


コロナ禍でも減らないマンション購入者。年度末は、購入の好機
住宅評論家 櫻井幸雄
コロナ禍で不安があるのに、マンション購入者は減らない
コロナ禍でローン破綻の危険が増している、という記事を週刊誌やサイトの記事で見かけることが多くなった。
その内容には眉唾なところが目立つ。たとえば、返済滞納が続いて競売決定のリスクが高まっているわけでもないのに、任意売却を行うなど、「任売(任意売却)」のことを分かっていないとおぼしき記事もある。
競売のリスクが迫っていない状況でマイホームを売り出すのは、一般的な中古売却で、これは住宅ローンが残っていても可能……というより、多くの人は住宅ローンが残った状態でマイホームを売っている。
また、ローン破綻数の増加データを示すことなく、「Aさんの場合」「Bさんの場合」と個別事例を挙げて、それが全体の傾向とするところにも無理がある。
多くの人に警鐘を鳴らしたい、という親切心から書かれた記事なのだろうが、実情を反映しているとは思えない。
実際、コロナ禍を経験しながらも、新築住宅の売れ行きは落ちていない。一部の専門家が言うように「バブル並に売れている」というのは、さすが大げさだと思うが、予想外に売れているのは事実だ。
そこで、「こんな時期に、マイホームを買っていいの?」という気遣いをしてくれているのだろう。
しかし、コロナ禍でボーナスが出なかったり、給料が減ること心配するなら、毎日の食費が出せるのかも不安だし、子供の教育費を払い続けることができるのかという心配も出てくる。そして、住宅に関しては、賃貸暮らしで家賃を払い続けることができるのか、という不安だってありそうだ。
賃貸暮らしには、住宅手当の打ち切り不安も
持ち家と賃貸の場合、毎月、住宅に関する支出は「持ち家のほうが大きい」とは言い切れない。首都圏では、賃貸の家賃が結構高い。住宅ローン減税分を勘案すると、持ち家のほうが有利(支出は少ない)なケースもある。
賃貸居住者には給与とは別に住宅手当があり、そのメリットが大きいという見方があるのだが、その住宅手当もコロナ禍による業績悪化が深刻化すれば、打ち切りの可能性もありそうだ。
そのように考えてゆくと、コロナ禍の今、マイホームを買うことは必ずしも無謀とは言えない。超低金利のローンと、大型の住宅ローン減税を利用できることを考えれば、コロナ禍でも生活を守る選択といえそうだ。
コロナ禍でも新築マンションの購入者が減らない理由
昭和の後期、首都圏の郊外エリアでは3000万円台、4000万円台で3LDKの新築マンションを購入できた。
今より多少安い気がするが、当時、住宅ローンの金利が最低でも5%台と高かった。
これに対し、現在、首都圏郊外の新築マンション3LDKは4000万円台のものが多い。住宅ローンの金利が実質1%を切る水準であることを考えると、30年前のほうがマンションは安かったとは言い切れない。
住宅ローンの金利が1%前後であれば、3000万円借りても、毎月の返済額は9万円前後になるケースが多い。これに加えて、住宅ローン減税が大型化している恩恵も大きい。
一方、家賃相場は昭和時代から上がり続け、都心への通勤時間が30分〜1時間圏の家賃は3DKで1.5倍から2倍に値上がりしている。
超低金利で住宅ローン減税が大型になっている現在は、持ち家派のほうが、住居費において有利な面が多い。
マイホーム購入者が減らないのは、無理もないわけだ。
1月〜3月が狙い目といえる理由
新築マンションを購入する場合、不動産の世界では「1月から3月までが有利」とされている。その理由は、物件によっては特別サービスが期待できる時期であるからだ。
3月は多くの不動産会社の年度末にあたり、1月から3月は売り上げを伸ばしたい時期。そのため、オプション設備や家具がサービスされ、場合によっては値引きも提示される可能性がある。
前述したとおり、「新築マンションは予想以上に売れている」のだが、それは、「心配されたほど売れ行きは落ちていない」というニュアンスを含む表現。すべてのマンションが飛ぶように売れているわけではなく、当然ながらバブル並に売れているわけではない。物件によっては集客に苦労しているところもある。そんなマンションならば、サービスも大きくなる。
1月〜3月はサービスのあるマンションを探すのも楽しみ。今、マイホーム探しをすることは決して無謀ではなく、むしろ得が大きい行為と言えるのである。
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住まいサーフィンレポートとは?
実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供。
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。
住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。
オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com