東京都多摩市の特徴
― ニッポンの自治体 ―
1965年から開発された国内最大級の多摩ニュータウンを核とする住宅都市
東京都多摩市は、東京都心から約30~35km圏の東京都西部に位置し、いわゆる多摩丘陵の北端部にあり、北は多摩川をはさんで府中市に接し、東は稲城市、南は神奈川県川崎市と町田市、西は八王子市と日野市にそれぞれ接する。総面積は21.01平方キロメートル自治体だ。
東京都・多摩市のマンション
2018年、東京都・東多摩市で販売された新築マンションは80戸。新築マンション相場価格は不明。同市内の中古マンション相場価格は2100万円~4410万円だった。
多摩市の2019年1月現在の人口は、14万8745人。総世帯数は7万1851世帯だ。
多摩市の母体は、明治22年4月1日の市町村制の施行にともなって旧8カ村とふたつの飛び地が合併して多摩村が誕生したことが始まり。1964年(昭和39年)4月1日に町制施行で多摩町になり、1971年(昭和46年)11月1日の市制施行により多摩市となった。
ニュータウンは東京都への産業一極集中、深刻な住宅不足解消の切り札
1960年代、高度経済成長期にあった日本では、東京都への人口・産業の一極集中により、住宅不足が深刻な問題となった。この問題を解決するため、東京都多摩市・八王子市・稲城市・町田市に広がる多摩丘陵に計画的住宅市街地を建設し、良質な住宅を大量に供給することを目的として、1965年に「多摩ニュータウン」事業が始まった。
1965年から約40年間にわたって開発された多摩ニュータウンは、市域全体の60%を占め、国内最大級のニュータウンとして、22万人(うち多摩市エリアは約10万人)が住む都市となった。
平成に入ると、聖蹟桜ヶ丘駅周辺及び多摩センター駅周辺の2大中核拠点が商業施設を中心に機能を充実するのに伴い、首都圏においても数少ない広域商業機能をもった商業都市に発展した。
21世紀、市域人口の高齢化と多摩センター商業の地盤沈下が課題
ただ、近年は初期入居者を中心とした高齢化が問題視されている。これに伴って少子化が急速に進み、小中学校の統廃合が行なわれている。
1990年、多摩センターに国内初の屋内型テーマパーク「サンリオピューロランド」がオープン。2003年に多摩センター地区を「ハローキティにあえる街」と制定し、ハローキティを「多摩センター親善大使」に任命している。
多摩市を代表する多摩ニュータウンだが、商業地区である京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅周辺が、多摩市のもうひとつの顔だ。多摩センター駅周辺も商業地だが、駅周辺には住居や地元商店街などがなく、計画的に配置された商業ビジネス街区だ。多摩センター駅周辺の商業エリアは地盤沈下が激しく、三越百貨店多摩センター店は2017年3月末で閉店した。
市域としてニュータウン開発初期に建設された諏訪・永山地区では大規模集合住宅の建て替えが複数進んでいるほか、中古物件として流通している既存の集合住宅をリフォームして住むことが提唱されている。多摩ニュータウンで1970年代後半以降建てられた集合住宅は、21世紀に入った現在でも家族居住に十分な80平方メートル超の居住面積であり、これらを中古で安く購入して新築同様にリフォームし、般的に大きい負担となる住宅取得のコストを低減しようという動きがある。
市域、もうひとつの中核、映画「耳すま」の街「せいせき」
それに対して聖蹟桜ヶ丘駅周辺は、昔からの商店のほか京王百貨店、関連の新しい商業ビル、京王電鉄本社ビル、パシフィックコンサルタント本社ビルが混在する街並みを形成する。もちろん駅から徒歩圏にマンションが数多く建ち、徒歩圏に戸建て住宅地も多い。
スタジオジブリ映画「耳をすませば」の舞台にもなった聖蹟桜ヶ丘駅から南の高台に足を伸ばすと、かつて京王電鉄が開発分譲した、高台頂点から放射状に広がる瀟洒な高級戸建て住宅地「桜ヶ丘住宅地」が広がる。
1960年に造成が始まった、この桜ヶ丘住宅地は多摩丘陵の北端に位置し、眺望に恵まれた住宅地だ。「自然条件を十分に活かした高級住宅地」という位置づけで、1区画は平均100坪となっており、地区計画で敷地最低面積50坪と決められ、それ以下への分割は認められていない。
なお、スタジオジブリ映画「耳をすませば」が1995年に公開されると、すぐに聖蹟桜ヶ丘がこの映画の舞台だということが知られるようになった。が、具体的な街おこしの取り組みが始まるのは、ずっと後になってからだった。きっかけは地元の多摩大学の女子学生が、「映画公開10周年」を記念した上映会を地元の聖蹟桜ヶ丘商店会に持ちかけことから始まった。現在、聖蹟桜ヶ丘駅の電車到着メロディとして映画「耳をすませば」のテーマソングに使われた「カントリーロード」が流れる。
多摩市内にはJRの駅がなく、市内を走る鉄道は、京王線本線と京王相模原線、小田急多摩線、そして多摩都市モノレールだ。このモノレールの南端が多摩市だが、さらに南の町田市への延伸計画が進んでいる。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.26)