東京都葛飾区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
葛飾区は江戸庶民のライフスタイルが色濃く残る“寅さん”の故郷
東京都・葛飾区は、東は江戸川を境に千葉県松戸市に、西は足立区、墨田区、南は江戸川区、北は大場川を境として埼玉県八潮市、三郷市にそれぞれ接している千葉・埼玉との県境に位置する。同区総面積は34.80平方キロメートルだ。23区中7番目の広さで、区内全域が荒川の外側(東)にある東京23区唯一の自治体だ。
東京都・葛飾区のマンション
2018年、東京都・葛飾区で販売された新築マンションは1138戸。販売価格は3933万円~4128万円だった。中古物件の相場は2030万円~5530万円である。
2019年1月現在、葛飾区の人口は、葛飾区の発表によると46万2591人。そのうち2万1849人が外国人居住者だ。近年、新小岩周辺でアジア系外国人の居住者が増える傾向にある。総世帯数は23万3158世帯。2019年1月現在、65歳以上の高齢者人口は11万3440人(総人口比24.5%)で、23区でもっとも多い。
だが、葛飾区は、日本の伝統的な習慣や生き方が受け継がれているようなのだ。葛飾区は、東京都内で家族が多い特別区だ。1世帯当たりの人員は23区中第3位。同じく、世帯人員「5人」「6人」の割合が、いずれもナンバーワンなのだ。伝統的なライフスタイルが、今も受け継がれていることがうかがえる。
同区は、古代葛飾と呼ばれた地域のごく一部に過ぎない。古代の「かつしか」という領域は広大なエリアで、葛飾・江戸川・墨田・江東区を包括した旧南葛飾郡と、千葉県市川・柏・流山・松戸・船橋市や埼玉県栗橋および茨城県古河・総和市までおよぶ広い地域だったとされる。「かつしか」の「かつ」は丘陵や崖などを指し、「しか」は砂州などの低地の意味がある。つまり、「かつしか」とは、利根川流域の右岸に低地、左岸に下総台地が広がる旧葛飾郡の地理的な景観から名付けられたとされている。
現在、葛飾区の各地域は、北部金町・亀有周辺と南部新小岩周辺は主に商業地域、西部四ツ木・立石周辺は主に工業地域、東部は主に住宅地域、北部水元周辺は主に畑などが散在する農地と閑静な住宅地域となっている。
映画「男はつらいよ」伝説の地
葛飾柴又といえば映画「男はつらいよ」で、区内にはその舞台となった柴又帝釈天や江戸期の文化を伝える堀切菖蒲園などがある。また、先般連載が終了した“こちかめ”で知られた秋元治の漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は葛飾区を一躍有名にした。
映画「男はつらいよ」世界にどっぷりと浸かれる葛飾区の観光名所がある。気の向くままに日本全国を旅する故・渥美清が熱演したフーテンの寅さんがいつも必ず帰ってくる場所、葛飾柴又の団子屋「くるまや」が再現されているのが「葛飾柴又 寅さん記念館」だ。映画で実際に使用されていたセットを移設し、茶の間での滑稽なやりとりや店先で起きる珍騒動など、数々の名シーンが思い出される記念館だ。寅さんが、さくら、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長らが、人情たっぷりの喜劇を繰り広げたその場所がよみがえる。
撮影にまつわる展示は、セットだけではない。登場人物が作品中で使用した小道具など、貴重な資料の数々を展示。寅さんが旅の道中いつも携えていたトランクとその中身を公開。また、山田洋次監督が撮影中に使用していたディレクターチェアやメガホンなども貴重な展示品だ。
「寅さん記念館」に隣接する恰好で山田洋次監督の「ミュージアム」も建っている。ここでは、山田監督の全作品の予告編を観ることができる。
区内の鉄道はほほすべて東西に走り、地下鉄は通らない
区内鉄道網は、JR常磐線が葛飾区北部を東西に通っており、台東区上野から千葉県取手まで運行。また、JR総武線が区南部を通り、葛飾区には新小岩駅しかないが、三鷹から千葉まで運行する。私鉄の京成線が葛飾区中央部を東西に通っていて、京成本線は上野から成田空港まで運行。京成押上線は墨田区押上から四つ木・立石を通って葛飾区高砂まで走る。京成金町線は葛飾区内の高砂から金町まで運行する。区内の路線は、ほぼ区を東西に走り、南北に縦断する鉄道はない。
なお、東京23区で、葛飾区と世田谷区だけ、地下鉄が通っていない(乗り入れ先を含まない)。
葛飾区公式ホームページでは、何故か区内で31軒の銭湯が営業している(葛飾区公式HPより)ことを掲載している。その理由はとくに示されていない。この銭湯の数は、大田区46軒、江戸川区42軒、足立区41軒に次ぐ23区で第4位だ。ちなみに銭湯がもっとも少ないのは千代田区の4軒(以上、「東京銭湯マップ/http://www.1010.or.jp」より)。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.25)