


新型コロナウィルスの影響が広まる中、マンションの買い時は
住宅ジャーナリスト櫻井幸雄
新築マンションはこれから大幅に値下げされる?
マンションが暴落し7割引になる、マンションが売れないので販売センターの多くが閉鎖された、コロナ禍でタワマンに住宅ローン破綻……いずれも、この4月と5月、マンション関連でネットで目に付いた記事だ。
7割引ならば、1億円で売られていた新築マンション住戸が3000万円になってしまう。それなら買いたい!という人が続出するだろう。6割引で4000万円になっても、5割引で5000万円になっても、すぐに売れるはずだ。
多くの新築マンション販売センターが閉鎖されたのは、4月7日に7都府県に緊急事態宣言が出たのを受けてのこと。売れ行きがわるくなって閉めたのではない。
新築分譲マンションは、コロナ禍と結びつけて、ネガティブな記事を書かれやすい。
なぜ、マンション記事はオーバーに書かれるのか
マンションに関する記事には、オーバーな表現が少なくない。その理由として考えられるのは、マンションを買うとする人が少なさだ。
不動産経済研究所の発表によると、2019年に全国で分譲された新築マンションの戸数は約7万戸。これに対し、日本の人口は現在約1億2595万人(2019年10月、総務省統計局による推計値)で、そこから推測される世帯数は5000万を超えるほど。約5000万世帯のうち、毎年新築マンションを買う世帯が約7万とすると、全世帯のわずか0.0014%にすぎない。
つまり、全人口のうち99%以上の人は、当面、マンションを買う気がない。買う気がない人たちは、マンション関連記事は大げさなタイトルが付いていなければ読まないだろう。だから、マンションに関する一般の記事は、どうしてもオーバーな表現が多くなる。
今、マンションを買おうとする人は、そのことを承知しておく必要がありそうだ。
リーマンショックのときのようには……
新型コロナウィルスの影響で、日本のみならず世界の経済は大きな影響を受けそうだ。
近年、世界経済に大きな影響を及ぼした出来事として思い出すのが08年に起きた「リーマンショック」。当時、日本の新築マンションは価格を下げた。
同様に、今回もマンション市況は大きな影響を受けるという予測がある。
しかし、マンション、それも新築分譲マンションの市況は、リーマンショックが起きた08年当時から大きく変化している。
最も大きな変化は、「毎年売り出される新築マンション戸数が大幅に減っている」ということ。首都圏の新築マンションは、1990年から2005年まで毎年8万戸以上売り出されていた。リーマンショックの直前07年には数が減っていたが、それでも1年間に6万戸以上が売り出されていた。
それに対し、現在、首都圏で売り出される新築マンションの戸数は1年間で3万戸を少し超えるくらい。最盛期の半分以下に減っている。
毎年6万戸とか8万戸の新築マンションを販売していた時期、販売現場はスピードを求められた。急いで販売し、次の物件にとりかかろうとしたので、売れ行きが悪化すれば、すぐに値下げを行うという動きもみられた。暴落現象が起きやすかったわけだ。
これに対し、毎年売り出されるマンションが減っている現在は「ゆっくり販売」が当たり前になっている。
マンションをたくさん売り出したくても、なかなか土地が手に入らない。やっと入手できた土地に、大事にマンションをつくって販売するという状況になっているため、短期間に売り切ろうという姿勢はなくなっているわけだ。
現在は、建物が完成してもなお販売を続け、完売まで2年、3年を要するマンションが増えている。2、3年がかりで販売するのであれば、その間に新型コロナウィルスは克服される、と考えられる。長い時間をかけて、じっくり販売が行われる新築マンションでは、価格を下げる動きが出にくい、と考えられるわけだ。
経済対策で、インフレが起きる可能性も
新築マンション価格は、これから先、下がるとは考えにくい。その一方で、上がる可能性もないとはいえない。
「下がらないかもしれない」はともかく、「上がるかもしれない」とは言い過ぎ、と思うかもしれない。しかし、新型コロナウィルスの厄(わざわい)が去った後、日本が大きくインフレに傾けば、不動産価格も大きな影響を受けるだろう。
それについては、4月17日にYahoo!ニュースで記事を書いた。
「コロナの影響で都心マンションは値上がりする? 不動産業界が用地探しに積極的な理由」
これから先、マンションの市況がどうなるか、は正直予測しにくい。
では、マンションの買い時はいつなのか。
その質問に対し、私はいつも「自分のタイミングを大事にしましょう」と答えている。
住宅は、人それぞれの買いどき、というものがある。経済や社会の状況がどうあろうと、「我が家にとっては、ちょうど今が買いどき」というタイミングがあるわけだ。
自分のタイミングで動いた結果、後から「よいときに買ったじゃないか」と思えることが往々にしてあるから、不思議である。
今、マンションの販売センターは「3密」を防ぐ工夫を凝らし、1日に入場できる人数も制限している。今、マンション販売センターを訪れるのはわるくないと思えるし、実需層=自ら住む目的でマイホームを購入しようとする人たちは、積極的にマンション探しをしているのが実状である。
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住まいサーフィンレポートとは?
実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供。
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。
住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。
オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com