住まいサーフィンレポート2022年冬-秋期 住宅評論家 櫻井幸雄が見たマンション市況&狙い目新築マンション

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首都圏マンション価格がバブル期超えでも、超低金利でバブル期よりも買いやすい、という事実もある

住宅評論家 櫻井幸雄

 首都圏の新築マンション平均価格がついにバブル期を超えた、というニュースが注目を集めている。

 「バブル期の1990年は首都圏で発売された新築マンションの平均価格平均6123万円だったが、2021年には6260万円になった」というのが不動産経済研究所の発表だ。

 「平成バブル期は狂乱の時代」「マンション価格も、お金の使い方もすべておかしかった」と考えると、現在のマンション価格は異常ということになる。

 しかしながら、このデータは、首都圏のマンション平均価格だけを調べて比較しているもの。2つの時期の住宅ローン事情は勘案していない。

 じつは、バブル期と現在は住宅ローンの金利が大きく異なり、毎月の返済事情がびっくりするほど違っている。

毎月返済額から計算すると、そんなに高くない

 バブル期のマンション購入者は、ほとんどすべての人が住宅金融公庫融資(フラット35の前身)を利用しており、その金利は4.95%~5.5%だった(1990年の金利)。

 これに対して、2021年のフラット35の金利は1.28%〜1.37%だ。

 これだけ金利が異なると、同様の金額を借りても、毎月の返済額は大きく異なる。

 バブル期に、当時の平均価格6123万円のマンションを頭金1割、残り9割を住宅金融公庫融資利用で購入した場合、35年返済・ボーナス併用なしで毎月の返済額は29万6000円となった。

 毎月約30万円の返済だから、結構大変だ。

 これに対し、2021年の平均価格6260万円のマンションを、頭金1割、残り9割を借りるという条件でフラット35利用の場合はどうだろう。

 こちらは、毎月の返済額が16万9000円ほどになり、毎月の返済額はバブル期より12万円以上も下がることになる。

 1990年当時は、大半の人が住宅金融公庫融資の固定金利ローンを利用していたのに対し、現在の主流は、民間金融機関による変動金利の住宅ローン。そちらはさらに金利が低く、優遇金利適用後の最も低いケースで0.35%程度になっている。

 この0.35%で資金を借りた場合は、毎月の返済額はさらに下がる。毎月14万3000円ほどとなり、バブル期の29万6000円と比べて半額以下になる。

 つまり、今は「バブル期並みにマンション価格が上がった」のは事実なのだが、ローンを組んで購入したときの毎月返済金は、バブル期より大幅に低い、という事実もあるわけだ。

 ちなみに、バブル期のように「毎月30万円」の返済から逆算すると、1億円クラスのマンションが購入できることになる。それくらいの違いがある。

超低金利なので、「年収の5倍まで」も時代遅れ

 現在は、史上希にみる超低金利。だから、マンション価格が上がったといえる。

 超低金利なのに、高金利(5%前後)だったバブル期と同様に比較するのは無理というものだ。

 よく「マイホーム購入は年収の5倍まで」といわれるが、その基準も5%以上の金利が当たり前だった昭和時代に生まれた。 高金利の時代は、住宅ローンで3000万円ほどを借りても、毎月の返済額は15万円くらいになった。この「毎月返済額」を無理なく用意し続けるためには、「住宅ローンで借りる金額は年収の5倍までにしましょう」とされたのである。

 この「年収の5倍まで」は、当時の毎月返済金から計算されたものなので、超低金利の今は、計算し直す必要がある。

 金利が5%もあった時代の「年収の5倍まで」を超低金利の現在に当てはめると、「年収の10倍まで」となる。

 ところが、「年収の10倍までは大丈夫」などと公言するのは、さすがに怖い。なので、少し控えめに「年収の8倍程度まで」と、言ったりする。

 しかし、この「年収の8倍まで」には根拠がなく、きちんと計算すれば、昭和期の「年収の5倍まで」は、現在「年収の10倍まで」となってしまう。

 そのように、超低金利でのローン事情を正確に理解している人は、今、6000万円以上になったマンションを購入している。

 だから、新築マンションが売れている。

 2021年に首都圏で契約された新築マンションの総数は、コロナ禍以前の2019年を上回る3万5693戸となっているのだ。

 「いくら低金利といっても、これから先、金利が上がることが心配」という人は、変動金利を避け、35年固定のフラット35を利用すればよい。35年固定でも十分に金利が低く、毎月の返済金が抑えられることは前述したとおりである。

 超低金利であれば、マンション価格が上がっても購入は可能……そのことに気づく人が増えれば、新築マンションはまだ上がる可能性がある。

 つまり、マンションはまだ買いどきといえるのである。

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住まいサーフィンレポートとは?

実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供。
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。

住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

櫻井幸雄の顔写真

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。

オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com