必要があります。
さらに、ZEH-M Oriented以外のZEHマンションは、再生可能エネルギーを含めた削減率も決まっています。
ZEHマンションは、マンションの階数によって目指すべき水準(種類)が違います。例えば6階建て以上のマンションは、「ZEH-M Oriented」が水準です。
ZEHマンションの基準と階数別の目指すべき水準は、このようになっています。
画像引用:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業(https://zehweb.jp/)
2. ZEHマンションはどれくらい普及しているのか?
ZEHマンションの概要や基準、種類について見てきました。それでは、ZEHマンションは年間どれくらい建設されているのでしょうか。
「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2024」によると、2023年度の集合住宅供給戸数におけるZEHマンションの割合は約47%※でした。2023年度に供給された住戸のうち約半数がZEHマンションということです。ZEHマンションは、急激に増えています。
※441,855戸のうち207,760戸
年度別のZEHマンションの割合(供給戸数ベース)
年度 | ZEHマンションの割合 |
---|---|
2020年度 | 1.2% |
2021年度 | 2.1% |
2022年度 | 15.6% |
2023年度 | 47.0% |
参考:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会の資料(https://zehweb.jp/)
先ほど4種類のZEHマンションについてご説明しましたが、割合としてはこのようになっています。
画像引用:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2024(https://zehweb.jp/assets/doc/ZEH_conference_2024.pdf)
全体の約73%がZEH-M Orientedとなっています。階層を問わず、ZEH-M Orientedが大半を占めている状況です。
ZEHマンションは、着実にその数は増えています。マンションのデベロッパーの中には、2025年以降の新築マンションはすべてZEHマンションにすると表明しているところもあります。
近い将来には、新築マンションはZEH水準であることが当たり前になると考えられます。
3. ZEHマンションのメリット
次に、ZEHマンションのメリットを見ていきましょう。
冬は暖かく、夏は涼しくて家の中が快適
ZEHマンションは断熱性能が高いので、外気温からの影響を受けにくいです。冬は暖かく、夏は涼しく過ごすことができます。
住居内の寒暖差も少ないので、ヒートショック※も起きにくいです。
※ヒートショックとは、温度の急激な変化によって血圧が大きく変動して、心筋梗塞や脳梗塞などが起きること
最近は猛暑日が9月下旬まで続くなど、昔では考えられないような異常気象になることも増えています。だからこそ、家の中が一年中快適で、それによって健康な生活が送れるのは嬉しいですね。
光熱費が減って節約になる
ZEHマンションは快適なだけでなく、導入されている設備も省エネ性能が高いです。
省エネ性能が高い設備の例
- ● 給湯(エコキュート、エコジョーズ、ハイブリッド給湯器、エネファームなど)
- ● LED照明
- ● 温水式床暖房
- ● 高効率のエアコン(ヒートポンプ式、床暖房と連動するものもある)
- ● 換気扇(第1種換気・DCモーター)
- ● 節水型水栓・節湯シャワー
- ● 保温浴槽
- ● 節水式トイレ
光熱費は普通のマンションよりも大幅に削減されるでしょう。
太陽光発電などで創エネしているマンションであればさらに光熱費を抑えられ、余剰分を売電して収入を得られることもあります。
住宅ローンの適用金利が低くなることがある
ZEHマンションだと、普通のマンションを購入したときよりも住宅ローン金利が低くなることがあります。ただし、一部の金融機関のみです。
例えば三井住友銀行には、ZEH住宅を対象とした特別な金利プランがあります。
2025年2月現在の変動金利(三井住友銀行住宅ローン)
通常の金利 | ZEHプランの金利 |
---|---|
0.625% | 0.575% |
また、全期間固定金利のフラット35は、ZEH住宅なら5年間金利が引き下げられます。
フラット35の金利引き下げ(ZEH)
金利引き下げ幅 | |
---|---|
当初5年間 | 年-0.75% |
2025年2月現在、フラット35の最多借入金利(借入期間21年以上35年以下・団信あり・融資率9割以下)は1.89%です。ZEHの場合だと、当初5年間は1.14%になります。かなりお得なことが分かりますね。
他の金融機関でも同様に金利引き下げとなる場合があるので、ZEHマンションを購入予定の方は調べてみてください。
住宅ローン控除制度が優遇される
ZEHマンションは、住宅ローン控除という税金(所得税・住民税)の減税制度において優遇されます。
住宅ローン控除とは、住宅取得者がローン金利を支払う代わりに、国が所得税や住民税の一部を控除してくれる制度のことです。
新築住宅は、条件を満たせば、以下の金額が13年間控除されます。
(2024年・2025年入居)新築住宅の限度額
住宅の種類(性能) | 子育て世帯・ 若者夫婦世帯 |
子育て世帯・ 若者夫婦世帯以外 |
控除期間 |
---|---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 0円 (2023年中の建築確認等で2,000万円) |
- (10年間) |
2025年にZEHマンションへ入居すれば、最大年間24.5万円(子育て世帯や若者夫婦世帯であれば31.5万円)控除されます。
