ほぼ死語だった「住宅すごろく」という言葉が流行り始めた。
そして、最近の不動産を語る潮流は、アベノミクスの資産インフレ期待もあり、資産性が重視されている。
その意味でも、拙著のタイトル「マンションは10年で買い替えなさい 人口減少時代の住宅すごろく」および論調は価値があったと言えるだろう。
本の法則を知らずして、マンションを買うのは愚行で、家族への背信行為になってしまう。
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理論の次なる課題は実践である物件選びだが、今週の東洋経済の読み方を指南しておこう。
雑誌は「勝ち組物件の見分け方」と謳うのだから、個別事例の判断が重要なことは言うまでもない。
その意味で、500駅のデータは正確性が求められる。しかし、今回も注意を要する。
まず、項目毎に重要なものをチェックしよう。
①新築マンション価格
直近の単純平均なので、物件の個別性が強く、判断材料にしにくい。
だからこそ、物件毎に立地や属性を判断している「沖式新築時価」を作成しているし、
物件の個別性が出にくいように、駅別の相場(下記URL)を作成している。
https://www.sumai-surfin.com/price/market/railroad_list.php
②5年前価格
これも①と同じで意味が無い。別々の物件(新築と築5年)を比較してもそれは物件の立地や属性の違いでしかない。
だから、ざっと見た時に傾向が見えずに、外れ値が妙に気になるが、それは単なる数字のトリックに過ぎないからだ。
例えば、品川駅は5年前と比較して67%も上がっていて、最上位であるが、
同じ会社の分析で、週刊朝日(2013.4.12)では、10年前と比較して、最下位の-26.6%だった。
1位なのかビリなのか?なぜこんなことが起こるのか?
疑問は禁じ得ないが、からくりはこうだ。
1つは、港南口と高輪口の違いだった。
もう1つは、今回分かったことに、5年前の物件価格が品川にしては3270万円と激安だ。
これは、本に書いた「シティタワー品川」で、定借物件のせいだ。比較する時に少なくとも定借物件を入れてはいけない。
だから、こんなことが起こる。比較するためには、極力条件を揃えるのが一般常識である。
③5年前比 値上がり率
①・②から③は信用がおけない。
もし、この数字に意味を持たせるなら、「都心が有利」などの傾向が表れるが、そうなっていないのは数字遊び程度でしかない。
④中古/新築価格比
これには私は意味を感じている。
①・②同様、物件毎の個別性は強いが、中古価格が高いのは、新築の値下がりリスクが低いことだけは確かだ。
⑤マンションPER
これも既に意味がなくなっている。見て分かる通り、ほとんどが20-25の間になる。
つまり、表面利回りで4-5%ということで、大差はない。
ここから外れている駅は、データの正確性が足らない可能性が高い。
⑥住宅地坪単価
これも単純平均では意味が無い。
土地価格は容積率で大きく変わるし、業界では容積率100%相当の「一種価格」で比較するのが慣例だ。
本で「自宅コストは賢さに反比例する」と書いた。
法則性は明らかであり、情報の読み込みを間違っても誰も救ってはくれない。
気をつけながら、幸運を引き寄せてもらいたいものである。
[第392号]「東洋経済 不動産2極化時代 の読み方」
2013年05月13日