東京都府中市の特徴
― ニッポンの自治体 ―
府中駅南口再開発を終えた歴史ある「武蔵国府」が置かれた街
府中市の歴史は旧く、西暦645年「大化の改新」で武蔵国の政治の中心“国府”が置かれた。その武蔵国の領域は現在の東京多摩地区だけでなく、東は現在の葛飾区から西は秩父、南は横浜北部までの広大なエリアだった。
早くから政治、経済、文化の中心地で、鎌倉時代末期は多くの合戦の舞台となり、江戸時代には甲州街道の宿場町として栄えた。明治以降は郡役所が置かれるなど、多摩地域の中心として歴史的役割を担ってきた。
1954年(昭和29年)4月、府中町、多磨村と西府村の1町2村が合併し、人口約5万人の府中市として市制施行した。
東京都・府中市のマンション
2018年、東京都・府中市で販売された新築マンションは101戸。同市で販売した新築マンション相場価格は3863万円~7358万円だった。同市内の中古マンション相場価格は2100万円~5880万円。
府中市の2019年1月現在の人口は、26万11人。総世帯数は12万5060世帯だ。府中市の総面積は29.43平方キロメートル。東京都のほぼ中央にあり、新宿副都心から西へおよそ22kmの位置にある。京王線特急停車駅の京王府中駅から新宿まで22分の距離だ。
市域南端に多摩川が流れ、ここから北へ約1.7kmにわたって平坦地が広がり、これより東西に走る高さ約6mから7mの崖線から北へ約2.5kmにわたって立川段丘が広がっています。この段丘は西端で海抜70m、東端が海抜40mとなっている。
1900年以上の歴史をもつ古社「大國魂神社」と「武蔵国府」
同市中心部の市役所に隣接する大國魂神社は、都内でも屈指の古社で、今から1900年以上前の景行天皇(けいこうてんのう)の時代に、武蔵国の鎮守(武蔵国魂)として大国魂大神(おおくにたまおおかみ)を祀ったのがはじめだとされる。大化の改新の後、現在の府中市大國魂神社に隣接した場所に武蔵国の国府が置かれると、武蔵国の総社(斎場)となり、国内の著名な六所の宮を合祀したので、六所宮(ろくしょぐう)と称されるようになった。毎年、5月5日に行われる例大祭には、八基の華麗な神輿と日本一の大太鼓が繰り出し、多くの人でにぎわう。
多くの著名人が眠る「多磨霊園」など文化財の街
府中市内の広大な多磨霊園は、1923年(大正12年)に都市計画の一環として東京都がつくった日本初の公園墓地で、面積は約132万平方メートル(40万坪)。周囲を武蔵野の面影を残す雑木林に囲まれた園内には、道が碁盤目状に走り、桜の名所としても知られている。埋葬者はおよそ28万柱といわれ、政治家、学者、芸術家など多くの著名人も眠っている。なかでも文学者の墓が多く、菊池寛や北原白秋をはじめ、与謝野晶子、与謝野鉄幹、江戸川乱歩らが眠る。
府中市中心部の大國魂神社につづく表参道の馬場大門ケヤキ並木は、1062年(康平5年)源頼義(みなもとのよりよし)・義家(よしいえ)父子が奥州安倍一族の乱を鎮圧した帰途に、ケヤキの苗1000本を寄進したことに始まるといわれる。その後、徳川家康が関が原、大坂両役の戦勝の御礼として馬場を献納しケヤキを補植した。所有者は前述の大國魂神社で、国指定の文化財である。
市中心部の京王線府中駅南口(宮町1丁目)では再開発が行なわれ、第一街区(キーテナント:伊勢丹)の完成から約20年、2017年7月現在最終街区の整備が、完全終了を迎えた。このエリアは市内随一の商業施設の集積地。同時に高層マンション街区でもあり、駅から徒歩5分圏内に高層マンションが建ち並んでいる。市中央部で残る再開発は、大國魂神社に隣接した市庁舎の建て替えだ。
大企業の関連施設が多く昼間人口と夜間人口が拮抗する街
市内には行政機関や日銀を代表とする各銀行の計算センター、東芝やNEC、サントリーなど大企業の研究開発施設など大規模事業所も多い。そのため、昼間人口と夜間人口が拮抗している。このあたりが近隣のベッドタウンと様相が異なる。理由は、多摩地区の他のベッドタウンとは違い職住近接した住環境。これらから市民の満足度が高く、市のアンケートでもほぼ全市民が将来も住み続けたい街として回答しており、「生活実感値」満足度都内第1位とされる。
公共競技施設として入場客数20万人超を誇るJRA(日本中央競馬会)の東京競馬場があり、春には「オークス」「ダービー」、秋には「天皇賞」「ジャパンカップ」などのG1レースが開催され、多くの競馬ファンで賑わう。
余談ではあるが、高度成長期に府中市を一躍有名にしたのが「三億円事件」だ。市内、府中街道沿いの府中刑務所付近で1968年12月10日、東芝府中の社員に支給するボーナスを運搬中の現金輸送車を襲った窃盗事件だ。日本犯罪史において最も有名な犯罪のひとつに数えられ、完全犯罪を成し遂げた稀有な窃盗事件だ。この事件以来、日本では多額の現金輸送の危険性が考慮されるようになり、給料などの支給について金融機関への振り込み支給が普及した。
著:吉田 恒道(公開日:2019.12.26)