

広く認められるようになった「東京五輪」の後も値下がりなし。
今、狙うべき新築マンションは……
住宅ジャーナリスト櫻井幸雄
昨年まで、首都圏・新築分譲マンションの販売価格は、「2020年東京五輪まで上がって、その後、大きく下がる」と言われてきた。その「五輪後暴落論」が、今年の夏以降、急速にしぼんできた。
秋になると、「五輪後にマンション価格は、さらに大きく上昇する」という記事まで出てきた。ずいぶん大きく予想が変わったものだ。
意見が変わった理由は、東京五輪まで1年を切る時期になっても、暴落の前兆もでなかったことにありそうだ。「高くなりすぎたマンション価格が暴落するなら、ここに至るまでに多少は下がってもよいはず。それが少しも下がらないのだから、従来と異なる不動産市況が起こっているのだろう」と多くの人が考えるようになったわけだ。
私は、2015年10月1日に新聞社のニュースサイトで「東京五輪後も都心の不動産価格は下がらない」という記事を出して以降、ずっと「暴落は起きない」派で、「過去、五輪を開いた国で五輪まで不動産価格が上がり、五輪後に大きく下がったという国はない」という事実もいくつかのニュースで報告している。
その事実を認めていただけたのか、夏以降、同じ意見の人が増えた心強さを感じている。
しかし、ちょっと遅かったかもしれない。
遅かったかもしれない、と思うのは「東京五輪後に下がる」という予測を信じたため、購入の好機を逃した人がいることを残念に思っているからだ。実際、値上がりし続けるマンションを見て、「あのとき、買っておけば」と悔しがっている人は多い。
これまで4年ほど多くの専門家が「五輪後に大きく下がる」と言い続けたのだから、「東京五輪が終わるまで待っていよう」と考える人が増えたとしても仕方がない。
とはいっても、都心の高額マンションを購入できる富裕層や、投資目的でマンションを買う人たちの多くは「五輪後に下がる」説を信じていなかった。「下がるといわれるけど、そんなことはないんじゃないかなあ」と半信半疑で、割安なマンションを探していた、というのが実情。「これなら、買っても損はない」と感じた新築マンションは、迷いなく購入していた。
対して、「五輪が終わるまで、購入を控えよう」と決めてしまったのは、都心から離れた場所のマンション購入者に多かった。だから、郊外や地方都市では、3LDKが3000万円台、4000万円台で購入できるマンションがずっと販売され続けた。
それら、郊外で割安価格のマンションは数が少なくなったものの、今なら、まだ購入可能だ。
東京五輪後、都心部の高額マンションが値下がりしなければ、割安な郊外マンションへの注目度が高まるだろう。都心や準都心部で、納得価格で販売されているマンションも掘り起こされて短期間に売れてしまう可能性がある。
一部マスコミが騒ぐように「東京五輪後に、さらに値上がりする」可能性があるのなら、今はまだ「値上がり前」といえる。
この時期、都心でも郊外でも、地方都市でも納得感のある価格設定のマンションを探すこと、それが今、マンション購入で成功する秘訣となる。
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年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目物件も紹介。マンション購入のアドバイスとする。

住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴
1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。
◇オフィシャルサイト:
http://www.sakurai-yukio.com