また、ZEHマンションの中には、長期優良住宅や低炭素住宅としても認定されていることがあります。その場合、2025年に入居すると最大年間31.5万円(子育て世帯等であれば35万円)の控除となります。
中古マンションの場合、省エネ基準適合住宅以上の省エネ性能であれば年間最大21万円の控除です。
住宅ローン控除の詳細は下記の記事で解説しています。
最新の住宅ローン減税制度について解説します。
ZEHマンションだと補助金の対象になることもある
日本は2021年に閣議決定されたエネルギー基本計画で「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」という目標を立て、その達成に向けて毎年さまざまな政策を行っています。そのうちの一つが、ZEH住宅などの省エネ性能が高い住宅を対象とした補助金です。
2025年には、「子育てグリーン住宅支援事業」という、省エネ住宅(新築)の取得や省エネなリフォームを支援するための補助金事業があります。
この支援事業における省エネ住宅とは、「GX志向型住宅」「長期優良住宅」「ZEH住宅」です。
対象(マンション購入の場合) | 1.新築のGX志向型住宅の購入 2.新築の長期優良住宅・ZEH住宅の購入(子育て世帯等※1のみ) 3.住宅取得者等が工事施工業者に対象工事を発注するリフォーム |
---|---|
補助額 | 新築住宅購入:GX志向型住宅160万円、長期優良住宅80万円、ZEH住宅40万円 リフォーム:工事内容に応じて上限40~60万円 |
契約期間 | 契約期間は問いません |
対象着工期間 | 2024年11月22日以降、対象工事※2に着手したもの |
交付申請期間 | 2025年3月下旬(予定)~遅くとも2025年12月31日まで |
※1 子育て世帯・若者夫婦世帯
※2 基礎工事より後の工程の工事
子育て世帯や若者夫婦世帯がZEHマンションを購入すれば、40万円がもらえることがあります。また、自治体によっては独自の補助金制度を設けています。
子育てグリーン住宅支援事業について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「子育てグリーン住宅支援事業」の具体的な内容や、補助金を受け取るための条件について詳しく解説します。
4. ZEHマンションのデメリット
ZEHマンションには多くのメリットがあるということが分かりました。それでは、ZEHマンションのデメリットは何なのでしょうか。
ZEHマンションは建設コストがかかるので、価格が高くなることも
ZEHマンションは、通常のマンションよりも建築コストがかかります。ZEHマンションのデベロッパー(建築主)に対する補助金事業も実施されていますが、それでも建築するのにかなり費用がかかるのは事実です。
専有部分に設置される高効率な設備も、普通の設備よりずっと高額です。
そのため、物件価格が高くなることがあります。
また、太陽光発電などの創エネ設備がある場合には、定期的なメンテナンスや修繕等も必要です。トラブルを防ぐためにも、将来に向けて修繕費用をしっかり積み立てなければなりません。
ZEH-Mのマンションは数が少ない
「2.ZEHマンションはどれくらい普及しているのか?」でご紹介したように、ZEHマンションはZEH-M Orientedが大半を占めています。ZEH-M Orientedも省エネ性能は高いですが、太陽光発電などによる創エネは必須とされていません。省エネ性能が著しく高い家に住みたいという方は、「ZEH-M」や「Nearly ZEH-M」の方が良いでしょう。しかし、選択肢はかなり限られてしまいます。
もし新築だけで検討しているようでしたら、選択肢を広げるために中古マンションや戸建ても含めて探すことをおすすめします。損をしない中古マンション探しのポイントについては、最後のまとめでご紹介します。
5.まとめ
今回の記事では、ZEHマンションの基準や普及状況、メリット・デメリットについて解説しました。
2024年から省エネ性能ラベルの運用が開始されています。物件によってはこのようなラベルが表示されていて、ZEHマンションかどうか、断熱性能がどうなっているのかなどが一目で分かります。
画像引用:省エネ性能表示制度サイト(https://www.mlit.go.jp/shoene-label/)
省エネ性能ラベルについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ZEHマンションはメリットが多いですが、デメリットは少ないです。快適に過ごせるだけでなく、光熱費の削減や節税など金銭的にもたくさんのメリットがあります。
しかし、日常生活における金銭的メリットがあるものの、ZEHマンションというだけで安易に飛びついてはいけません。
他の要素も考慮しないと将来マンション自体の価格が大幅に値下がりしてしまう可能性もあります。
何らかの事情でマンションを売却したいときに、売却価格が住宅ローン残債額を下回る「残債割れ」状態になってしまうかもしれません。この場合、足りないお金は自己資金から補填することになってしまいます。
そのため、資産価値もマンション選びにおける重要なポイントです。資産価値が高いマンションであれば、値下がりしづらいのでいざというときのリスクヘッジになります。
2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。一定以上の省エネ性能は保障される一方で、価格が心配という方も多いのではないでしょうか。住宅価格の高騰は今後も続く見通しです。
また、住宅価格の高騰以外にも、将来の金利上昇、建築費高騰、人口減少といった不安要素は多くあります。住宅購入で後悔しないためには、やはり情報収集が重要です。
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