東京都台東区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
東京でもっとも古い街、江戸の歴史と伝統を内包した日本を代表する観光地
東京都台東区は、東京23区部の中心よりやや東側に位置し、南は千代田区と神田川を隔てて中央区に接し、西は文京区、北は荒川区、東は隅田川を境にして姉妹区の墨田区に隣接する。戦後の台東区域は、昔からの商町屋や問屋街が並ぶなかに、それほど大きくない工場が点在する下町情緒あふれる街だった。その工場が市街化に伴ってマンションに建て替えられてきた。
東京都・台東区のマンション
2018年、東京都・台東区で販売された新築マンションは2111戸。同区で昨年販売した新築マンション相場価格は5556万円~8354万円だった。同区内の中古マンション相場価格は3150万円~7770万円だ。
2019年1月現在、台東区の人口は、19万9292人、うち外国人は1万5433人だった。総世帯数は11万8858世帯だ。そのうち外国人だけの世帯は1万5世帯。外国人と日本人の混合世帯が1962世帯だった。
東京23区でもっとも小さな特別区「たいとう」
台東区は、1947年(昭和22年)3月15日、地方自治法が制定され、新たな東京22区制(8月から23区制)が発足。それまでの下谷区と浅草区が合併し、「台東区」が誕生した。
区の名称は、「だい」と濁らず「たいとう」と発音する。「台」は上野の高台を、「東」は上野台の東に位置する浅草を表す。このように区の姿を象徴するとともに、「台」は、台覧や台臨という言葉があり、めでたさや気品の高さを表す文字。「東」は、日出ずる所であり、若さ、力強さを象徴している。
台東区の経度緯度を表する場合の中心点は、台東区役所ではなく上野公園7番20号「国立科学博物館」の位置を使い、東経139度46分47秒、北緯35度42分46.5秒となる。
同区の総面積は、10.11平方キロメートルと23区で最も狭く、23区の1.6%、東京都の0.46%を占めるに過ぎない。区内は全般に商業地が多く商業系が8割、純粋な住居系が2割となっており、「卸売業」の事業所数4200カ所は23区の中で中央区に次いで多い。純粋な住宅地は少ないため住宅供給量も多くはなかった。が、昨年からマンション建設が活発化している。
住宅街は、池之端、蔵前、松が谷、入谷、下谷2丁目、根岸3丁目、北上野あたりに集中する。
江戸時代からはじまる交通網の整備
台東区の発達は、江戸幕府の開府とともに、日本橋を基点とする五街道の整備から始まった。 台東区内では、千住宿に至る道筋として、日本橋から浅草橋を通る奥州道中と、神田橋門から上野山下まで御成道を経て三ノ輪を通る日光道中が整備され、現在の江戸通りや吉野通り、金杉通り、昭和通りが街道だったとされる。
日本最初の鉄道が、新橋~横浜間で開業からして11年後、1883年(明治16年)、生糸の生産地・群馬県である高崎とその輸出港である横浜を結ぶ「シルクロード」鉄道建設のため、赤羽~熊谷間を走っていた高崎線を上野まで延伸し、東京の「北の玄関口」たる上野駅が開業。が、当時の上野~新橋間は、住宅密集地域だったため、遠回りとなる現在の山手線の一部である武蔵野台地を通る鉄道が開業した。山手線が現在のような環状線運転となるのは、上野駅開業から40年以上たった1926年(大正15年)で、わずかに残っていた上野~神田間2.3kmが連絡して完成した。
江戸の歴史と伝統が息づく都内随一の観光地
台東区は東京でもっとも古い市街地のひとつだ。なかで上野や浅草は都内随一の観光地であり、浅草の浅草寺は建立1400年の歴史を誇る。江戸期には時代を彩る町民文化である元禄文化が花を開く。
観光地として23区随一の同区は、海外からの来街者に対するおもてなしも忘れていない。宿泊施設の数が突出しているのも特徴だ。「ホテル」74、「旅館」166、「簡易宿所」171、それらの総計411。これはいずれも都内最高だ。また、9カ国語で案内する「台東区無料公衆無線LAN(Taito Free Wi-Fi)も観光客に好評で、2016年7月からは1日の接続回数が無制限となった。
昔から商工業も盛んなエリアだ。江戸時代より商工業の中心地として、人口と産業が高度に集積し、比較的小規模な手工業や製造業、それらの生産の流通を担う問屋・卸売業の集積地として発展した。
浅草「仲見世」、上野「アメ横」、「かっぱ橋道具街」、「浅草橋問屋街」、「仏具街」、「ジュエリー街」など、全国的にその名を知られる個性的な商店街が区内に数多くある。
明治に入ると上野公園周辺に日本を代表する博物館や美術館が建設された。2016年には、ル・コルビュジュが設計した国立西洋美術館が世界遺産に登録されたばかり。
財団法人古都保存財団が選定する「美しい日本の歴史的風土100選」で、次世代に引き継ぐべき日本の歴史的風土の好例として、上野公園周辺や寛永寺、谷中の街並みが選ばれた。公園や緑地が随所にあり自然環境は良い。区内の至る所に桜が植えられており、上野公園や隅田川周辺だけでなく住宅地・商業地などあらゆる場所に桜並木が存在する。
三社祭、浅草流鏑馬、入谷朝顔まつり、酉の市といった広く知られる伝統的な祭事から、隅田川花火大会、浅草サンバカーニバルに至るまで、とにかく観光イベントが盛んな街でもある。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.25)