長引くコロナ禍の影響、ロシアのウクライナ侵攻……マンション市況はこれからどうなるのか
住宅評論家 櫻井幸雄
リーマンショックのような価格下落が起きる?
今、世界経済は大きく揺れ動いている。原因としては、長引くコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻の影響が大きいだろう。いずれも終着点がみえず、それだけに経済の先行きがどうなるのか、わかりにくい。
新築マンション価格が今後、どうなってゆくのか、も同様。これから先、上がり続けるのか、高止まりするのか、それとも下がってゆくのか、が予測しにくい。
同様に世界経済に大きな影響を及ぼした近年の出来事として思い出すのが08年に起きた「リーマンショック」。その後のマンション市況の動きは予想しやすく、実際に予想通りとなった。
日本の新築マンションは一気に価格を下げたのである。
しかし、今はそのような予測が出てこない。
理由は、新築分譲マンションの状況が、リーマンショックが起きた08年当時と大きく異なっているからだ。
具体的にいえば、「毎年売り出される新築マンション戸数」が大幅に減っている。
首都圏の新築マンションは、1990年から2005年まで毎年8万戸以上売り出され,07年でも1年間で6万戸を超えていた。それに対し、現在、首都圏で売り出される新築マンションの戸数は1年間で3万戸を超えるか、超えないか、といったところ。最盛期の半分以下に減っている。
毎年売り出されるマンションの数が、今までにないほどに減っていることが、これからの予測を難しくしている。それは、紛れもない事実だ。
ゆっくり販売で、値崩れしにくくなった新築マンション
毎年売り出されるマンションの戸数が減っている現在、新築マンションの市況は「ゆっくり」がキーワードになっている。
建物が完成してもなお販売を続け、完売まで2年、3年を要するなど、マンションは時間をかけて売られる。そして、マンションの売れ行きが落ちたとしても慌てない。
首都圏で毎年6万戸から8万戸の新築マンションが販売されていた時期、つくっては売り、すぐに次をつくる、というようにフル回転でマンションを開発・販売していた。
そのため、つくったマンションは急いで完売させたかったので、売れ行きが鈍ると、すぐに値引きをした。
その当時を知っている人は、経済の状況がわるくなったり、株価が下がると、すぐに「マンション価格が下がる」と言い出してしまう。
しかし、今は、販売状況が多少わるくなっても、慌てることがない。次に売る物件がないし、そもそも次のマンションをつくるための用地がなかなか入手できないでいるので、今売っているマンションを大事にしてゆこうと考えるからだ。
特に、東京23区内や郊外駅近立地のマンションは、ゆっくり、じっくり販売されるので、リーマンショックのときのようにバタバタとした「値下げ」が生じにくい。
値下げを期待するマンション購入者にとっては、残念な状況が生まれているわけだ。
さらに、残念なのは、じっくり販売しているうちに経済状況が変わり、また好景気になってしまう可能性があることだ。
景気がよくなれば、売れ残っているマンションが再び価格上昇してしまうことがある。
実際、2013年頃からの首都圏では、何度か売れ行きが鈍る時期があった。が、景気が持ち直したために「販売しながら価格が上がるマンション」が目立った。さらに、「購入をキャンセルした住戸が、その後、値段を上げて販売されていた」のを見て、悔しい思いをした人も出ていた。
いずれ下がるという説を信じて、購入のチャンスを逃すことがあったわけだ。
今後、23区内や郊外駅近の場所で、マンション価格が下がる事態は考えにくい。
そこで、「このマンションならば、買ってよい」と思える物件に出会ったら、積極的に前に出るべきだ。それも、住宅ローンの金利がなるべく低いうちに。今はまだ、買い得と思える物件が少なくないのだから。
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住まいサーフィンレポートとは?
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年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。
住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴
1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。
オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com