神奈川県横浜市都筑区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
横浜北部の典型的な農村だった「都筑郡」が、ニュータウン建設で変貌
横浜・都筑区は横浜市の北部に位置し、1994年(平成6年)11月6日に、港北区と緑区の再編成により誕生した。区域の北部と中央部は港北ニュータウン地域で、豊かな自然と緑を残しつつ、都市と農業が調和した新しい街づくりが進められ、区の中心となるタウンセンター地区は横浜の副都心として、商業・業務・サービスの集積や、文化施設の整備が進められている。
神奈川県・横浜市都筑区のマンション
2018年、神奈川県・横浜市都筑区で販売された新築マンションは843戸、その相場価格は4625万円~5588万円だった。同区内の中古マンション相場価格は2730万円~5460万円である。
2019年1月現在、横浜市都筑区の人口は、21万1604人。総世帯数は8万5946世帯だ。市営地下鉄線の開通などで利便性が向上し、毎年約3000~6500人の増加が続く。1994年(平成6年)に同区が誕生した当時、約11万人だった人口は、2010年(平成22年)4月6日に20万人を突破した。
住民の平均年齢は、横浜市18区の中で最も若い39.44歳で、15歳未満の年少者人口割合も17.8%と横浜市内で最も高い区となっている。
同区の総面積は27.88平方キロメートルだ。
昭和初期まで、のどかな農村だった区域は、住宅都市に
都筑区エリアの歴史は、古く縄文時代まで遡る。区内の花見山遺跡は、土器や石器、竪穴式住居址と思われる堀立柱の建物跡が発見されている。また、弥生時代の大塚歳勝土(おおつかさいかいど)遺跡は国指定の史跡で、約100の竪穴式住居址とそれらを囲む大規模な濠など数多くの遺跡が発見されている。同エリアは、7 世紀の律令制度の施行に伴い、「武蔵国都筑郡」と定められた。
以降、現在の都筑区にあたる地域は、奈良時代から昭和初期まで「都筑郡」と呼ばれた。同区は、この歴史的に由緒ある地名を受け継ぎ、今後の街づくりが新しい「都を筑(きず)く」という意味を込めて名付けられた。
同エリアは、昭和初期までは森や田園風景が広がるのどかな農村だった。高度経済成長に入った1960年代から、区の南端の鶴見川沿いに鉄道や道路が整備され、工場などの進出が進む。
1970年代に入ると、区の北部・中央部で都筑区面積の約半分を占める港北ニュータウン建設事業がはじまり、区画整理による計画的な住宅都市開発が進んだ。その開発に伴い人口が急増する。
1993年(平成5年)には、市営地下鉄3号線が新横浜からあざみ野まで開通し、翌1994年(平成6年)、港北区と緑区の行政区再編成により現在の都筑区が誕生した。2008年(平成20年)に市営地下鉄4号線(日吉~中山間)が開通し、2014年(平成26年)に区制20周年を迎えた。
緑豊かな計画住宅都市「港北ニュータウン」
同区の中央から北部に位置する計画的な都市開発によって生まれた港北ニュータウンは、里山型公園や緑道、歩行者専用道路などが整然と整備され、豊かな自然と都市が調和した街づくりが進んだ。区の中心となるタウンセンター地区では、業務・商業施設が集積する。
また、区の南部では、大規模な農業専用地区が広がり、野菜を中心とした都市型農業が盛んだ。同地区は「横浜ブランド野菜」を出荷する市内で有数の農作物供給基地なのだ。さらに南端の鶴見川沿いには、数多くの企業の本社・研究所・研修所が進出しており、市内でも屈指の工業地帯となっている。
都筑区内の港北ニュータウンは、都筑区茅ヶ崎を中心とする計画都市だ。かつて港北区と緑区に属していたが、行政区再編によって変更された。横浜市都心部から北北西へ約12km、東京都心部から南西へ約25kmの地点に位置する。
港北ニュータウン事業は1965年に横浜市が発表した「横浜市六大事業」の一環だった。事業計画では2530ヘクタールにおよぶ大規模な都市開発事業だった。区画整理事業を進めるうえで膨大な地権者との交渉を控え、開発には土地収用ではなく、「申出換地」という手法が採られた。これは事業主体者が所有している土地のなかから換地を行なう土地の所有者が希望する土地を指定(申出)し、その地権を交換する手法だ。港北ニュータウン開発以降、現在までの土地区画整理事業で多く取られる手法となった。
実際の造成開発は1974年に建設大臣の認可が下りた後で、1983年から大規模マンションへの入居が始まった。
都筑区は緑豊かな地域で、2009年(平成21年)現在、緑被率は約34%あるものの、減少率は市内最大となっている。しかし、市街化調整区域には農地やまとまりのある樹林地が多く残っている。一方、港北ニュータウンの市街化区域では、計画的に公園や緑道が整備され、緑のネットワークが出来上がっている。区の面積に占める公園の割合、住民ひとりあたりの公園面積は、18 区中第2位となっている。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.26)