東京都江戸川区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
23区で在住者平均年齢がもっとも若い特別区、子育て世代に優しい自治体
江戸川区は東京都の東端に位置し、葛飾区・墨田区・江東区、そして東武を流れる江戸川を境に千葉県に接する。同区の総面積は、49.09平方キロメートル、23区で4番目の広さを持つ。
東京都・江戸川区のマンション
2018年、東京都・江戸川区で販売された新築マンションは581戸。販売価格は4403万円~5673万円。中古物件の相場は2450万円~6090万円だった。
2019年1月現在、江戸川区の人口は、同区発表によると69万8031人。総世帯数は34万2016世帯だ。人口は23区中第4位である。同区の発表によると、区の人口は、昭和時代には常に増加し続け、平成に入ってからも増加し、2012年(平成24年)に507名減少となったものの、翌年から再び増加に転じている。
後述するように子育て世代が住みやすい区の支援策や環境が整い、大型マンションの建設が相次いでいることから、今でも人口が増え続けている。
同区の育児支援策は、0歳児保育手当金支給制度や市立幼稚園の入園料補助金、通園している園児には毎月支給される保育料補助金などがある。
江戸川区の西部である荒川沿岸地区は、海抜ゼロメートル地帯か海抜マイナスメートル地帯で、最も低い地域では東京湾満潮時に比べて2メートル以上低い場所もある。江戸川・千葉県寄りの区東部は、比較的海抜が高く、新中川以東且つ京葉道路以北は海抜1.5メートルから3メートルほどだ。小岩地域は比較的古くからの陸地だが、区の南部は大半が埋め立て地だ。東京湾と接する南端には、葛西臨海公園や葛西臨海水族館がある。
東京23区でもっとも平均年齢が若く、子どもの数は圧倒的1位
江戸川区は23区のなかで最も平均年齢が低い区で、その平均年齢は41.4歳。出生率も23区で最も高い。なぜ平均年齢が低いのか。端的な理由は、子どもが多いからだ。0~12歳の人口比率は9.0%。2位にある練馬区が7.8%なので、圧倒的な第1位といえる。13~19歳人口比率も1位だ。
同区の高齢者も元気だ。東京都福祉保健局によると、1人当たりの老人医療費は練馬区に次いで低い。介護保険1号被保険者の要介護・要支援認定率は、23区最低である。
また、高齢者がいる世帯のうちひとり暮らしの高齢者の割合も最低だ。逆に、3世代同居の割合は最高となる。多くのお年寄りが家族と一緒に暮らす「サザエさん同居」が多いのだ。
子どもが多い割に教育環境は脆弱だ。公立学校の教員1人当たりの児童・生徒数は小中学校ともに23区中でもっとも多く、教員が不足気味だ。人口当たりで見た図書館の数も蔵書数も、23区中最低である。
圧倒的な広さと数を誇る江戸川区の公園
ただし、江戸川区は、公園の面積は23区で最大の756ヘクタールを誇る。2位の江東区401ヘクタール、3位足立区の304ヘクタールに比べると圧倒的なことがわかるだろう。区内でいちばん大きな公園は、「日本の渚百選」にも選ばれた葛西海浜公園。隣接する葛西臨海公園と合わせた総面積は492ヘクタール。これだけで江東区の公園全面積を超えるわけだ。
小松菜が代表作物の農業区・江戸川区
江戸川区産業の中核となるのが農業だ。東京都「農業センサス」(2016年版)によると販売農家数は3位、経営耕地面積は2位。さらに、農産物販売額が700万円以上の農家の割合は、22.4%とトップに立つ。東京最大の農業区と言われる練馬区の6.2%、世田谷区の2.6%、足立区の11.4%と比べると、江戸川区の農業の底力が極めて高いことがわかる。
また、江戸川区小松川の地名に由来する「小松菜」は、徳川吉宗が鷹狩り小松川に訪れ、名もない“菜っ葉”が入った味噌汁を食した際に名付けたとされる。現在では同区の特産品で、収穫量は日本一ともいわれる。
江戸川区の交通インフラは、かなり脆弱だ。鉄道の駅は目黒区に次いで少ない。面積は目黒区の3倍以上なのに……である。駅を列記するとJR総武線の平井駅、小岩駅。京葉線の葛西臨海公園駅。京成小岩駅、江戸川駅。東西線の葛西駅、西葛西駅。都営新宿線の船堀駅、一之江駅、瑞江駅、篠崎駅となる。1980年代半ばに都営新宿線が開通する以前は、区南部は陸の孤島だった。
なお、これら路線はすべて都心から千葉方面に放射状に伸びたもので、江戸川区を南北に縦断する鉄道は一切ない。また、江戸川区役所の最寄り駅である総武線の新小岩駅の住所は、葛飾区新小岩1丁目45番地だ。
一方、鉄道網整備が十分でないせいか、世帯当たりの乗用車保有率は、千代田、港、足立、中央に次ぐ5位。都心3区は業務用の車輌が多いので、江戸川区は足立区と並ぶクルマ社会だといえる。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.25)