東京都豊島区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
大規模商業地を持ち、住民の税金をいっさい使わずに建設した区役所で有名
東京都・豊島区は、1932年(昭和7年)10月、東京市郡合併により近郊82カ町村が東京市に編入され、新たに20区が設けられた際に誕生した。豊島区は、それまで北豊島郡下にあった巣鴨町・西巣鴨町・長崎町・高田町の4つの町の統合で生まれ、以降、今日までその区域に大きな変化はない。区名については、4町による協議の結果、北豊島郡がなくなることから、この郡の中心にあたる同区に、その由緒ある“豊島(としま)”の名前を残すと決定、「豊島区」が誕生した。
東京都・豊島区のマンション
2018年、東京都・豊島区で販売された新築マンションは740戸。同区で販売した新築マンション相場価格は7663万円~8235万円だった。同区内の中古マンション相場価格は3920万円~1億220万円だ。
2019年1月現在、豊島区の人口は、28万9508人、うち外国人は3万223人だった。総世帯数は17万9880世帯だ。非常に独居世帯が多いのも豊島区の特徴だ。
豊島区の総面積は13.01平方キロメートルで、23区中18番目の広さだ。2010年以降、東京23区のなかで人口密度ナンバーワンの特別区で、現在の人口密度は1平方キロメートル当たり2万1803人となっている。つまり、日本一の人口密度を誇る自治体(2016年4月現在)ということ。町名別では、東武東上線で池袋からひとつ目の「北池袋駅」付近で、池袋中学校周辺の池袋本町4丁目の人口密度が最高で3万8199人/平方キロメートルだ。
東京“都心5区”の一翼を担う大型商圏
東京都心3区といえば、中央区、千代田区、港区だが、都心5区と表現する際は、この3区に新宿区と豊島区が加わるとする説がある。しかし一方で、中央区、千代田区、港区、新宿区、渋谷区を都心5区とする説も有力だ。
日本で第2位の乗降客を誇るターミナル、池袋駅を中心にした西武と東武の両百貨店の旗艦店や大型SCなどの大規模商業施設が集積する商業の街だ。小売業の「売場面積」では、新宿区に次ぐ第2位。大規模店舗、それも超大型の店舗がこの大きな数字を稼ぎ出しているようだ。その商圏は、西武池袋線や東武東上線、JR埼京線沿線にまで伸び、埼玉県西部をほとんど飲み込むほど大規模だ。
池袋駅西口でも三菱地所による再開発事業が進められており、3棟の超高層ビルが建つ予定だ。
全国初、民間分譲マンション一体開発、豊島区役所・新庁舎
「住民の税金はいっさい使いません」で名を馳せた、全国初となった民間高層マンション「ブリリアタワー」との一体型再開発事業、地上11階~49階の分譲マンション共用の新豊島区役所庁舎は、2015年3月2日に竣工。地下部分で東京メトロ東池袋駅と直結する。2015年5月1日をもって旧庁舎での通常業務を終了、2015年5月7日に新庁舎がオープンした。
移転完了後、隣接する豊島公会堂・区民センター・分庁舎は、共に解体され、これらの跡地を一体化して再開発する予定だ。豊島区役所があった場所には20階建てのシアターなどを内包する高層複合ビルが建設される。
日本漫画の巨匠たちは豊島区南長崎「トキワ荘」から
豊島区といえば、南長崎にあった今はなきアパート「トキワ荘」を挙げないわけにはゆくまい。手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎らの、後に漫画界の巨匠といわれる人物が、若い頃に集結して創作活動の拠点とした木造アパートだ。今も多くの漫画ファンにとって“聖地”となっている。「トキワ荘」が象徴するように、この豊島区も中野区と同様「木賃ベルト地帯」を抱えるエリアだ。
一方で、豊島区には高級住宅街として知られる学習院大学周辺の目白エリアのようなところもある。
大規模な「木賃ベルト地帯」を抱える故か、豊島区はマーケティング用語で「M1層」と呼ばれる20歳~34歳の男性の割合が中野区に次いで多い。一方で、同じ世代の女性「F1層」は、多くない、というか少ない。こうした側面で独居“青年男子の街”といえる。
桜の代表「ソメイヨシノ」は、豊島区で誕生
日本の「国花」である桜の代表「ソメイヨシノ」は、豊島区で誕生した。緑の若葉が出る前に、木全体を覆うように淡紅白色の花をつけるソメイヨシノ。その起源には謎が多く、従来から諸説あったが、最新の遺伝子解析による研究の結果、ソメイヨシノの起源はエドヒガンザクラ(母種)とオオシマザクラ(父種)の交配によって、生まれたということがわかっている。
栽培の歴史は比較的新しく江戸時代後期。現在の豊島区駒込から巣鴨の旧染井村が発祥の地だ。この染井村の植木屋が、「吉野」の名で売り出した植木とされている。後に奈良の吉野山のヤマザクラと混同しやすいので、明治33年に「染井吉野」という名前に改められた。一般に桜と言えば、ソメイヨシノを指すほど日本全国、否、世界各国に広まっている。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.25)