千葉県浦安市の特徴
― ニッポンの自治体 ―
東京ディズニーランドで有名な、磐石な財政基盤の若い住宅都市
千葉県・浦安市は、東京湾の奥に位置し、東と南は東京湾に面し、西は旧江戸川を隔てて東京都江戸川区と、北は千葉県市川市に接する。
1889年(明治22年)に町村制施行にともない、堀江、猫実、当代島の3カ村が合併して「浦安村」となり、1909年(明治42)年に「浦安町」となった。東京に近いにもかかわらず、三方を海と川に囲まれた陸の孤島であり、漁業を生業とする村だった。その後、大正、昭和を迎えるも戦前までは大きな発展はなかった。
千葉県・浦安市のマンション
2018年、千葉県・浦安市で販売された新築マンションは252戸。同市で販売した新築マンション相場価格は4319万円~5798万円だった。同市内の中古マンション相場価格は2730万円~6720万円。
2019年1月現在、浦安市の人口は、浦安市の発表によると16万9443人。総世帯数は8万192世帯だった。日本の市町村の中で最も平均年齢の若い自治体だ。なお、2011年の東日本大震災によって市域で発生した大規模な地盤液状化現象で埋め立て地盤の脆弱さが露呈。その不安から市制施行以降初めて2011年に人口減少となった。が、復旧事業の進捗で2016年に、震災前の水準に回復した。
1981年生まれの若い都市「うらやす」
昭和30年代に入ると江戸川上流部で工場汚水放流事件が起きる。旧江戸川の水が本州製紙江戸川工場からの排水で黒く濁り、浦安沿岸から葛西沖にかけて海水が変色、魚介類の大量死滅が見られるようになった。東京湾沿岸の海域汚染が進み、浦安の漁業は衰退することになる。
このような転換期の昭和32年ごろ、日本プラスチック社から浦安町に対し、海の一部を埋め立て、東洋一の遊園地を作りたいという申し出などがあった。
そこで、1962年(昭和37年)に浦安の中心産業だった漁業権の一部を放棄、1964年(昭和39)年から始まった埋め立て事業を契機に、浦安エリアは大きく姿を変える。
1969年(昭和44)年に営団地下鉄東西線が開通。1971年(昭和46年)から第2期海面埋め立て事業が行なわれ、かつての4.43平方キロメートルだった小さな浦安町の総面積は、約4倍に拡張し、現在の16.98平方キロメートルとなり、急速に都市化が進んだ。
1981年(昭和56年)4月に市制が施行され「浦安市」が誕生した。
1983年(昭和58年)には東京ディズニーランド(TDL)がオープン。その後もTDL周辺地区に大型リゾートホテルなどが建設され、国際色豊かな街となった。1988年(昭和63年)12月にJR京葉線も開通し、新浦安、舞浜の駅周辺の整備も進み、浦安は東京ベイエリアを代表する都市として発展している。
計画的に開発が進められてきた街だけに、道は広く街区は碁盤の目のように区画整備され、駅前にはマンション、その先には戸建て住宅が広がる。歩道・車道もゆったりしており街路樹もゆきとどいた近代的で整然とした街並みとなっている。
長谷工アーベストの子育てしやすい街(駅)ランキング(2009年)では1位に新浦安駅が、2位に浦安駅が選ばれ、上位独占となった。
計画的に整えられた都市開発が奏功した磐石な財政基盤
近年、浦安市は財政力指数において常に全国で上位にあり、2012年には市として全国トップとなるなど、非常に豊かな自治体である。東京都心までに短い通勤時間や、市内に東京ディズニーリゾートが所在すること、計画的に整えられた住環境が注目され、マンション建設が相次ぐ。新町地区のマリナイースト地区、地権者は都市再生機構などで、開発計画に則した街づくりが進められている。
しかし、市の7割以上を占める埋立地は地盤がかなり弱く2011年の東日本大震災では液状化現象によって市の想定を上回る甚大な被害を受けた。
オリエンタルランドが運営するディズニーリゾートの高い知名度のおかげで、市の財政があたかもそれに依存していると思われがちだが、市は埋立事業の開始当初から「住宅地の造成」「大規模遊園地の誘致」「鉄鋼流通基地の形成」を市の運営3本柱として計画的に開発を進めた。結果、個人市民税と固定資産税で8割程度の歳入を得ている。オリエンタルランドを含む法人税収入は例年1割程度だとされる。
いくつかの問題点も抱える「うらやす」
万全な自治体と思える「浦安市」だが、先に記した埋立地の脆弱な地盤だけでなく、問題点も少なからずあるようだ。市内の湾岸エリアは羽田空港から近く、風向きによって羽田空港に着陸する航空機が低空で浦安市上空を通過、あるいは旋回するため騒音被害が酷いという。
また、2002年から行なわれている東京ディズニーランドのショーベースの「浦安成人式」を問題視する向きも多い。式典終了後は、そのまま滞在しアトラクションなどを楽しむこともできる。この独特の成人式は毎年全国的に報道され、知名度が高いが、成人式出席者ひとり当たりの経費が6270円で、総額で約770万円(2008年時点)に上るなど、他の都市と比べてその額は大きい。同市議会などでも問題視する意見が多い。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.26)